17 / 37
17.本当に
しおりを挟むベルブラテスに、会議への出席を認められた俺は、彼とガレイウディスに連れられて、城の中を歩いていた。
デトリットや他の仲間たちがいる部屋には、ベルブラテスの部下だという魔法使いが結界を張っている。ベルブラテスが一番信頼できる奴だって言ってたし、大丈夫だろう。
……本当にあいつらのこと守って、俺との約束も守ってくれてたんだ……
ちらっと、隣を歩くベルブラテスを見上げる。そいつは、俺には気づいていないのか、前を向いたまま。横顔を見ているのも、なんとなく落ち着かなくて、すぐに前を向く。
城をしばらく歩くと、広い廊下の向こうに、数人の貴族の魔法使いが立っていた。その中に、見覚えのある奴がいる。深い緑色の長い髪の、ひどく冷たい目をした男だ。確か……昨日、地下牢で俺を睨んでいたブローデスだ。
その男の顔を見て、ガレイウディスが少し動揺するのが分かった。
「……なぜ……あいつがここにいるんだ……」
ぼそっと言ったガレイウディスは、じっと、ブローデスを睨んでいるようだった。
昨日、ガレイウディスがガキの頃の話を延々語っていた時、ブローデスの名前はよく出てきた。
ガレイウディスはブローデスをムカつく奴って言ってたけど、あの話を聞いていたらそんなふうに思っているとは思えない。
ガキだったガレイウディスが貴族たちに嫌味言われた時に、ブローデスが彼を庇って、貴族たちを手酷く言い負かしたって話、本当なのか……?
気になることは他にもある。ガキの頃は四人で仲が良かったようなのに、今は、ブローデスはキユルトを擁護していて、ベルブラテスとガレイウディスとは対立しているらしい。
ブローデスは、こちらに振り向いた。そしてガレイウディスがいることにすぐに気づいたようだけど、彼はそれを無視して、ベルブラテスに振り向いた。
「遅いですよ。ベルブラテス様……キユルト様がお待ちです。ここからは、お一人で会議室へ向かってください」
答えるブローデスは、まるで感情がないかのように、無表情だった。声も淡々としていて、冷たさすら感じるほどだ。
ベルブラテス以外は帰れってことか……だったら絶対に帰ってやらん!
ガレイウディスも同じ気持ちらしく、彼は、ブローデスを睨みつけて言った。
「俺たちも行く。そこを通せ。ブローデス」
「……ガレイウディス……あなたまで、どういうつもりですか……? 今日の会議に、護衛は必要ありません……強固な結界を何重にも張っています。あなたの後ろの不審者のようなものは、二度と入れません。キユルト様を危険に晒すわけにはいきませんから」
それを聞いて、ブローデスの周りにいた貴族の連中は、俺たちを嘲るように笑い出す。笑ってる連中には馬鹿にされてるみたいだが、そんな奴らより、俺は、ブローデスの方から目を離せなかった。
……ひどい敵意を感じる……
だって、さっきからずっと睨まれてる。昨日の魔法の道具のこと、怒ってるのか……? それとも、単に俺が気に入らないのか?
あの牢でも、俺を婚約者にすると言ったベルブラテスに、ブローデスは冷静に、だけど強く反対していた。もう今すぐにでも殺しにきそうだ。
ガレイウディスは、ブローデスに向かって言った。
「俺たちは、ベルブラテス様から離れるつもりはない。そこを通せ。ブローデス……」
「この先は、会議への出席を許可されたもの以外は立ち入り禁止です。あなたが通ることはできません」
「通せと言っているだろう……お前にも分かるはずだ……このままお一人でベルブラテス様が会議に出るなど、あまりに危険すぎる」
「会議室の周りには、今は結界を張って、不審な者は誰も入れないようにしてあります。それに、中で何かあったら、すぐに使い魔を飛ばせるようにしてあります。その時には、あなたたちにも、一応報告してあげますから、さっさと帰りなさい。昨日城に突っ込んできて、魔法の道具を破壊したそこにいる男の方が危険です」
……それって、俺のことだよな……
35
お気に入りに追加
135
あなたにおすすめの小説
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。
くまだった
BL
新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。
金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。
貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け
ムーンさんで先行投稿してます。
感想頂けたら嬉しいです!
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
僕に翼があったなら
まりの
BL
僕は気がつけば大きな鳥の巣にいた。これって生まれ変わった? 全てを忘れて鳥として育てられ、とりあえず旅に出る。だけどなんでみんな追いかけて来るの? 派手な魔法も剣での活劇もございませんがたぶん、おそらくファンタジー。注:主人公は鳥に育てられたので実際より精神年齢が低いです★自サイトからの移植です
【完結】乙女ゲーの悪役モブに転生しました〜処刑は嫌なので真面目に生きてたら何故か公爵令息様に溺愛されてます〜
百日紅
BL
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でしたーー。
最後は処刑される運命の悪役モブ“サミール”に転生した主人公。
死亡ルートを回避するため学園の隅で日陰者ライフを送っていたのに、何故か攻略キャラの一人“ギルバート”に好意を寄せられる。
※毎日18:30投稿予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる