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4.嫌がらせ?

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 次の僕の授業は、魔法の構成について。それなら、すでに自学で相当勉強して、教科書どころか先生の著書まで全部読んで予習済み。

 絶対に退学にはなりたくないから、僕も必死なんだ。そして、会長のことにも。

 次の授業が始まってから、僕は、会長のことを噂していた連中のことを考えていた。

 あいつら、会長に手を出すような話をしていたけど、どういうつもりなんだろう……

 どうせなら、会長に使い魔くらい、つけておけばよかった。
 だけど、そんなことをすれば、会長に迷惑がかかる。
 学園内では、使い魔を作る行為は禁止。みんなで飛ばしあって何をするかわからないかららしい。

 この学園には、貴族たちがこぞって子息子女を入学させている。彼らが精霊の王に仕える魔法使いに選ばれれば、その家は王族との距離が一気に縮まる。
 早い話、彼らを利用して、王族に取り入るためのパイプが欲しいという、貴族たちの思惑が隠れているんだ。そんな中で、使い魔なんか許可したら、暗殺と諜報行為が横行してしまう。

 それでなくても、生徒間の雰囲気は普段からギスギスしがちなんだ。

 なんのしがらみもなく、ここに入学してくる人はいない。入学前から、あの人はどこの家の出身で、どの家と懇意にしていて、どの家と対立していて……そんなことを頭に叩き込んでいる。

 家側も、向こうの家には負けるな、あの家には取り入っておけと、学園での身の振る舞い方には、目を光らせる。

 こうなるともう、学生を利用した代理戦争。

 中には、王族や有力貴族とパイプを作り、現当主には隠居を強いて自分が家を率いろうと、野心たっぷりでいる学生もいる。

 そんな学園だからこそ、精霊の王と懇意にしている伯爵の令息なんて、格好の標的なんだ。嫉妬も対抗心も集まりやすい。

 会長……苦労してるんですね。大丈夫です! 僕が守って見せます!!

 さっきの男……王族の関係者で、生徒会長が今の会長なのが我慢できない、みたいに言ってたな……

 そんなことを考えていたら、周りの学生たちが急に立ち上がった。

 考え込んでしまい、先生の話を聞いてなかったから、何が始まったんだろうって思った。
 だけど前を見たら、黒板に「魔法の構成、演習」って書かれていた。

 どうやらこれから、魔法の演習らしい。演習場に向かわなきゃ。

 荷物を持って、すぐに教室を出ようとしたけど、そこで僕は、五人の男たちに囲まれてしまった。
 他の学生たちも、それに気づいたようだけど、みんなさっさと演習場の方へ行ってしまう。

 がらんとした教室に残ったのは、僕とその五人の男たちだけ。
 なんだか面倒なことになりそう。

「なんですか? 僕、演習に行かなきゃならないんですが」

 取り囲んだ男たちを睨んで聞くと、五人のうちの一人が、僕に凄んでくる。体格のいい男で、ローブは着ていない。真っ赤な短髪の野獣のような目をした、荒々しい雰囲気の男だった。
 確か、よく同じ授業を受けている、ヴィユザ……って名前だったかな……辺境領主の五男で、あまり権力争いには興味ないようだったけど……

 彼は、僕のことを睨みつけて言った。

「お前、さっきセルラテオ様の話、盗み聞きしてただろ。公爵様の御令息のお話を盗み聞きなんて、許されると思っているのか?」
「……」

 おかしいな……魔力の気配も隠して、絶対気付かれないはずだったのに。

 バレていたのか? あの取り巻きの男、そこまで鋭いやつだったのか……?

 もしかしたら、僕の魔力を隠す結界の魔法が、邪魔されていたのかもしれない。
 これがバレたこと、これまで一度もないのに……セルラテオって男、すごいな。

 バレていたなんて面倒だ。会長に話されたら、会長が驚いてしまうかもしれない。

 ヴィユザが他の四人を引き連れて、僕に近づいてくる。

「お前……セルラテオ様に付き纏ってるって、本当なのか?」
「……つきまとう?」
「お前が付き纏って嫌がらせしてるの、知らないとでも思ったか? お前ずっと、セルラテオ様に嫌がらせしてるんだろ!!」
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