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66.そんなふうに思われていたのか
しおりを挟む俺は慣れているが、初めてロフズテルを前にしたゲキファ、コレリール、セアガレンまでもが引いている。
ゲキファは、背後から俺の手を掴んで「俺の後ろにいて」と言い出した。
「げ、ゲキファ?」
「……そいつのそばにいない方がいい」
コレリールも、すでに魔法の大剣を抜いている。
「師匠……僕は師匠を慕っています。だからこそ、そいつを師匠に近づけたくありません」
二人に殺気のこもった目を向けられて、猫は震え上がる。
「お、おいっ……ヴァデスっ! こいつらを何とかしろ!!」
「……だったら、お前の居場所を教えろ。お前を追ってきている奴らに、お前を引き渡して、気の済むまで殴らせてから回収する」
「なんだそれは! お前、肩代わりしてくれるんじゃないのか!?」
「しない。しないが、所長はお前だ」
「む、無茶を言うなっ……!! 俺は今は出て行けないっ……! 俺を追ってくる奴らをなんとかしないと……!」
「では、所長の椅子にはこの猫を置いておく」
「待てっ……! 所詮これも、俺が作った使い魔のかけらで、別の奴が作ったものだ……いつ動かなくなるか……」
「安心しろ。お前の奪われた部分は、すぐに回収する」
俺は、顔を上げた。
使い魔はこうして帰ってきたが、これだけでは不十分だ。そもそも、俺に偽物を掴ませて、それで終わると思うな。
「ゲキファ。コレリール。これから、こいつの奪われた部分を回収し、使い魔を修復しにいく」
俺が言っても、ゲキファは難しい顔だ。
「奪われた部分の回収はともかく、一度破壊された使い魔の修復には相当な魔力を使う。それに、その使い魔自体、もうほとんど魔力が残っていない。今はヴァデスの魔力でその場を凌いでいるだけだ。それを修復しようと思ったら、膨大な魔力が必要だ……そんなこと……」
「いらん憂慮だな。岩の庭園の魔力をいただけばいい」
「は!?? 岩の庭園のっっ!!??」
「ああ。争いの種になるくらいなら、俺たちがいただいてしまった方がいいと、そうは思わないか?」
「…………そうかもしれないけど……そんなに簡単に……第一、それをすると、ヴァデスもロフズテルも、ただじゃすまない。岩の庭園を破壊したと言われ、地下に死ぬまで監禁されるかもしれない。だ、だいたい、岩の庭園の魔力を、そこにいるロフズテルの使い魔に注いだりしたら、今度は庭園の代わりに、それが魔力の器として利用されるだけだ!」
「修復で魔力はほとんど消えるはずだ。残るのは、せいぜいそれを動かすのに必要な程度の魔力……上層部が奪い合うほどのものじゃない」
「でもっ……ヴァデスたちはその後、どうするの?」
「心配せずとも、今回のことは、全て事故で終わる」
「どう言うこと?」
俺は、セアガレンに振り向いた。
「そこの奴隷」
「誰が奴隷だ!! 縄を切れ!! 極悪人めっ……学園から出て行け!!」
「それだ。お前はなぜ、俺が極悪人だと思うんだ?」
「当然だろう……! 貴様は、狂気の研究所の創始者、ロフズテルと組んで……」
縛られたまま胸を張って俺の糾弾を始めたセアガレンに、ロフズテルが「俺は創始者じゃない」と言うが、そいつは聞いていない。
「貴様はロフズテルと組んで、破壊の魔法で岩の庭園を破壊し、魔力を奪い、世界を征服する気だ!!」
「そんなふうに思われてたのか俺!!」
「せ、世界征服は私の想像だが、魔力を奪おうとしていると、誰もが考えている! 狂気の研究所の狂人研究者め!」
「…………」
そんなふうに思われていたのか……世界なんてもんはいらん。俺はツナ缶と、のんびり過ごせる居場所があればいいんだ!!
だが、今はそれを利用させてもらおう。
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