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45.待ってくれ!
しおりを挟むこいつは犬、そう自分に言い聞かせる。
落ち着け、俺。キャッテルが言っていた、使い魔が飛びだしてきたという湖の辺りまで、後少しのはずだ。
俺は、使い魔の猫に飛び乗ろうとした。
けれど、敵は既に迫っていたらしい。ゲキファがいきなり俺の前に出て、俺を自分の背中に追いやった。
殴り倒してやろうかと思ったが、俺もすぐに異常に気づいた。
俺たち目掛けて、森の木々の向こうから、水の矢が飛んでくる。
誰かが俺たちを狙って魔法を放っているんだ。
けれどその水の矢は、俺たちに届く前に蒸発するようにして消えた。ゲキファの消去の魔法だろう。こいつがいち早く気づいて、俺たちを守ったんだ。こいつがそうしなければ、首くらい切られていたかもしれない。舐めた真似をしてくれる。
コレリールが、魔法で大きな剣を作り出し、俺たちに向かって矢を放つ人影に向かっていく。
「師匠を狙う不届き者めっ!! 僕が打ち倒してくれる!!」
大きな剣を掲げて、コレリールは湖の方に走っていく。俺とゲキファも、その後に続いた。
少し走ると、湖が見えてくる。湖が近くなるごとに、こっちに向かって飛んでくる水の矢も増える。
俺は、湖のほとりを睨みつけた。確かに感じる。魔力で気配を隠してはいるが、ほとりに何かいる!! だったら全部捕まえるのが一番早い!
俺は魔力で冷気を作り出し、湖のほとりをなぎ払った。途端に湖畔は凍りついていく。
けれど、人影は氷から逃れたようだ。凍りついた湖の上を走って逃げていく。
逃げ足の速いやつだ。
足に魔法をかけ、凍りついた湖の上を走る。
こっちを向いていたはずの人影は、俺に背を向け逃げて行く。
なんだ……? あの後ろ姿は。俺の知っているものに見える。
背後から、ゲキファたちも走って追いついてくる。
「待って! ヴァデス!! 危ないよ!!」
「師匠! 湖に……魔力を感じます!」
二人が忠告しているのは分かっている。けれど、何を言われても、俺は止まれなかった。あの走っていく後ろ姿、確かに俺は知っている。
あいつ……あの後ろ姿は!
一瞬こちらに振り向いた男の顔を見て、俺は、息を呑んだ。こちらを小馬鹿にしたような目をした、灰色の長い髪の男で、汚れなど全くない白衣を着ている。
冷静ではいられなかった。それは、俺がずっと探していた男だったからだ。
まさか…………あの男は……
「ロフズテル…………」
つい、言葉が漏れた。
懐かしい姿をしたものは、凍った湖の上を走って逃げていく。あれはずっと、俺が探し求めていたものなのに。
「待ってくれ! ロフズテル!! 止まれ!! 俺だ!! 野良猫のガキの……ヴァデスだ!! 止まってくれ!」
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