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番外編16.オーフィザン様とデート!
168.さっさと終わらせないと
しおりを挟むオーフィザン様が作り出した使い魔の竜は、夕焼けに染まり始めた空を飛んで、城から少し離れた、古いけど広い敷地にあるお屋敷の方に降りていく。
屋敷の大きな窓の中で、何かが揺れているのが見えた。もしかして、あれが魔物……?
「クラジュ、キュウテ、つかまっていろ」
オーフィザン様に言われて、僕はキュウテと一緒に、オーフィザン様に抱きついた。
すると、使い魔の竜は、お屋敷の窓を突き破って、屋敷の中に飛び込んでいく。
僕らのことは、オーフィザン様の魔法の光が包んでくれて、窓を突き破った衝撃から守ってくれた。
おかげで僕たちは無傷。だけど、窓には大穴が空いちゃってる。
降りた先は、広間みたいだった。
突然空からオーフィザン様が突っ込んできて、その部屋にいた人たちは、怯えているみたいだった。
「な、な、な、なんで……!? なんで……窓からっ……!! き、貴様っ……!」
男たちの背後には、不気味な虫を巨大化したような魔物が、ギーギーと不気味な声で鳴いていた。
「な、何っ……!? あれ……」
怯える僕を、オーフィザン様は抱き寄せてくれる。オーフィザン様はずっと、そこにいた人を睨みつけていた。
そこにいたのは、数人の男の人で、真っ黒な服を着た人たちと、貴族然とした人が数人。
何か相談事でもしていたのか、長いテーブルには書類が散らばって、まだ湯気を上げているお茶とティーカップが並んでいる。
オーフィザン様は、テーブルの中央近くにいた人に、大股で近づいていく。
「貴様が黒幕か……」
「貴様っ……! なぜ、こんなところに……」
「なぜだと? そんなことは俺の方が聞きたい……」
近づいていくオーフィザン様に向かって、その人のそばにいた人たちが、口々に喚いた。
「貴様っ……! 山奥の魔法使いだろう!! 何をしに来た!! 無礼ではないか!!」
「下がれっ……! ただで済むと思うなよ!!」
すると、喚くそいつらの後ろにあった箱から、真っ黒な鉄骨のようなものが浮き上がる。不気味な音を立てて、鉄骨が積み重なり、だんだん形を作っていった。それはまるで、巨大な蜘蛛みたいだ。
それが、僕たちに向かって大きく鳴いた。まるで悲鳴をいくつも合わせたような声で、僕らは震え上がりそう。
それでも、オーフィザン様は微動だにしなかった。
怯えたキュウテが、僕の服をぎゅって掴んでくる。
「く、クラジュっ……!!」
「キュウテ……大丈夫だよ?」
「でもっ……!」
「本当に、大丈夫……」
僕がぎゅって抱きしめたら、キュウテは少し落ち着いたみたい。
オーフィザン様は、魔物を従えオーフィザン様を睨む男に、静かに言った。
「魔物を呼び込んだのは貴様だろう?」
「黙れっ……!」
その男が叫ぶと、後ろにいた魔物は、足を上げて、僕らに向かってくる。
その時、僕らの周りを、温かい光が包んだ。光は、絨毯みたいに広がって、屋敷とその場にいた魔物を包む。すると、魔物は体を震わせ、動かなくなった。
「さっさと終わらせないと、俺と俺の猫の時間が減るんだ。潰すぞ」
オーフィザン様がそう言うと、魔物はベキベキと音を立て、何か重いものに押し潰されるように潰れていく。
暴れていた不気味な魔物が、まるで絨毯みたいに潰れるのを見て、そこにいた人たちは、悲鳴を上げていた。
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