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80.俺が困る!
しおりを挟む目を丸くする俺の前で、ガウィルディはさらに続ける。
「岩山へいき、制御不能になった使い魔を探すなど、無謀です! そんなことをすれば、最前線に立つヴァデスの命が危ないことは、あなたなら分かるはず! あなた方は、彼を使い魔を探すための道具にするばかりか、暴走した使い魔に対する盾として使うつもりか!! 恥を知れ!!」
…………本当に、何を言い出すんだあいつ!! 処分取り消しって、そんなことになったら俺が困る!!
しかし、ガウィルディだけではなく、彼の後ろにいた警備隊の面々までもが頷き、学園長に直訴し始める。
「学園長!! こんな処分は不当です!!」
「生徒を守るのが俺たちの役目です!」
「学園の生徒を盾にして、恥ずかしくないのですか!?」
口々に喚き出した彼らを、コーレジョが睨みつける。
「お前たち……こんな真似をして、ただで済むと思っているのですか?」
しかし、こんなところまで来て上層部を前にこんなことを言うガウィルディが、そんな言葉で引き下がるような、生半な覚悟で来ているはずがない。
ガウィルディは、少しも怯まず、コーレジョを睨みつけて言った。
「学園を脅かしたのは貴様らだ……精霊と貴族どもの犬めっ……!!」
敵意を込めた声音で言って、ガウィルディは、学園長に向き直る。
「前回の使い魔の事故の件、俺たちの到着が遅れたのは、決して、呼ばれなかったからではありません! あれは……」
言いかけたそいつに、いち早く駆け寄り、その口を手で塞いだのは俺。
「黙れこの馬鹿!! 余計なことをするな!!」
こいつ……!! 何を言い出すんだ!!
今ここで黒幕の話なんかされたら、使い魔どころじゃなくなる。大騒ぎになってまた会議だ。責任のなすりつけあいに付き合っている場合じゃないんだ!!
時間が経てば経つほど、俺の破壊の魔法を使う使い魔が暴走したという話には信憑性がなくなる。いつまで経っても岩山になんの異常もなければ、危険を犯すより先にそれが本当なのか調査をしようと言い出す奴が増えてくる。突然の事態に、場が混乱しているうちがチャンスなんだ。
それなのに、今ここであの使い魔の事故が事故でない証拠なんか出てきたら、ただでさえ腰の重い連中がますます動かなくなる。
ガウィルディは、そっと俺の手を握って言った。
「ヴァデス……怯えなくても、もう誰にも、お前を陥れるような真似はさせない。彼らは、お前を利用しているだけだ」
「知ってるよ馬鹿!」
それでいいんだよ!! って続けて言いそうになるのをなんとか抑える。
せっかく計画通りにことが運びそうだったのに、何をしてくれているんだ、こいつ!!
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