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79.埋めればいいよ
しおりを挟む構える俺だが、アティグラはいきなり銃を抜くと、銃口を俺に向けた。
「へ?」
びっくりする俺に、そいつは問答無用で発砲する。何度も銃声が響いて、銃弾は俺の頬を掠めていった。
いきなり撃つか!? あいつ!!
銃は、あまり攻撃範囲は広くないが、リーチと殺傷能力がとにかく高い。最近では、それに魔法をかけて、攻撃範囲と威力を増大させる奴までいるらしい。
あいつが持っているものも、明らかに強化されている。砂の力使って銃弾と速さが増強されてやがる。
俺を狙うそいつの周りからも、砂が浮き上がった。魔法まで操るのか。
廃ビルん時使われなくてよかったー。連れてかれた時に、魔法と銃使われてたら、俺、絶対死んでた。
銃は射程距離は長いが、俺は使ったことがない。そのものが割と高価で、弾がないと使えない上に、奪われたらこっちが一気に不利になる。なにより、そのリーチの長さのあまり、ターゲットを狙うことに夢中になり、足元がおろそかになるからだ。
弾丸から逃げながら、壁に飛びつき天井に飛び上がる。あいつは狙いが甘い。いくつか弾丸が俺の体をかすっていくが、どれも足止めにもならねえ。
銃を撃つそいつの姿を視界にとらえる。
その時、弾丸が止んだ。
もう弾切れか。反応もリロードも、いつまで待たせる気だ!
焦るそいつに、次の一手もない。
そいつの周囲に魔法をかける。小さな風を起こす程度だが、銃さえ奪えばそれでいい!
浮き上がった風は、そいつの手から銃を奪い去った。
これであっちは丸腰! 開けた視界に動揺したそいつの顔。
殴り飛ばしてもいいが、ここは砂の力を試してみてえ! グッと拳に力を入れると、そこが熱くなる。きた!!
「俺とフレイムが世話になったなぁっ……!! これはその礼だっっ!!」
振りかぶった拳で、そいつを殴り飛ばす。変な音がして、そいつは壁まで吹き飛びめり込んで動かなくなった。
やっべえ……や、やりすぎた??
「な、なあ…………や、やりすぎた……か?」
倒れたアティグラに近づくと、そいつはぐったりとして泡を吹いている。力込めて殴りすぎたか……? 生きてはいるみたいだけど、全く動かない。
すでにこっちに向かって吹いていた砂嵐は、ティーイラットたちが治めてくれて、周りは力を失った砂だらけだけど、静かだ。
俺の足によじのぼってきたウィルットを抱き上げると、彼は倒れた男を見下ろし、平然と言った。
「大丈夫じゃない? 大丈夫じゃなかったら、埋めればいいよ」
「やめろ!」
焦る俺に、ファンデッルが呆れたように言う。
「貴様には手加減の仕方もわからないのか? 砂の力を使うなら、加減も覚えろ。無力が突然力を持つと、すぐに浮かれるから始末が悪い」
「はあっ!? そんな必要ねえだろ!! 俺はこいつに追いかけ回されて、ついでに今まで散々我慢してきたんだ!!」
二人で怒鳴り合っていると、ティーイラットが倒れたアティグラに近づいて、俺に振り向いた。
「死んではいない。お前は気にしなくていい」
「そ、そうか……よかった……」
今度は、ファンデッルがそいつに近づいて行く。
「とりあえず、起こすか……」
ファンデッルがそいつに手をかざすと、アティグラは呻いて目を覚ます。
「う……あ…………」
「起きろ。ここは今、どうなっている? やけに砂が溢れている。どういうことだ?」
ファンデッルが聞いても、そいつは話す気は全くないようで、ファンデッルを睨みつける。
「ぐっ……き、貴様らっ……こんな真似をしてっ……!」
喚きかけたアティグラは、急に喉を押さえ、苦しそうに喘ぎ出した。
後ろに振り向くと、ティーイラットが、じっとアティグラを睨んでいる。初めて、俺がこの対策所に逃げ込んできた時と同じだ。ゾッとするほど冷たくて、口を挟めなくなる。きっと彼が魔法をかけているんだろう。アティグラの顔色がどんどん変わっていって、そいつは、力なくへたりこんでしまう。
栄養の魔法かけた時、あんまり怒らせなくなてよかった……
膝をついたアティグラに、ティーイラットは今にも殺してしまいそうな目を向けて言った。
「聞かれたことに答えろ。このビルの状態はどうした? 普通とは思えない。この砂はなんだ?」
「……ぐっ………………ち、地下に……砂が…………あの人は、ここを爆破するつもりだ……」
やっぱりそうか。
あいつ、自分のところぶっ壊して、証拠も何もかもぶっ壊すつもりだ。
俺はアティグラにつかみかかった。
「フィッイは……フィッイはいるのか!?」
「……」
「あいつは無事なんだろうな!!?」
「生きて……いるはずだ。今は、まだ……」
「…………あいつに何かあったら、てめえら全員ぶっ殺す!」
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