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6.対策を立てる!
しおりを挟む「いってっっ!!!」
突き刺されたように頭が痛んで、俺は意識を取り戻し、寝ていたベッドから飛び起きた。
周りを見渡すと、そこはボロい会社のビルの仮眠室だ。
俺の体には包帯が巻かれ、傷口を消毒してくれていたらしいフィッイは、突然俺が起きて目を丸くしていた。
「いきなり起きんなよ……」
「痛えんだよ!! もうちょっと優しくしろ!」
「きめえんだよ、馬鹿。嫌なら自分でしろ。手当ての最中寝るな」
「……るせえ」
石で怪我した体の痛みは、もうなくなっている。だけど、頭の奥を焼くような気持ち悪さがある。今にも吐きそうだ。
ぐったりベッドに倒れる俺。フィッイは、冷たいペットボトルを俺の額に当ててくれた。
「お前……マジで大丈夫か? ほら」
「頭痛え……」
「また二日酔いか?」
「……それもあるけど……変な夢見て眠れなかった……」
「夢?」
「昨日のあの二人組が夢に出てきたんだよ……」
「コンビニで会ったって言ってた奴らか?」
「すげー怖かった……」
「夢に見るほど怖かったのかよ……」
「怖えよ。しかも、夢の奴は現実の二倍やばかった。なんか知んねえけど、すげえキレてて、俺に向かって来るんだ……おかげで眠れねえし、朝からしょっちゅう頭痛くなる……」
「……そういうのは早く言え。魔物の術だろ」
「魔物の術……?」
「ああ。昨日コンビニで魔物追いかけ回したんだろ? その時かけられたんだ。魔物の中にはそういう術を使うやつもいる。小さいものほど、術に長けてるらしい」
「はあ!? なんだよそれ!」
「砂の対策所行ってこい。解いてもらえるから」
「なんだそれ?」
「知らねーのか!? この街来たときに一番最初に教えられることだろ……砂とか魔物が暴れて困った時に対処してくれる組織だよ。最初は政府から派遣された奴らがやってたんだが、魔物に裏かかれてばっかで使えねーってことで、今度はそいつらから依頼を受けた奴が作ったんだ。確か正式な名前は……砂の制御と管理対策及び警備係……だったかな……? 所長もその下の奴らも、魔物を退治することだけなら世界一らしい。そこに行けばなんとかしてもらえる。地図渡してやるから、仕事終わったら行ってこい」
フィッイは懐から地図を取り出し、それがあるところに丸をつけてくれる。
魔物の術ってことは、解かない限り、今晩もこれが続くんだろう。昨日はずっとうなされて、起きたら全身汗だくだった。こんなのが続くなんて嫌だ。
渡された地図を見つめていたら、フィッイに肩を叩かれた。
「すぐに解けるから安心しろ。お前が言ってるその二人、魔物は預かるって言ってたんだろ? もしかして、対策所の人たちなんじゃね?」
「は? そーなのか?」
「そーだろ。あー……確か、今日買った新聞に……」
フィッイは、椅子のわきに置いたコンビニの袋から新聞を取り出し、その一面を指した。
「ここだよ。ここ。見ろよ」
「んー……?」
新聞には、昨日街のそばで暴れた巨大な魔物を、対策所の人が追い払った記事が書かれていた。大きく載った写真には、どう見てもカメラを嫌そうに避けているあのでかい方が写っている。その奥には、怖い方のチビが人混みをかき分けて背を向けた姿があった。
「……間違いねえ……こいつらだ。巨大魔物を一刀両断、情け容赦ない一撃って……すげえ…………おい、待てよ。対策所行ったところで、こいつらいるなら、魔物のせいであなたたちの夢を見て困ってますって、言いづらくね?」
「……夢の中の話までしなきゃいいだろ。悪夢を見るって言っとけ」
「……だけど俺、この小さい方キレさせたんだぞ。行った途端、殴られたらどうすんだよ」
「……向こうも仕事なんだからそんなことしねえって。悪いこと言わねえから行ってこい。そんなに怖いのかよ……」
「はあ!? 怖くねーよっっ!! こんなやつら!!」
と言いつつ、本当は怖い。頼むならデカい方にしよう。ついでに昨日のこと謝れるし、小さくて怖い方には二度と会いたくない。
「……小さい方に会わないように、対策立てよう……」
地図を裏にして、作戦を考え始める。真剣にやっているのに、フィッイは「助けてもらいにいくのに、そいつらに対する対策考えてどうすんだよ、馬鹿」と言いながらゲラゲラ笑い出した。
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