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30.おかしな二人だ

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 また言い合いになりそうになって、俺は手を叩いて二人を止めた。

「やめろと言っているだろう! いいか!! 俺の目的は、研究所の再興だ! 邪魔をするようなら誰であろうが消す! 覚えておけ!!」

 すると、コレリールが勢いよく立ち上がる。

「もちろんです! 師匠!! 早速今から動きましょう!」
「待て。貴様らはこれから授業だろう」
「し、しかし……師匠……」
「俺も復学の手続きがある。朝食を食べたら、お前たちは授業へ行け。俺には今日は行くところがある」
「でしたらお供します! 師匠!!」
「黙れ! 師匠じゃない! フォイソオン教授の研究室へ行くんだ。ついてくるな!!」

 これからの俺の予定を話すと、コレリールは眉をひそめる。

 フォイソオン教授は、学内で唯一、過去に破壊の魔法を研究していた男だ。もしかしたら、ロフズテルのことを知っているかもしれない。

 けれど、ゲキファの方はその名前も知らないのか、首を傾げた。

「誰……? ヴァデスの……知り合い?」
「そうだな。海辺の研究所にいたころに、少し破壊の魔法について教えてもらったことがある。気のいい先生だ」
「先生…………?」
「ああ。俺の……いなくなった恩師のことを知っているかもしれない」
「恩師って……ロフズテル教授のこと?」
「ああ……」

 あそこで、ロフズテルと一緒にいる時が、俺は一番楽しかった。その時のことを思い出して、俯く俺の手を、ゲキファがぎゅっと握ってきた。

「分かった。俺も手伝うよ。ロフズテル教授を探すの」
「え……ほ、本当か!?」
「うん。ヴァデスの恩人なんだろ? 俺も探したい」
「…………ゲキファ……」

 まさか、あの人を探すことに協力者が現れるとは思わなかった。一人で頑張らなきゃならないと思っていたのに……

 俺は、そばにいる男を見上げた。見下ろしてくるそいつのことが、初めて優しそうに見えた。

 ロフズテルは、破壊の魔法を悪用しようとした首謀者ということになっていて、その印象も最悪だ。それなのに、こいつは俺を手伝うと、そう言ってくれているんだ。

「あ、ありがとう…………ゲキファ……」

 俺が礼を言うと、コレリールも「僕も探します」と言ってくれる。他人を頼もしいと思うの、初めてかもしれない。

 な、なんだか恥ずかしくなってきた。こんな風に喜んだりして。

 顔を見られたくなくて、すぐに顔を背けてサンドイッチを頬張った。

「……ふん…………ひ、暇な連中だっ……! れ、礼は言うが、あ、ありがたいとは思っていないからな!! 覚えておけ!!」

 言いながら、なんだか顔が熱い。赤くなってるんだ。くそ……こんな風に感情が顔に出るの、俺らしくない。

 こんな顔してたら、何を言ったって喜んでいることを隠せないじゃないか。

 コレリールもゲキファも、ニコニコ笑いながら俺の隣でサンドイッチを頬張っている。

 利用されてるのに、おかしな奴らだ。俺はこいつらを嵌めて、弱点の一つも握り、言いなりの奴隷とした上で、研究所再興のための道具として使ってやると、そう言っているんだぞ。分かっているのか……?

「飼い主様、ランチにおすすめのパン屋があるんだ。案内するよ」
「師匠! ランチは僕がお供します!!」

 代わる代わる言うゲキファとコレリールに、気が向いたらなと答えて、俺は朝食を続けた。
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