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83.どこまで
しおりを挟む焦る公爵には冷たい目が向けられ、追及の声が上がるが、すぐにそれに対する反論の声も上がり、収拾がつかなくなっている。
「公爵! 一体どういうことですか!!」
「何をっ……! お前こそっ……! いち早くこの森に使い魔を送っているはずだ!!」
一体何をしているんだ。自滅もいいところだ。
そんな中で、公爵の使いが一際大きな声を上げる。
「こんなところで争っている場合ではありません! 暴走した俺の使い魔をなんとかしないと……!」
「知らん! 私は何も知らん!! 自分でなんとかしろ!!」
「で、でもっ……! 俺だけのせいじゃないんです!! 他にも使者がいて、そいつが変な使い魔飛ばすからっ……!」
さっきからの爆発はそれか。なんでこうなるんだ。使者たちの使い魔が暴走したのを装う計画だったのに、本当に暴走している。こんなに魔力が溜まったところで、制御の効かないものが暴れたらどうなるか、わかるはずなのに。俺だって、そんなことをしてしまったと嘘をついたが、俺のは嘘だからいい。
俺は首輪を引きちぎり、森に向かって走り始めた。背後から「止まれ」と言う声が聞こえたが、無視して走る。
ロフズテルの使い魔を復活させ、岩の庭園の魔力を消滅させるなら、今しかない。
森に入ると、あちこちから爆発音がした。防御の魔法をかけていなければ、鼓膜が破れていたであろう大きな音が何度も響き、火の手が上がっている。それと共に、小さな爆発音もし始めた。
走る俺に、いくつか不出来な形の使い魔が迫ってくる。これが使者たちが暴走させた使い魔か。おそらく、お互いを見つけて、いい加減な使い魔を作って争っていたのだろう。
走る俺に、使い魔が迫ってくる。今はそんなものの相手をする時間も惜しいのに。
構えるが、俺に迫る使い魔を、空から降りてきた男が破壊した。
「ヴァデス! 大丈夫っ!?」
「ゲキファ!?」
降りてきたのは彼だけじゃない。ガウィルディとコレリールもいる。
コレリールは、俺に振り向き叫んだ。
「師匠! 僕たちがお供します! 急ぎましょう!!」
ああ、もうこいつらには付き合っていられない。
堪えきれなくなって、俺は岩山目指して走り出した。
後ろから俺を追ってくるガウィルディが、俺に向かってきた使い魔を切り捨てて叫ぶ。
「ヴァデス! どこへ行く!?」
こいつら……一体どこまでついてくるんだ。
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