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98.俺が

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「て、ティーイラット……?」

 ティーイラットが俺の髪に触れると、そこからキラキラしたものが落ちていく。

「な、なに……?」
「街の魔物を追い払った時、絡み付いたんだろう」
「あ、ああ…………」
「解いていいのか?」
「へっ!?? あ、うん……いい……ひゃ!」

 そいつは、服の下の俺の肌に触れてくる。

 いつも尻尾振ってるかわいい狼だったのに、俺をクッションの上に押し倒して、頬をぺろっと舐めた。

「な、何すんだよ!!」

 舐めるなんて聞いてねえぞ!! こいつ……何してんのかわかってんのか!? 俺もこいつも、今犬じゃないんだぞ!! いや、犬だったらいいってわけじゃないけど……

 それなのに、そいつは俺の腕を床に押し当てて、体を擦り付けてくる。

「お、おいっ……ティーイラット……っ!? ど、どうしたんだよ……」
「解いていいんだろう?」
「そ、そうだけど……こんなの聞いてない……!」
「さっきは撫で回されていたくせに……」
「だ、だって……あれはっ……!」
「それに、他の奴らばかり抱っこしてずるい」
「は!? だ、だってあれは……」

 犬の時の話じゃないか。

 それなのに、そいつは、俺をぎゅっと抱きしめて離してくれない。

「お、おい……ティーイラット……っ!」

 前に俺の力を解いてくれた時はすぐにやめたのに、そいつは俺の服の中に手を入れてくる。丁寧に撫で回されて、体から力が抜けそうだ。

「ひゃっ……ティーイラットっ! このっ……! バカ狼っ!」
「……いやなのか?」

 急に手を止めたかと思えば、そいつは、うるうるした目で俺を見下ろしている。ずるいぞ! そんな目で見るなんてっ……!!

「嫌ならやめる……」
「…………と、途中までやっといて止めんな…………す、砂の力絡みついたままじゃ、俺だって……困るから…………」
「いいのか?」
「な、何度も聞いてんじゃねえ……バーカ……は、早くしろ!」
「………………嫌だったら……言えよ」
「嫌じゃねえ……」
「言っても止めなかったら……砂の力で攻撃してもいい…………」
「嫌じゃねえっつってんだろ……」

 何回聞いてんだこいつ!!

 そいつが俺の服のボタンに手をかける。肩から着ていた服が落ちて、右のこめかみに、そいつの手が優しく触れた。

 途端に、ビクッと体が震える。何をビクビクしてるんだ。こいつが俺を傷つけるはずがないのに。

 そいつの指先が、俺の首のあたりに触れる。かと思えば、そいつの顔が近づいてきて、俺は焦った。

「おいっ……てぃっ……!!」

 名前を呼ぼうとしたのに、そいつの髪が、かすかに俺の頬に触れて、首にくすぐったくて濡れた感触が来た。
 そいつは俺の体をなぞるように、舌を滑らせていく。

「お、おいっ……! お前っ……今っ……!」

 犬じゃないのに……

 手のひらで、そっと下腹部から撫で回されて、ビクッと体が震える。どこ触ってんだこいつ!!

 触るってのは聞いてた。だが、そんな風に、優しく触るなんてきいてない。

 他人にこんなに柔らかく触れられるなんて初めてだ。すぐそばで、他人の吐息を感じるのも。

 やだっつったらやめるんだろーが…………くそっ……!! こんな触れ方されたら、言えねえだろうがっ!!

「ぅっ……!!」

 もう、声を抑えるだけで必死だ。

 俺は必死に我慢しているのに、そいつは俺の腰に手を回して逃げられないようにして、俺の下着に手を突っ込んできた。

「お、おいっ……!! ティーイラット! や、ま、待てっ……!」

 俺の自身を握ったそいつは、それを丁寧に揉み解すように、触れてくる。ちょっと前まで俺の過保護な純真狼だったのに!

 ぎゅっと、くびれのあたりを絞るようにされて、一瞬で腰が蕩けそうな快楽が広がる。

「ま、待てって……ティーイラット! 何してんだ!!」
「ついでだ。マーキングしておく」
「はあ!?」
「向こうへ行っても、他の男が寄って来ないように」
「馬鹿っ……んなことっ……! んぁっ……!」
「心配しなくてもいい。副所長が、人型の種族が、触れられて気持ちいい場所を教えてくれた」
「は!??」
「少し、俺の力を気持ちいいところに注ぐだけだ。他の魔物に対する牽制になるはずだ」
「はあっ!!??」

 あのクソバカ副所長っ……! 俺のかわいい狼に何教えてんだ!! 今度あったらぶっ殺す!!

 延々触られて撫でられて揉まれて、俺のものはすでに、膨れ上がっている。ついでに我慢できなくなったものまで、垂れ落ちていた。

 すぐに隠そうとしたのに、体が動かない。見下ろせば、俺の両腕には鎖が絡みついていた。ティーイラットの魔法だろう。こいつの魔法なだけあって、俺を傷つけるようなことはなくて、全く痛くはない。だけど、隠すこともできずにそんなもん見られて、顔ごと全部燃えそうなくらい恥ずかしい。

「何か出てる」
「るせえばかっっ!! 死ねばかっ……!! お、お前が触るから……」
「俺のせいか?」
「お前のせいだよっ……だ、出さないと辛い……自分で扱くから魔法解け!! このバカ狼!!」

 怒鳴りつけてるのに、そいつはあろうことか、俺の勃ち上がったものに舌を這わせる。かすかな優しい感触がむしろ怖くて、反射的に腰をひこうとするのに、動かない。

「うぁ……っ! な、何すんだよ……っ!」
「吸い出す」
「はっ!? ば、バカやめろっ……!! 自分でやる!! 自分でっ…………! あっっ…………!」

 こいつ……俺がやめろって言ったらやめるって言ったくせにーーーー!!

 待てって言ってるのに、そいつは俺のものを咥えてしまう。快楽に包まれて、柔らかく濡れたものに締め付けられて、あっさり観念した俺は、溜まったものを全部吐き出した。
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