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21*イールヴィルイ視点*違うんだ!
しおりを挟む「あー、イールヴィルイが女の子を監禁してるー」
ふざけた物言いを聞いて、俺は顔を上げた。
声が聞こえた方に振り向けば、廊下の向こうからエウィトモートが歩いてくる。
また邪魔な男が現れた。
すでに時間は深夜。城も静まり返っている。こんな時間なのだから、さっさと眠ればいいものを、なぜこいつだけが元気なんだ。
「失せろ。何が監禁だ」
「だって、嫌がる令嬢を閉じ込めてるんだろ?」
「俺はっ……!」
俺はただ、リリヴァリルフィランに休んで欲しかっただけだ。
しかし、エウィトモートにそう言われると、急にそんな気がしてくる。
そう言えば、リリヴァリルフィランは何度もここを開けてほしいと叫んでいた。俺にそんなことをさせるわけにはいかないと、何度も言っていた。俺が部屋の外に出たのは、薄い生地のゆったりした服を着て俺を見上げるリリヴァリルフィランと一晩同じ部屋にいたら、手を出さないという約束をすぐに破ってしまいそうだったからだ。
しかし、リリヴァリルフィランにしてみれば、やはり恐ろしかったのかもしれない。
違う。怖がらせたいわけじゃない。
「リリヴァリルフィラン! 違うんだ!!」
俺は慌ててドアを開けた。
部屋の中を見渡す。
ベッドには、彼女はいない。まさか、どこかへ行ってしまったのかと思った。
しかし、部屋に入るとソファで眠っているリリヴァリルフィランを見つけることができた。
眠ろうと思って寝たというより、ソファに寄りかかっていたら眠ってしまった、といった様子だ。
ぐっすりと眠っている彼女を見ていたら、少し安心した。ボロボロの体で、疲れ切っていたようだったから。
しかし。
眠っている彼女がかすかに動くと、肩から服がずり落ちそうになって、慌てて魔法で直した。触れたら、今度こそ本当に我慢できなくなりそうだ。
魔法で、ベッドに運ぶ。
その間も、彼女は全く目を覚ますことはなかった。
どれだけ魔法が使えても、貴族の令嬢が魔物に対する警備につくことはほとんどなく、それをするのは、召使いの魔法使いだ。
しかし、俺が会った時、彼女はいつも、ほとんどない魔力を使い、城を魔法の光で照らして魔物を遠ざけていた。
それは、魔力が低い魔法使いや、まだ魔法がうまく使えない見習いの魔法使いがすることだ。
一晩中、夜が更けてからは一人で城を照らしていた彼女は、きっと召使よりもずっと悪い、奴隷のような扱いを受けていたのだろう。
ベッドに入った彼女が寝返りを打つ。そろそろ出たほうがいい。彼女には、俺はドアの外にいると言っているのだから。
眠るリリヴァリルフィランに背を向ける俺だが、一緒にいたエウィトモートが首を傾げてまた余計なことを言う。
「どこ行くんだよ。ここにいればいいじゃん」
「俺は外にいると約束している……貴様はいつまでリリヴァリルフィランのベッドのそばにいる気だ?」
「朝まで!」
「そうか…………」
もう、この男の話など聞いても無駄だ。
俺は無言で、魔力の炎を纏った。
俺の意思をすぐに理解したエウィトモートが顔色を変える。
「お、おい……い、イールヴィルイ??」
「そう言えば貴様……リリヴァリルフィランの寝顔を見たな……?」
「見えちゃったの! 見えちゃっただけ!! 落ち着け! イールヴィルイ!!! リリヴァリルフィランは、乱暴な男は嫌いだと思うぞ!!!」
「貴様が死ねば、俺が乱暴をする理由が一つ減りそうだ」
「はっ……!? お、おいっ……! イールヴィルイ!!!!」
エウィトモートが慌てて後ずさる。
すぐに消すつもりだったが、騒ぎ過ぎてしまったらしい。
リリヴァリルフィランの寝ていた布団が動いて、彼女が目を覚ましてしまう。
「……か、閣下…………?」
「り、リリヴァリルフィラン……ち、違う。俺は何もしていない」
突然そんなことを言われて、彼女が首を傾げている。もうさっさと出ていかなくては。
俺は彼女に「すまない」とだけ言って、エウィトモートの手を掴んで部屋の外に飛び出した。
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