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13.疑われてる!?
しおりを挟むファンデッルは、俺たちに黙って座るように言って、書類の向こうから、俺を睨みつけた。
「ここへ何をしに来た?」
「だから、昨日の魔物のせいで変な夢見て頭痛するから、なんとかしてもらいに来たんだよ! それにも書いてあんだろ! 何度も聞くな!!」
「夢……魔物の術か……」
「そうだよ。困ってるんだ、早く解け!!」
「そんなものは自業自得だ。弱いくせに魔物に手を出すから、そんな術をかけられるんだ」
「はあ!? 俺は弱くねえっ!!」
「事実としてお前は負けている。お前が弱い証拠だ」
「るっせえよ油断しただけだ!! お前ら、魔物の事なんとかしてくれるんだろ!? グダグダ言わずに解けよっ!!」
「魔物を見つけた時に、なぜすぐに通報しなかった?」
「死にそうになったんだぞ!! 呑気に通報してる場合じゃなかったんだ!!」
「通報はすぐにしろ。倒したと思っていても、そばにはまだ別の魔物がいることもある。まれに蘇るものもいる。それくらい、面倒なものだ。その程度のことも知らないのか?」
「うるせえっっ!!」
なんだこの偉そうなガキ……一体何様だ!
魔力さえなかったら、ぶん殴ってやりたい。
だけど、圧倒的魔力差のある俺は黙るしかない。
次にファンデッルがデスクに並べたのは、俺の変装グッズ。確か、魔物から逃げる時になくしたはずなのに。
「これはお前のものだな? デトズナー」
「そ、そうだけど……なんでここに……なくしたはずなのに」
「下を荒らした魔物について、所員が調べを進める途中、ここから少し離れた路地裏で見つけたらしい。なぜこんなものを持っていた?」
「それは……お前に会いたくないから……変装してくるつもりだったんだよ!!」
「魔物のことを相談するつもりなのに、会いたくないと言うのはおかしい。本当のことを言え」
「おかしくねえよ! てめえ、俺に会ったらキレるだけだろ!! だから持ってきただけだ!!」
「それ以外にも、お前には怪しいところが多すぎる」
「はあ!?」
不本意な疑いだ。俺のどこが怪しいんだ。
ファンデッルは、じーっと俺を見ていた。白い髪からのぞく金色の目が、まるで杭のように俺の体に突き刺さる。酷く居心地が悪いのに、その場から逃げ出すことができない。
なんだこのチビ……
そいつは、デスクを乗り越え、俺の胸ぐらを掴んだ。
怯んだら負ける。
俺はじっと動かず、そいつを睨んでいた。
「なんだよ……取り調べの途中に暴行か?」
「砂の力を感じる……」
「すな? 何言って……いっ……! 離せっ……」
今度は、俺の襟元を掴んで顔を近づけてきた。あまりに力が強くて、もう息ができなくなりそう。
けれど、そいつはそんなことには構わずに、俺の襟元を引っ張り顔を近づけてくる。
「なぜ砂の力を持っているっ!?」
「知らねーよっ……砂なんかっ……離せっ……っ!!」
「嘘をつけ。必ずその体に力を取り込んでいるはずだ……魔物を盗む奴には、それを利用して砂の力を体内に取り込む奴がいる。そうやって、自らを強化するらしい。お前……まさか…………」
「知らねーよっ!! 勝手なこと言うな!!」
「そうでないと主張するなら、どんな方法を使ったか話してみろ」
「だから、知らねえんだよっ!!」
俺は砂なんか知らない……はずだ。
いや待て。もしかしてあの時か?
土産物の砂を買った時……砂を食べたのがまずかったのかも……あれ、そんなに大ごとだったのか?
「あ、あの……」
「話す気になったか?」
「す、砂……食べたかも……」
「……食べた?」
「だから……その、す、砂、食べた……かも……多分、その時じゃないかなー……砂の力が俺の体に入ったの……」
「……そんな馬鹿な言い訳が通ると思うのか? このクズが……」
「落ち着けクソチビ……あー、その、腹減ってて」
まさか魔力が欲しくて食ったなんて言えねえ。
惨めすぎる。
苦しい言い訳をしていたら、そいつはますます冷たい目で俺を見る。
「馬鹿らしい嘘はやめろ。話せないような理由でもあるのか?」
「ねーよ! 俺はちゃんと本当のこと言ってるだろ!」
「お前、ウィルットと接触したらしいな?」
「ウィルット? ああ、あの竜か……接触したっつっても、あっちが勝手に俺を誘拐したんだぞ!」
「お前みたいな力のない人族を、なぜ竜が連れ去る?」
「んなもんあいつに聞けっ!!」
「やはり怪しい……その砂の力を狙っているんじゃないのか?」
「知るかよんなこと!! あっ……そ、そうだ!! 魔物と間違えた、みたいなこと言ってた!」
「次から次へと、嘘としか思えない言い訳ばかりして、それでどうにかなると思っているのか? お前とウィルットは仲間で、ティーイラットに尋問されていたお前を助けるために、ウィルットが連れて行ったんじゃないのか? 貴様、あれと組んで砂の魔力を狙ったな!?」
「んなわけねーだろ!! じゃあなんで俺ここにいるんだよ!!」
「仲間割れでもしたんだろう。変装してここに入り込もうとしていたのが、何よりの証拠だ」
「勝手なこと言ってんじゃねえっっ!! 俺がそんなことするはずねえだろ!!」
「逃げるために、ティーイラットにおかしな魔法をかけたんじゃないのか?」
「ちげーよ!! あれは本当にそいつを助けたくて……栄養がつく魔法なんだ!!」
「……なんだそれ。栄養? 聞いたことないぞ」
「き、聞いたことなくても、そいつを助けたかっただけだっ!! 効く時は効くんだよ!! なんでそんなに疑ってんだ!!」
「お前は怪しすぎる。変装して魔物を引き連れてこのビルに押し入り、たまたま一人でいたティーイラットを動けなくして、何をする気だった?」
「勝手に凶悪犯にするな!! 俺はちょっとバカなだけでそこまで悪人じゃねえ……た、多分…………な、なんだよ……」
周りを見ると、その場に全員から向けられる冷たい目。ファンデッルも、副所長も、ティーイラットまで。
なんでこんな目で見られてんだ。俺。俺が何かしたかよ!!
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