上 下
49 / 85

49.呼び出しです

しおりを挟む

 全く。俺は一体何をしているんだ……

 今回のことは、事故として処理された。学生たちもすべて救出され、俺やゲキファ、コレリールも、学園に戻ってから治療を受けた。

 事態を混乱させたと言われた俺は、当分の間、寮の部屋で謹慎になるところだったが、学生たちを救出したことが評価され、翌日一日の謹慎だけで済むことになった。

 そして、謹慎中にもかかわらず、なぜか俺だけ学長室まで呼ばれて話を聞かれることになった。学園長は相変わらず、俺にだけあたりがきつい気がする。

 早朝から部屋に来たヴェアに連れられ、学長室まで来た俺は、すでに何度か繰り返したことをもう一度、デスクの向こう側で聞いてるのか聞いていないのか分からない顔をした学園長に話した。

「だから、俺は使い魔見たさにあの森に突っ込んだだけだと言っただろう。コレリールたちと、午後からフォイソオン教授に会いに行く約束をしていたから、迎えに行っただけだ」

 すべて本当のことを言っているのに、学園長は苦い顔をする。

「……それが事実であったとしても、言い訳にはならない。君は唯一、あのロフズテルの愛弟子とも言える存在なんだ。そんな君が、あの森に入って使い魔を探していたなんて言われたら、穏やかではいられない奴らがいるんだよ」
「臆病者どもめ……俺の何がそんなに恐ろしいんだ? 破壊の魔法で学園を破壊するとでもいうのか? それとも、岩の庭園の魔力を狙っているとでもいうのか? 馬鹿らしい。俺はただ、あの海辺の研究所を再興したいだけだ」
「それだって、なんのためにそんなことをするんだっていう人がいる」
「俺がロフズテルを呼び寄せ、二人で魔力を狙うというのか? 馬鹿らしい!! ロフズテルはそんなものに興味はないし、それは俺も同じだ」
「それは俺にも分かるよ。ロフズテルは、そういったものに興味を示さない変人だったから。だけど、疑いがかかっている以上、君に話を聞かないわけにはいかないんだ」
「めんどくさい連中だ……俺より、セアガレンに話を聞いたらどうだ? あいつはあの時、警備隊を呼ばなかったんだぞ」
「……遅れただけだって、本人は言っていたよ」
「どれだけ遅れたらああなるんだ!! ゲキファが魔力を使って自分の居場所を伝えても来なかったんだぞ!! 誰かが故意に遅れさせたに決まっている!!」
「そう言われても、俺の方でそれを調査するってなると、また色々としがらみに取り憑かれちゃうんだよ。困った困った」
「嘘くさいんだよ……早い話、自分で探すのは嫌だってことか?」
「そんなこと言ってない。だけど、学園長が誰かを調べたってなれば、その種族から目をつけられる。ただでさえ、今回の使い魔騒動で、精霊族もピリピリしてるのに。君も、しばらくは大人しくしててよ? 精霊たちが、妖精がついに岩の庭園の魔力に近づいたって、しつこく報告を求めてきてる。その上、岩山の方を視察させろなんて言いだしたんだ。刺激せずに今回の事故を報告するので、俺だって手一杯なんだから、もう問題起こさないでね」
「……俺は何もしていないだろう」

 こいつ、困っているように見えないぞ。やっぱりどこかインチキ臭い奴だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

風紀委員長様は今日もお仕事

白光猫(しろみつにゃん)
BL
無自覚で男前受け気質な風紀委員長が、俺様生徒会長や先生などに度々ちょっかいをかけられる話。 ※「ムーンライトノベルズ」サイトにも転載。

処理中です...