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54.僕です!

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 リールヴェルリルス様、なかなか僕を離してくれなかった……

 彼は、まるで二度と僕と会えなくなるかのような勢いで僕を抱きしめていたけど、僕は魔力を奪う薬を探しにいくだけだ。

 砦の中を、リールヴェルリルス様と離れて歩くのは緊張するけど……ここも、増えた魔物に困っているみたいだし、放ってはおけない。

 そんなわけで、話し合った結果、僕は魔力を奪う薬を探し、リールヴェルリルス様は、魔物退治に行くことが決まった。

 僕たちを連れて砦に戻ってきたリールヴェルリルス様は、真剣な顔で僕に振り向いた。

「絶対にすぐに魔物を退治して、フォルイトのところに駆けつけるからね」
「は、はい……あの……でも、どうかお気をつけて……魔物が多いようですし、キディアスやランギルヌス殿下も、絶対に警戒しているはずなので……」
「…………フォルイトの方こそ。何かあったら、すぐに俺が飛んでくるからね」
「あ、ありがとうございます…………あ、あの、でもっ……魔物退治もしないと……」
「分かってるよ」

 ……本当かな……? 本気ですぐに僕のところに飛んできそうな勢いだったけど……

 フーギフィオさんが、僕に小さな紙を渡してくれた。

「これ……普段、キディアス様が武器や道具をしまう部屋のリストです。役に立つかは分かりませんが……ここから順番に探してみましょう。僕がご案内します」
「は、はいっ……でも、リールヴェルリルス様は……」

 フーギフィオさんが僕と来ると、リールヴェルリルス様は一人で砦を歩くことになる。彼だって、魔物を退治しに行くから危険なはずなのに。

 けれどリールヴェルリルス様は、僕に微笑んで言った。

「こっちは任せて。俺はクイヴィーアと合流して、砦の部隊と魔物退治に行ってくる」
「わ、わかりました……魔力を奪う薬を見つけたら、すぐに連絡します! つ、使い魔を使えばいいですか?」

 僕が右手を上げると、そこにリールヴェルリルス様の使い魔が降りてくる。なんだか、リールヴェルリルス様がそばにいてくれるみたいで、ホッとする。

「連絡には、それを使えばいいよ。すぐに迎えに来るからね」

 そう言って彼は僕を抱きしめてくれて、それから名残惜しそうに僕に手を振り廊下を走っていった。

 リールヴェルリルス様の姿が見えなくなると、急に不安になってくる。

 ほ、本当に、僕一人で大丈夫かな……

 だけど、魔力を奪う薬を探すって決めたんだ。

「い、行きましょう! フーギフィオさん! 魔力を奪う薬を探すんです!」
「はい。キディアス様が魔法の武器や道具をしまう部屋にご案内します!」







 僕は、フーギフィオさんと二人で、砦の中を魔力を奪う薬を探して歩いた。砦のみんなは、魔物退治に出かけていたり、周辺の見回りで忙しいらしく、砦の中は人が少なくて思いの外探しやすかった。

 だけど、肝心の薬はなかなか見つからない。キディアスだって、そんなものを簡単に見つかるような場所にはしまわないか……

 フーギフィオさんに案内された部屋で、並んだ棚に保管された薬を一つ一つ調べてみる。それは見たことのない瓶や箱ばかりで、その中にも、初めて見るようなものが入っていた。その一つ一つに、杖を向けて調べてみる。だけど、中に入っているのは、普通の回復の薬がほとんど。後は、魔物と戦うための魔法の道具ばかりだ。

 フーギフィオさんも、肩を落として言う。

「やっぱり……見つかりませんか……」
「はい……すみません。あのっ……砦の奥は、キディアスの一族だけが入ることができるんですよね?」
「はい……だけど、そこを探すのは不可能だと思います。そこに向かう廊下には、見張りの人が立っているんです」
「…………」

 見張りの人か……だったら近づいたら追い返されちゃうよな……

 気がついたら弱気になってしまいそうで、僕は、首を横に振った。

 リールヴェルリルス様が、こっちは僕に任せてくれたんだ!! 絶対に探しだす!

 そんな風に決意して、棚を探していると、ドアの方から物音がした。

「誰だ? ここは立ち入り禁止だぞ! 誰かいるのか!! そこで何をしている!??」

 この声……ランギルヌス殿下だっ……!! 嘘だろっ……! なんで今、ランギルヌス殿下が来ちゃうんだっ……!!

 僕とフーギフィオさんは、部屋の中に並んだ棚の影に、慌てて隠れた。

 焦った僕は真っ青。

 一緒にいたフーギフィオさんが、僕に振り向いて、声をひそめて言った。

「隠れていてください! 僕がなんとかして追い返します!」
「そんなっ……あ、ああああ、危ないです! も、もともと、僕らが案内を頼んだのにっ……!」

 彼を巻き込むわけにはいかない。だけど、ランギルヌス殿下に見つかるわけにもいかないしっ……!!

 ついに頭をかかえる僕。

 リールヴェルリルス様から受け取った使い魔が、ランギルヌス殿下の方に出ていきそうで、慌てて止めた。
 リールヴェルリルス様の使い魔がこんなところにいたら、絶対に後でリールヴェルリルス様が責められるっ……! もう、こうなったらっ……!

 僕は、意を決して、ランギルヌス殿下の前に飛び出した。

「ぼ! ぼっ……ぼ! 僕っ……ですっ……! あのっ……! ま、魔法の道具をっ……整備させてもらおうと、お、思いましてっ……!」
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