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85.俺は嬉しいぞ!

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 対策所に戻った俺たちを、副所長が迎えてくれた。帰り着いた頃には俺たちはボロボロで、俺は立ち上がることもできない状態だった。すぐに部屋に運ばれて、副所長が何か叫んでいたのは聞いたような気がするんだが、そこから何も覚えていない。

 次の日目を覚ますと、ベッドの中だった。

「いて……」

 まだ、身体がズキズキする。ここ、俺の部屋だ……無事に帰ってくることができたんだ……

 あれからどうなったんだろう。フィッイや、ファンデッルやウィルット……ティーイラットは無事なのか?

 起き上がろうとしたら、隣にいたものに、腕が当たった。

 見下ろせば、フィッイが隣で気持ちよさそうに寝てるじゃないか。

「フィッイ!?」

 無事だったようでホッとしたけど、何で隣にフィッイが寝てるんだ??

 俺の声で目を覚ましたらしく、フィッイは目を擦りながら俺を見上げた。

「うるせーよ……起きたなら寝てろ……」
「なんでまた寝るんだよ! もう起きた! お前っ……もう大丈夫なのか!?」

 するとフィッイは、俺に拳を握って見せてくる。

「平気だよ。俺も、あの副所長に回復してもらった。いい人だな……ちょっと怖えけど」
「……そうだな…………あっ……! テュオトは……? あいつはどうなったんだ?」
「今は、街の警備隊の方に拘束されてるらしい。これから、取り調べだってよ……」
「……そっか……」
「そんな顔すんな。俺のこと、気にしてんのか?」
「……」
「……気にすんな。お前にも、迷惑かけたな……」
「バーカ……んな事気にしてねーよ……あ、あいつらは!? ティーイラットや……みんなはどうなったんだ?」
「落ち着けって。みんな無事だ。地下に溜まった砂の力も、すでに打ち消された。もう大丈夫だ」
「そっか……」

 よかった……この対策所も、この街も……なくならないんだ。

 フィッイも笑顔で、病み上がりだっていうのに、俺の背中をバンバン叩く。

「しかし、お前が対策所かよ…………すぐに喧嘩売ってたお前が……! 俺は嬉しいぞ!!」
「いってえな! そんなに喧嘩してねえ! 大体なんでお前が俺のベッドで寝てるんだよ!」
「お前が一晩中うなされてたからだ!! 俺が一晩中看病してやったんだよ。バーカ。死んで感謝しろ!」
「死んだら感謝できねーよ…………あ、でも……あ、ありがとう…………」
「……遅えんだよ……バーカ。心配ばっかかけやがって」
「はあ!? う、うるせーよ! 俺は」
「だけど、今回は俺の取り越し苦労だったな」

 俺の言葉を遮って言って、フィッイは、微笑んだ。

「疑いをかけられて拘束されたって聞いた時は、また馬鹿やったんだろうと思ったが……珍しく上手くやってるみてえじゃねえか。対策所に入る試験受けるって、本気なのか?」
「あ? 副所長に聞いたのか? ……ああ。そうだよ。ここの奴らには恩もあるし…………」
「……そっか…………仕方ねえな!! 俺も応援してやるよ!」
「はあ? いらねーよ。バーカ……」

 そんなことを言いながらも、やっぱり嬉しい。フィッイが戻ってきたんだと思うと。

 二人で話していたら、がちゃんとドアから大きな音がして、それが開いた。中に入ってきたのは、久しぶりに犬の姿のティーイラットだ。ドアが開く時に大きな音がしたのは、こいつが犬のまま、ドアノブに飛びついたからだろう。

「ティーイラット!! お前も起きてたのか!!」

 声をかける俺に、そいつは犬のまま飛びついてくる。

「うわっ! や、やめろよっ……!」

 飛びついてきたそいつは、俺の前でちょこんとお座りして、いつもの優しい目をして言った。

「もう……体は大丈夫か?」
「もちろんだっ……! お前こそ……砂の中に突っ込んだだろ!? もう動けるのか?」
「あれくらい、なんでもない。お前が無事でよかった」
「あ、あれくらい……なんでもねえよ」

 つい、ティーイラットと同じように答える俺。まだ少し体が痛いが、そんなことどうでも良くなるくらい嬉しい。こいつが無事だったから。

 するとティーイラットは、俺とフィッイの間に入って来て、またちょこんと座る。

 一人で寝るためのベッドの上に、二人と犬がいると、さすがにちょっと狭いぞ。

「て、ティーイラット?」
「……よく、友人とは一緒に寝ていたのか?」
「は? フィッイとか?」

 つい、フィッイと顔を見合わせてしまう。そして、首を横に振った。

「んなわけねーだろ……酒飲んで朝まで一緒に酔い潰れるくらいだよ……」
「……朝まで…………」
「ティーイラット? どうしたんだよ?」
「…………朝食ができたらしい」
「へ?!」
「グラーイが作ってくれた。肉をたっぷり使って」
「本当か!? 今行く!!」

 飛び起きて部屋を出る俺。背後からティーイラットと、相変わらずだなって言ってるフィッイもついてきた。
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