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後日談

13.犬扱いか!?

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「何が飼うだよ! 馬鹿にしやがって!!」

 怒鳴りつけると、ウィルットは、ここまでおいでー! と言って俺から逃げていく。邪竜だからなのか、それともチワワだからなのか、すばしっこくて俺では捕まえられない。

 それでも楽しそうなウィルットに、副所長が呆れたように言った。

「チワワくーん。君も、任務があるんじゃないの? それが終わったら、一緒に帰るよ」
「…………は? 僕はお前の言うことなんか聞かない。お前の部下でもなんでもないって言っただろ?」
「言ってたよ。俺も聞いた」
「だったら諦めて帰って。僕は柴犬君といる!」

 そう言ったウィルットを、背後から近づいた男が抱き上げる。淡雪みたいな色の髪に、金色の大きな目の生意気そうなチビのファンデッルだ。

「なんでお前まで来てるんだよ!!」

 怒鳴る俺だが、ファンデッルは相変わらず俺の話なんて聞いてない。抱き上げたチワワのウィルットを愛おしげに見下ろしていた。

「やっと見つけたよ……迷子になっちゃったの?」
「離してーー! なんでお前まで来てるの!?」

 バタバタ暴れるウィルットだけど、ファンデッルに抱っこされて逃げ出せないでいる。
 チワワとの再会を喜んでいるファンデッルに、副所長は幾分呆れた様子で言った。

「ファンデッル、グラーイは? 連れてきてって言っただろ?」
「密猟者たちの根城の特定ができそうだと言って、街の方に飛んで行きました。もうすぐこちらに到着するそうです」
「そう……よかったね、ウィルット。君の執事が密猟者の居場所を突き止めたら、そいつら捕縛して、一緒に帰るよ」

 副所長が振り向いて言っても、ウィルットはどこか不満げ。

「ふん……余計なことするな……」

 そんなことを言いながらもウィルットは、ファンデッルの腕の中でしっかり尻尾を振っている。嬉しいらしい。

 だけど、なんでファンデッルまで来るんだよ……

 案の定そいつは、魔物を倒した後で狼の耳と尻尾がある俺に向かって、笑顔で言った。

「クリスティーナ……元気にしていたようだな……」
「うるせえよ!! デトズナーだ!!」
「副所長の紹介で働いているのに、連日問題ばかり起こしてるというのは本当か?」
「…………」

 まずい……こいつまでそれを知っているのか……

 冷や汗を流す俺に、そいつはあくまでも楽しそうに近づいてくる。な、なんか怖いぞ!!

「クリスティーナ……だから俺が飼ってあげると言ったのに……」
「ざけんな!! てめえ、久しぶりに会ったのに俺を犬扱いか!?」
「おいで。クリスティーナ」

 まっったく俺の話を聞いてないらしいファンデッルの隣に、ウィルットが走ってきて、嫌な顔で笑った。
 すると、急に激しい眩暈がして、俺は目を瞑ってしまった。

 再び目を開けたら、嫌な予感がした。この感覚は知っている。周りの砂浜が急に広大になったようで、砂浜も、さっきより近く感じる。そして、そばにいるファンデッルが巨大に見えて、そいつは、小さくなった俺の体を抱き上げた。手も足も、俺のじゃなくて、犬のそれになっている。
 ファンデッルのそばで楽しそうに尻尾を振っているウィルットが、わざわざ魔法で鏡を出して、俺に、今の俺の姿を見せてくれた。鏡に映っていたのは、小さな赤毛の柴犬。まだ俺が柴犬になってる!!

「てめえ!! 何しやがる!!!!」

 怒鳴る俺を、ファンデッルはクリスティーナと呼んで抱き上げる。もうこいつの目には、完全に柴犬しか映ってない。

「可愛い……なんて可愛い…………本当の姿に戻ったんだね……」
「ざけんな!! 俺は人族だ!! ウィルット! 魔法解けっ!!」

 ファンデッルの足元のウィルットを怒鳴るけど、そいつは全然聞いてない。それどころか笑い転げながら、これで一緒に帰れるね、なんていってる。

「ふざけんなよ……離せ!! ファンデッル!! 俺は犬じゃないーーー!!」

 くそ……暴れてんのに、全然逃げられない。そうだ、強化の魔法なら……!!

 そう思って、犬の体を魔法で強化すると、なんとかファンデッルの腕から逃れられた。

 即座にそいつに振り向いて唸る。

 だけど、ファンデッルは、犬に逃げられたくせに、なぜだか微笑んでいた。

「少しはやるようになったじゃないか。デトズナー」
「は!!??」

 どうしたんだ? こいつが俺の名前を呼ぶだけでも珍しいのに、犬姿の俺をデトズナーなんて呼ぶなんて。

「……ファンデッル?」
「……首都でお前がかなりの数の魔物を退治をしていることは知っていた。すぐ帰ってくると思っていたが、問題ばかりのようでも、思っていたより頑張っているようだな」
「………………るせえ…………てめえに負けたくねえからだよ……」

 どうしたんだ……こいつが俺を褒めるなんて。こいつがそんなことするなんて、なんだか怖いぞ。しかも、なんで俺はそんなの喜んでるんだ。
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