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15.ここじゃないんですか!?
しおりを挟む……怖い。
それなのに、リールヴェリルス様の触れ方は、すごくくすぐったい。こんな風にそっと優しく触られたの、初めてだ。
「……り、リールヴェリルス様…………あのっ……っ!!」
「……知れば知るほど、どうしても君が欲しくなっちゃったんだ…………早く、迎えに行きたかった……」
「…………っ!!」
それはいいので、首輪の鎖から手を離してくれませんか!!??
逃げたい。だけど、怖くて逃げることもできない。
リールヴェリルス様が僕を傷つけるなんて、思えないけど…………! だけどさすがにちょっと怖いんです!!
僕の頬に、リールヴェリルス様の手が伸びてくる。
怯えていることが分かったのか、リールヴェリルス様が微かに笑う。
「怖い……? なにも……ひどいことはしないよ……?」
「…………は、はい……っ!」
この人が僕を苦しめるとは思えない。だけど、殴られたことしかない頬が、勝手にビクッと震えた。
そして、カタカタ震えている頬に、そっと冷たい手が触れた。
「……っ!」
驚いたけど、触れたのは冷たい手だけ。それも、触れているのか疑いたくなるくらい、そっと優しく触れただけ。ひやっとして、身体が震えたけど、触れられるたびに、少し気持ちいい……?
「……フォルイト……今日から永遠に……俺ものだ……」
「…………え、えいえんって…………」
旅に出るための婚約……じゃなかったの? そもそも僕は、敵対する勢力からの回し者のはずなんですが???
あと、一番気になるものが、まだ残っているんですが!!
「あ……あの…………り、リールヴェリルス様……」
「どうしたの?」
「あ、あの……その、く、首輪……」
「首輪?」
「あの……こ、この首輪って……い、いつ……外してくれるんですか? あのっ……こ、これ、はぐれないようにするためのものなんですよね!? だったら、目的地に着いたら…………外してくれるんですよね?」
「うん。もちろん」
「じゃあっ……」
「旅の目的地に着いたらね」
「…………へ!??」
何それ! ずるい…………だって、リールヴェリルス様の城が目的地じゃなかったの!??
僕が動揺していることが分かったのか、リールヴェリルス様は、僕の頬に触れていたその手を、ゆっくりと下ろしていく。顎から首まで降りた手が首輪に触れて、首にも触れて、くすぐったくて、ゾクゾクした。
リールヴェリルス様は、いつもみたいに優しく言う。
「…………そんなに怯えなくてもいいのに……」
「ご、ごめん……なさい…………」
「謝らなくていいよ。怯えた顔もすごく可愛いから……」
「え…………?」
「お風呂……入っておいで。それから、夕飯にしよう」
「へっ……!??」
「夕飯。お腹すいただろ?」
「え……えーっと…………」
「それに、疲れただろ? 今日は、ここでゆっくり眠るといい。旅に出るのは、明日から、ね?」
「は、はい…………」
頷く僕を見下ろして、リールヴェリルス様は満足げ。
「これからずーっと一緒だね」
*
それからお風呂に案内された僕は、そこで体を洗って温まって、少し落ち着いた。ゆっくりお風呂に入れたのなんて、初めてかもしれない。
初めての場所で色々あって緊張していたけど、お風呂は広い温泉で、入っているだけで眠くなるくらい気持ちよかった。首輪がちょっと邪魔だけど……そのうち外してもらえるよね……
風呂から出ると、クイヴィーアさんが待っていて、僕をさっきの部屋に案内してくれた。どうやらこの部屋は、リールヴェリルス様の部屋らしい。
そこにはリールヴェリルス様はいなくて、しばらく待つように言われた。
リールヴェリルス様……忙しいのかな……? 魔法の道具とか見せてもらってもいいかな……
色々あってびっくりしたけど……リールヴェリルス様は優しいし……色々言ってた怖いことはきっと冗談だよね……うん!! そう思っておこう!!
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