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21.変な目で見られちゃったかな!?
しおりを挟む檻に閉じ込められるのは困るけど、やっぱり、リールヴェリルス様のお城にあったものはすごい……
僕を閉じ込めていた檻は、小さな宝石のかけらのようなものになって、僕のすぐそばに落ちていた。
そっと拾い上げると、こんなに魔力を込めているのに、檻を構成する素材が全く傷んでいないのが分かった。あまり魔力を込めすぎると、道具は壊れてしまうはずなのに。
リールヴェリルス様は「それはフォルイトが持ってていいよ」って言ってくれて、僕は朝食が終わってから、リールヴェリルス様の使い魔に乗って、ずっとそれを弄り回していた。
使い魔の竜は、のんびり僕らを乗せて森の中を歩いて行く。森は、僕が思っていたよりずっと穏やかで、魔物の気配もしない。
竜の背で、檻の道具を太陽にかざしていたら、隣にいるクイヴィーアさんが、僕を見て気持ち悪そうに言った。
「ねー…………それ、そんなに楽しい?」
「へ? は、はい……見てください。こんなにも魔力を込めてあるのに、素材のつなぎ目がびくともしない……高度な技術で素材を加工している証拠です…………それに、加工の際には、素材を魔力が傷つけないように魔法をかけたんでしょう。個々の際の素材が全く傷ついていない……こんなことができるなんて…………本当にすごい……」
「何を言ってるのか、全く分からないんだけど……それ、お前を捕まえていた檻だよね?」
「そ、そうなんですけど……出してもらえました。だから、もういいんです…………」
「そんなこと言って、また檻に入れられても知らないよ?」
「そ、そんな……リールヴェリルス様、もうしないって言ってくれました……」
「ふーーん…………」
な、なんだか、ひどく冷たい目で見られている……呆れられているのかな…………
もちろん、今朝のことは今でも怖い。怖いけど、今は、リールヴェリルス様が持っていた魔法の道具に対する興味の方が大きい。こんなものにお目にかかれる機会、まずないと思う。
討伐隊の道具の整備をしている時も、いろんな道具があったけど、武器の整備に忙しくて、道具の一つ一つを細かく見ていることなんて、できなかった。
こんなものが見られただけでも、僕は嬉しかったんだけど……
なんだか、クイヴィーアさんの目が冷たい!! 朝自分が入れられた檻をニヤニヤ笑いながら見つめていたから!? だってこれ、本当に珍しいものなのに!!
……檻に入れられるのが好きなわけじゃないって、否定しておいた方がいいかな……だけど、そんなことをわざわざ全部説明するのも……
そういえば、僕はこんな風に誰かと旅をするのなんて、初めてだ。
昨日もクイヴィーアさんの前ではどうしていいのか分からなくてあたふたしていたし……へ、変な人だと思われていそうだな……
昨日から今までにあったことを思い出したら、急に恥ずかしくなってきた。
お茶飲みませんかって聞いたら「いらない」ってはっきり断られちゃったし、「刺客なのに!」って怒られておろおろしてたし、リールヴェリルス様には檻に入れられていたし……
なんだか顔を上げられなくなってきた。こいつ何やってんだって思われて呆れられてそう。
だけどこの檻、本当にすごいのに……クイヴィーアさんにも、これのすごさを分かってほしい。素材の組み合わせとか、魔法を幾重にも重ねてかけてあることとか、珍しいことがいっぱいあって、本当にすごいのに!!
それでもなかなか言葉にできなくて、歯がゆい思いでいると、使い魔の手綱を握るリールヴェリルス様が僕に振り向いて微笑んだ。
「気に入ってもらえたなら、よかったよ」
「は、はい……まさか、こんなものにお目にかかれるなんて、思っていませんでした……ありがとうございます…………」
「今度また入ってみる?」
「……それは嫌です……」
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