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10.冷たい魔法

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 離せって言ってるのに、フュイアルさんはそれを無視して、僕の服のボタンを外していく。

「嫌だっ……離せっ!」
「……そろそろ静かにしないと、本気で痛めつけるぞ」
「あんな約束守るくらいなら、その方がマシだ!! 離せよっっ!!」
「……」

 ついにキレさせたのか、フュイアルさんはひどく冷たい目をした。

 僕の服は弾け飛んで、吊るされたまま丸裸にされた僕は、初めて心底恐ろしくなった。

 何をされるか分からない。

 フュイアルさんは、青くなる僕の前で、魔法の鞭を作り出した。

「な、何する気……だよ……」
「少し痛いぞ」

 ひゅん、と風を切り、鞭が僕のお尻に振り下ろされる。ピシッと、痛みのわりには軽すぎる音がした。

「ぃっ…………たっ…………!!」

 何が少しだ!! めちゃくちゃ痛いっ!!

 痛すぎて涙が出てくる。息すらできないくらい痛いのに、無情な鞭が、今度は背中に振り下ろされた。

「ああああぁぁぁぁぁーーーーっっっっ!!!」

 背中、壊れそう。まるで切り裂かれたみたいだ。休む間もなく、今度は足にまで鞭が打ち付けられる。

「ぐっっ……いっ……いた……」

 ポロポロ泣いている僕に、フュイアルさんは笑顔で近づいてきて、僕の頬に触れる。

「約束を守る気になったか?」
「……っ……な、なるもんか!!! 誰が守るか!!! 絶対やだ! 殴り殺されたって、絶対聞かないっ!!」
「……じゃあ、別の方法を試そうか」

 そいつの持っていた鞭が光りだし、鞭は光の粒になって僕を取り囲む。

 今度はどんな方法で痛めつけられるのかと、怖くて震えだしそう。

 こんな奴に怯えるなんて悔しすぎる。絶対に恐怖を顔に出さないように、僕はぐっと歯を食いしばった。

 光の粒が、一つ一つ僕の体に入ってくる。そのたびに体の中が、まるで火をつけられたように熱くなる。

「んっ……! ひんっ……!! ひっ……ぁ、ん……っ!! な、何? これっ……」
「魔族が使う、媚薬の魔法」
「はっ!? び、びや……びやくっ!?」

 え、び、媚薬って言った?? だからさっきから体がピクピクするのか?

 知ったときには、もう遅すぎた。

 体の中に生まれた熱が溜まっていく。裸にされ、丸見えの自身の先が、ひくひくと物欲しげに揺れた。そのたびに、緩い甘さみたいなものが、僕の体を震わせる。

「ひぅんっ……ひゃっ……!! と、解いてっ……!! 魔法、解いてぇっ……!!」

 もう、さっきの鞭打ちの痛みなんて、まるで感じない。
 集まった快楽が、膨れ上がった欲望の先を何度も刺激する。

 もう限界。早くしごいて解放されたいのに、吊るされた腕を何度も動かそうとしても、鎖が食い込むだけで逃げられない。

「ふっ……うっ……ふぅっ……んっ……んんぁっ……! ぉ、お願いっ……ぃ、言うこと、聞くっからっ……これ外してぇっ……!!」

 必死の思いでフュイアルさんに頼むけど、そいつは楽しそうだ。鎖を操り僕を吊り上げ、膨らんだ僕の屹立を、からかうようにツンツン指で弄ぶ。

「ひやあっ!! や……やだっ……!! いや……っ!! 嫌だっ……や……やめて……やだぁっ…………ぉ、お願い……っ!! ……い、言うことっ……聞くからあっ!! フュイアルさん……っ!!」
「えっちなことしてる時くらい、フュイアル様でいいよ」
「死ねよ刺すぞクソ上司!! 気持ち悪いんだよ! 死んでも呼ぶかっっ!!」
「早速自分で言ったことを反故にするか……言うことを聞くんじゃなかったのか?」
「それは……っ! だ、だからって……誰がそんな風に呼ぶかっ! 嫌なもんはいや……」

 怒鳴ってた声が小さくなっていく。

 だって、目の前の男が、手にローションを垂らしていたんだ。

 何に使うんだ、そんなもの。なんでそんなに楽しそうなんだ。なんで鼻歌歌ってんだ!

「な、何してるんですか!?」
「レイプの準備」

 気持ち悪いくらいの笑顔で言ったフュイアルさんは、ドロドロになった指を僕の背中に回す。

「まずは、後ろの孔を躾けるか……」
「や……嫌っ……! 嫌だっ……っ!! やめろぉっっっ!!!!」

 冷たいフュイアルさんの指が、僕の背中を伝いながら降りて行く。

 媚薬を盛られたせいだろうか。その冷たい指の感触にすら、僕の体はいちいち反応して快感に変えてしまう。

 こいつの冷たさが気持ちいいなんて、僕の体、おかしくなっちゃったんだ。

 フュイアルさんの指が、僕の後孔に触れる。ひやっと冷たくて、背中が反り返る。
 喘ぐ僕をからかうみたいに、フュイアルさんの指が、僕の小さなそこを押し開けて、中に入ってきた。

 冷たい指が、ゆっくり僕の中を広げて行く。

 だけど……

「いっ……いたっ……痛いっっ!!」
「ん……? あれ? トラシュ……」

 フュイアルさんが指を抜く。それでも、まだ痛い。ズキズキする。

「もしかして……いつも乱暴にされてた?」
「乱暴じゃないっ!! ダストは……」

 ダストは、いつもちょっとサディストで、僕を強引に抱く。する時は、いきなりベッドに押し倒され突っ込まれてた。しかも、昨日は機嫌が悪かったらしく、馬鹿でかい大人のおもちゃを突っ込まれて、奥までそれで突かれまくって血が出た。だからまだ痛いんだ。痛すぎて涙が出てくる。

「うっ……うっ……もうっ……無理っ…………」

 なんでだろう。ダストを思い出したからか? 涙、溢れてくる。

 こうなると、もう体に力なんか入らない。抵抗する気力すら消えた。

 力が抜け、だらんとしている僕を、フュイアルさんは、なぜか床に下ろしてくれた。

「フュイアル……さん?」
「レイプは許してあげる。かわりに……」
「わっ!」

 いきなりフュイアルさんは僕を抱きしめ、胸にキスをした。

 え? ちょ、え!? 何するんだこいつ!!

 びっくりした僕は、そいつを蹴り上げ殴りかかる。だけど、僕の蹴りも拳も、あっさり避けられてしまった。

 フュイアルさんは、僕から飛び退いて笑う。

「傷を癒す魔法をかけたよ。もう痛くないだろ?」
「え? あ……う……」

 本当に痛くない……本当に回復してくれたんだ。じゃあキスなんかしないで、魔法だけかけてくれればいいのに……

 顔を上げたら、フュイアルさんは、僕に微笑んで言った。

「約束を果たすのは、また今度にしてあげる」
「なんで……」
「傷つけたらかわいそうだから。夕飯の続きしようか」
「フュイアルさん……」

 フュイアルさんは僕に背を向け、食事が並んだリビングの方に歩いて行く。

 ふざけやがって。

 僕を吊るして襲おうとしておきながら、何が夕飯だ。

 力一杯恨みと怒りを込めて撃った魔法は、けれどもあっさり吹き散らされてしまう。

「はい。残念でしたー」

 振り向きもせずにそいつは言って、僕の首にはまた首輪が現れる。

 フュイアルさんは勝ち誇った顔で、僕の首輪の鎖をぐいぐい引いた。

「おとなしくしてれば何にもしないのにー」
「うるさいっ……! 離せ変態上司!!」
「だめ。食事して暴れない約束くらい、守りなさい」

 くっそ……なんで敵わないんだ……
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