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15.殺されたりしないよな!?

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 俺は、ティーイラットに連れられ、エレベーターで、ビルの上の階に向かった。

 オフィスから寮に向かうエレベーターは、街を見下ろせるように、わざわざガラス張りになっている。どんどん地上が離れていくのを見ていると、ますます心細くなりそうだ。

 フィッイの奴、心配してるだろうな……

 一体、どこへ連れて行かれるんだ?

 一緒にエレベーターに乗ったのは、ティーイラットとファンデッル。副所長は後から来るらしい。

 そして、さっきから誰もひとことも話さない。なんだこの空気。

 ティーイラットはずっと無言だし、壁にもたれかかったファンデッルはずっと俺を睨んでいる。

 ティーイラットは栄養の魔法の件で絶対怒っているだろうし、ファンデッルの方は、俺のことを疑ってる。むしろ、殺すことしか考えてなさそうだ。

 今のうちに、こいつが襲って来た時の対策を考えておいたほうがいいかもしれないな……

 そんなことを考えていると、ついにエレベーターは最上階について、扉が開いた。

 寮っていうから、いくつも部屋が並んでいるのかと思ったが、部屋は一つらしく、エレベーターを下りた先には、大きな扉がひとつだけ。

「これが……寮? 全員で住んでるのか?」

 たずねると、鍵を開けていたティーイラットが、首を横に振った。

「ここには俺とファンデッル、副所長だけで、他の所員は下にそれぞれの部屋を割り当てられている」
「なんでお前らだけ三人一緒なんだよ……」

 きいても、ティーイラットは「……そっちの方が都合がいいだけだ……」と歯切れの悪い返事をするだけ。

 連れてきた奴を誰にも見つからずに殺せるように、なんて目的はないよな……

 ますます怖くなってきた。下にいくつも部屋があるなら、俺もそっちに行きたい。

 ティーイラットが扉を開ける。その向こうの玄関は、玄関なのかって疑いたくなるくらい広い。大理石の床には家具も靴もなくて、何もない印象だ。

 いくつも家具を並べられそうなほど広い廊下にも何もない。その先のリビングにまで、ソファとテーブルしかなくて、最低限のものしかない感じだ。ダイニングの方にも、あるのはダイニングテーブルだけ。

 リビングに何もないかわりに、壁のほとんどが窓になっていて、街が見渡せた。外は月と星空。照明をつけていないと、まるで夜空に立っているみたいだ。

 俺は思わず窓に駆け寄った。

「……すっげ……街があんなに遠い……」
「だろ?」

 すぐ後ろでティーイラットの声がして、振り向くと、彼は俺の隣に来て、砂漠の方をどこか愛おしそうに見つめていた。

「この景色を楽しみたいから、明かりもつけないし、あまり家具なんかは置かないんだ」
「暗くて不便じゃないか?」
「そんなことはない。前に住んでいたところが、こんな感じだったからな」
「前って……?」
「……」

 ティーイラットは、何も答えず、部屋の間接照明だけをつけて、キッチンの方に向かう。

「嫌いなものはあるか?」
「は?」
「食事だ。食事。嫌いなものはあるか?」
「ピーマン苦手で……というか、野菜は全部……」
「俺は甘いものが嫌いだ」

 うっわっ!! びっくりしたっ!!

 つい、悲鳴をあげそうになった。

 後ろからひょこっと顔を出して、甘いもの嫌いを告白したのはファンデッル。

「なんでいきなりでてくんだよ!! クソチビっ!!」
「ファンデッルだ。その腹立たしい呼び方をやめろ。殺すぞ」

 魔力を膨らませて、俺に迫ってくるファンデッル。吹き出た魔力で、周りの空気がめちゃくちゃ重くなったかのようだ。
 マジでこれはやめてほしい。息が苦しくなった俺は、その場に座り込んでしまった。
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