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番外編16.オーフィザン様とデート!
163.デートが一番大事だもん!
しおりを挟む「ふああああああああ!! 高いいい!!」
街の中心から少し離れた静かな場所。小高い丘に立った高い塔の上から、僕は街を見下ろしていた。
すごい……こんなに高い塔があるんだ!! これが展望台!?
長い階段を頑張って登った甲斐があった!! すっごくいい眺め!
風が気持ちいい塔の屋上は、人が沢山いて、みんな街の方を見下ろして気持ちよさそう。
僕も、オーフィザン様と並んで、遥か下の街並みを眺めていた。
こんなに気持ちいいところで、オーフィザン様と二人で並んで景色を眺めていられるなんて、すっごく嬉しい。もっとそばに行きたくて、隣にいるはずのオーフィザン様の方に、一歩近づく。
だけど、そこにいるはずのオーフィザン様がいない!!
なんで!? まさか僕、迷子になっちゃった!?
焦ってキョロキョロする僕の前に、ジュースのグラスが出てきた。氷がいっぱい入ってて、果物と、一番上にアイスクリームと生クリームまで絞ってある!
びっくりして見上げたら、オーフィザン様が、グラスを下げて僕に微笑んでた。
「お、オーフィザンさま? こ、これは?」
「下で買ってきた」
「下で!??」
し、下って、塔の下!? わざわざそんなところまで行ってきたの??
「オーフィザン様……せっかく登ったのに……わざわざ下まで降りてきたんですか?」
「飛べばすぐだ。高いところまで登って、喉が渇いただろう?」
「は、はい……」
「だから、下にいる使い魔の竜を使うか、俺が飛んで上まで送ってやると言ったのに」
「うう……だ、だって……」
僕、オーフィザン様と少しでも長く一緒に歩きたかったんだもん。
だって僕たちは、普段並んで歩くことすら、ほとんどないんだよ? せっかくのデートだもん。二人で並んで歩きたいもん!!
「僕、オーフィザン様と……手を繋ぎたくて……」
なんだか恥ずかしい……夜になったら、オーフィザン様は僕の体をいっぱい愛してくれる。いっぱい触れてくれる。
だけどそれだけじゃ足りなくて、手だってもっともっと繋ぎたいんだもん。
ますます恥ずかしくなって俯く僕の手を、オーフィザン様は握って、微笑んでくれた。そして、僕の手の甲にキスしてくれる。
「ふえ!? お、オーフィザンさま??」
「手くらい、いつでも繋いでやる」
「ほ、本当ですか!?」
「もちろん、本当だ」
「だ、だったら僕、夜だけじゃなくて、お昼も、オーフィザン様と手を繋ぎたいです!!」
「だが、お前はいつも、朝まで俺にされてるんだぞ。昼は寝ないと、体がもたないだろう?」
「そ、そうですけど……だけど、僕……お昼も、オーフィザン様と一緒にいたいんです……」
夜になったら、オーフィザン様に会える。それはすごく嬉しい。
お昼にフィッイルたちと一緒にいるのだって楽しいけど、やっぱり、お昼に目を覚ましたら、オーフィザン様のそばに行きたい。
普段我慢してたことを言ったら、オーフィザン様は、僕の唇に、ほんの少し唇で触れてくれた。
「お、オーフィザン様……?」
「明日から、お前が起きたら、俺が部屋まで迎えに行く」
「へ!?」
「お前用のカゴを用意してやるから、お前は俺のそばで丸くなっていればいい」
「ふえ!? え? え?? え? い、いいんですか??」
「もちろんだ。お前がそばにいれば、嫌な報告書でも捗りそうだ」
「本当ですか!?」
「ああ。俺が迎えに行くまで、いい子で待っているんだぞ」
「はい!!」
うわあああああい!! これからはお昼も、オーフィザン様と、一緒にいられるんだ!!
嬉しくて飛び上がる僕に、オーフィザン様はにっこり笑ってくれた。
そして、僕にジュースのグラスを差し出してくれる。
「可愛い猫だ。ほら、喉が渇いただろう?」
「は、はい!! ありがとうっ……」
差し出されたグラスを受け取ろうとして、僕は、その手を止めた。
液体なんか僕が持ったら、絶対にひっくり返してぶちまけて、とんでもないことになる。デートが台無しになっちゃう!
今日の僕は、絶対にドジしない僕なんだ!!
だから飲み物なんか、絶対に触らないもん!
せっかくオーフィザン様が買ってきてくれたものを断るのは心苦しいけど……
僕は、首を横に振った。
「ぼ、僕は、いいです。お、オーフィザン様の方が、喉乾いてますよね!? 僕はいいので、オーフィザン様、飲んでください!!」
「気に入らなかったか?」
「そ、そんなことありません!! すっごく美味しそうだし、すっごく……嬉しいです!!」
ぶんぶん首を横に振りながら答える僕。
本当は飛びついて口いっぱいアイスを頬張りたい! だけど、美味しそうなアイスよりジュースより、オーフィザン様とのデートの方が大事だもん!
「嬉しいけど……僕……」
おろおろする僕を、オーフィザン様は、近くのベンチに座って手招く。
隣に座れってことかな?
僕が隣に座ると、オーフィザン様は、僕の方にストローを向けた。
「嬉しいなら飲んでみろ」
「え……」
「ほら」
うながされて、キラキラのフルーツたちの誘惑にも負けて、僕はストローを咥えちゃった。咥えたストローから、甘いジュースが流れ込んできて、冷たくて気持ちいい!
「美味しい……冷たくてすごく美味しいです!」
「だったら、気にせず好きなだけ飲め」
「へっ!?」
「お前のドジくらい、俺が防いでやる。これだけそばにいるんだぞ」
うう……僕が心配してたこと、全部バレてる!!
オーフィザン様が、僕を見下ろして微笑んでくれてる。その顔を見たら、すごく安心する!
僕は、ストローをもう一回咥えて、ちゅって吸った。
「甘くて……すごく好きです……」
「そんなに気に入ったか?」
「はい!! ジュースもオーフィザン様も、大好きです!」
すっごく嬉しくて、尻尾をぶんぶん振りながら言う僕だけど、オーフィザン様は少しムッとしちゃった。
「俺は、ジュースと同じか?」
「へ!? え、えっと、そんなことは……」
「いいか? 好きなものはどれだけあってもいい。だが、お前が好きな人はずっと俺だけだ」
「も、もちろんです!」
「それにしては、さっき俺とジュースを並べたじゃないか」
「そ、そんなことありません! 僕、ジュースよりミルクよりお菓子より、オーフィザン様のことが……………………」
「……俺の方が? なんだ? 今、間が空いたぞ」
「ち、違うんです!! だって、その……今、ダンドのクッキーのこと、思い出しちゃって……」
ついつい、僕が大好きなクッキーのこと考えたら、間が空いちゃっただけだもん!!
それなのに、オーフィザン様は僕の首に手をやる。そしたら、そこにいつもお仕置きされる時に出てくる首輪が現れた。そして、もちろん首輪につながる鎖はオーフィザン様に握られている。
ふええええ! オーフィザン様を怒らせちゃった!!
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