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28.なんでこんなことに
しおりを挟む全く分かっていないゲキファだが、やけに楽しそうだ。こいつといると、ますます調子が狂う。コキーラを置いたままだし、早く戻ろう。
ゲキファを連れてカフェに戻ろうとするが、背後から、俺たちに向かってくる足音がした。迷い込んできた奴らじゃない。こちらに対して悟られないように近づいてきている。
明らかな敵意だと思った。
即座に振り向いて、強化した爪を構える。それは、接近してくるものに対して俺を守るように立ったゲキファも同じだった。
接近してきていたものが、木々の影から姿を表す。コレリールだった。
そいつはすでに剣を抜いている。
すぐに俺も全身に魔力を纏うが、コレリールは、俺の方ではなく、じっと、ゲキファを睨みつけていた。
そしてあろうことか、再び俺の予定外の行動に出る。
「僕の師匠から離れろっ!」
「誰が師匠だ!」
即座に俺が怒鳴りつけると、そいつは俺に向かって言い返してくる。
「しかし、師匠! 破壊の魔法を教えてくれる約束ではありませんか!!」
確かに、破壊の魔法の件は約束した。しかし、師匠になる話は断ったはずだ。勝手に弟子になるな。
しかも、今度は俺の前に立ったゲキファが、コレリールを睨みつけて言った。
「ヴァデスは認めていないじゃないか……付き纏うのはやめてもらおうか?」
「……ゲキファ……昨日はよくも邪魔してくれたな!! 師匠は僕と破壊の魔法を極め、覇道を進むんだ!! 関係ないやつは今すぐ失せろ!! 僕は師匠の弟子として認められたんだ。お前は何だ? お前こそ、師匠に付き纏っているだけだろう!!」
それはお前もなんだが、コレリールはやけに自信満々だ。けれど、それはゲキファの方も同じで、俺をコレリールから隠すように立って、なぜか胸を張って言う。
「俺は今日から、ヴァデスの飼い犬だから。一緒にいるのは当たり前だろ」
「それはやめろと言ったはずだぞ!!」
目立つからやめろと言ったことをもう忘れている。もちろん俺は飼い犬なんて認めていない。それなのに、ゲキファはなぜか誇らしげだ。
こいつ、仮にも伯爵家の後継者じゃないのか? 伯爵が聞いたら泣くぞ。あいつに恨みがある俺としては、それはいい気味なんだが…………やっぱりちょっと気の毒な気がしてきた。
そして、飼い犬宣言を聞いた自称弟子は、せせら笑うかと思いきや、なぜか悔しそう。
「飼い犬…………? 本当ですか!? 師匠!!」
「嘘に決まっているだろう!! あと師匠じゃない!!」
即否定する俺に、ゲキファが恨めしそうな目で振り返る。
「さっき、番犬にしてくれるって言ったのに……」
「あれは言葉のあやだ!! この馬鹿! 飼い犬はやめろと言っただろう!!」
俺が訂正するのを聞いたコレリールは、なぜか元気を取り戻して、ゲキファを睨みつける。
「なんだ、全く認められていないじゃないか。僕の方は、確かに師匠が弟子にすると、そう言ってくださったんだ!! 自称飼い犬め!」
誰がいつそんなこと言ったんだ。しかもゲキファまでもが「俺だって、ヴァデスが番犬にしてくれたんだ」と言い出して、収拾がつかない。
何でこんなことになったんだ……
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