【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

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番外編16.オーフィザン様とデート!

161.俺の猫だ!

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 かなり怒っているらしいオーフィザン様は、僕を離して、ほっぺにキスしてくれて、そのあと、すごく乱暴に部屋のドアを開いた。

 バンって、すごく大きな音がして、僕だったら震え上がりそうなのに、ドアの向こうにいた王様は、そんなのものともしない。
 むしろ、一緒にいた二人の護衛の方が驚いたようで、陛下が止めてくれなかったら、多分剣を抜いていたんだろう。
 それもそのはず、オーフィザン様は今にも陛下に魔法をかけちゃいそうな顔をしているんだから。

 それなのに、オーフィザン様が出て来て嬉しそうな顔をしている陛下の額に、オーフィザン様は、杖の先を向けて言った。

「一分やるから言い訳をしろ。終わったら殺してやる」
「オーフィザン、それでは言い訳の意味がないじゃないか。どうした? 今日は随分とご機嫌斜めだ」
「……お前が来たからだ。帰れ。晩餐会まで城には来るなと言ったのはお前だろう!!」
「落ち着け、オーフィザン。あれは、先に城の外で秘密裏に会いたいという意味だ。こうして会えて嬉しいぞ」
「……俺は全く嬉しくない。帰れ。これから俺はクラジュとデートに行く」
「猫とデートもいいが、それはこっちの用事をすませてからにしてくれ」
「お前の話など、どうでもいい。夜には城に行く。それまではデートだ。邪魔をするならお前をここで殺す」

 オーフィザン様が物騒なことを言い出しちゃうから、王様の隣の二人が、緊張した様子で腰に下げた剣に手をかける。

 こ、このままじゃ喧嘩になっちゃう!

 僕は慌てて、二人の間に入った。

「ま、待ってください! オーフィザン様!! 僕、デートは後でも……大丈夫です……」

 本当は、すごく楽しみにしていたから残念だけど、こうしてここまで陛下が来たのは、何か大事な用があったからかもしれない。だったら、僕は我慢しなきゃだよね……

 耳と尻尾をしゅんってさせながら言ったら、オーフィザン様が僕の頭を撫でてくれた。

「お前が我慢を重ねることはない。この男の言うことが無茶苦茶なんだ」

 オーフィザン様に睨まれて、さすがの陛下も少し後ろに下がる。

「お、落ち着け……オーフィザン……何も、お前たちのデートを台無しにしようなどと、命知らずなことを考えているわけじゃない。話はすぐ終わる」
「…………少しだけだぞ」

 そう言って、オーフィザン様は陛下を中に招き入れた。

 オーフィザン様が入れてくれて、陛下はほっとしたみたい。

「お前がここへ来たことは、すでに城で話題になっている」
「だったら今すぐ城に出向いてやる。面倒なことを終わらせて、俺はクラジュとデートに行く」
「まあ待て。こっちにも、用意というものがある。ちゃんと準備をしてからでないと、お前が広間に入った時や晩餐会に、誰を呼んだか、何の話をしたんだと、後で問題になるんだ」
「なんて面倒なんだ……もうこの際、お前にだけ話して帰る。魔物の件だが、報告書の形式がどうこう言うなら、お前たちだけでなんとかしろ。もう報告書は書かない」
「待て待て待て待て! 落ち着け! それに関してはお前次第だ。今夜の晩餐会でその話をしてくれればいい。数人脅して……ではなく、話をしておいてほしい貴族のリストをセリューに渡している」
「……俺の執事に勝手な真似をするな」
「お前に渡したところで丸めて捨てるだろう?」
「だったらお前は何をしに来たんだ? わざわざ、こんなところまで」
「……城では話せないことなんだ」
「なんだ? さっさと言え」
「一つは、さっきの話を覚えておけと言うことだ。晩餐会では、キュウテとブレシーをつけるが、クラジュはできるだけそばに置いておいてくれ」
「分かっている。お前は俺が、俺の大事な猫を手放すと思うのか?」
「いいや、そうじゃない。だが、注意はしてやれ」
「お前に言われるまでもない」
「では、ここからは、もっと大事な話だ」
「なんだ? 勿体ぶらずに早く話せ」

 オーフィザン様に促されて、陛下は周りをキョロキョロしてから、オーフィザン様に向き直った。

「……例の、猫じゃらしの話だ」
「それか……あれなら、もう二度と作らない。俺の猫が嫌がるんだ」
「そう言うな! 一本くらい余ってないのか!?」
「ない。諦めろ」
「オーフィザン! 頼む!! 一本でいいんだ!!」
「しつこいぞ」

 にべもなく断っちゃうオーフィザン様だけど、陛下だって諦めない。

「オーフィザン! 頼む! 最近キュウテが全然相手をしてくれないんだ!」
「キュウテが?」
「ああ……何か怒っているみたいなんだが…………呼んでも全く振り向いてくれないし、夜になるとどこかへ行ってしまうし……」

 しゅんとなる陛下は、本当に困っているみたいだ。なんだか可哀想……キュウテは陛下のこと大好きだし、嫌いになったりしないと思うんだけどなぁ……

「あ、あの……陛下」

 恐る恐る声をかけたら、陛下は今にも泣き出しそうな顔で、僕に振り向いた。

「どうした? クラジュ……」
「え、えーっと……キュウテ、怒ったりしてないと思います。キュウテは陛下のこと大好きだし……えっと……」
「ありがとう。オーフィザンの猫は優しいな……」

 嬉しかったのか、僕の頭を撫でてくれる陛下。

 う、嬉しいけど、オーフィザン様、怖い顔してるし、もしかしてこういうのが原因でやきもち焼かれちゃったんじゃないかな?

「ひゃっ……!」

 いきなり耳に指を入れられて、体がびくってなっちゃう。びっくりして見上げたら、陛下は微笑んで言った。

「すまない。キュウテを触っているような気になってしまった」
「……え、えっと……僕より、キュウテに謝った方がいいです……なんとなく、そんな気がします。キュウテだって、本当は寂しいんだと思います!」
「クラジュ……ありがとう。いったん私は城に帰る。だが、諦める気はないぞ」

 陛下が、オーフィザン様に少し挑戦的な目で言うけど、オーフィザン様は僕を抱き寄せて、陛下を睨みつけた。

「これは俺の猫だ……触るな。あの猫じゃらしも、何度来ようが、ないものはない。あれがあると、俺がクラジュに嫌われる」
「お前はもうそれだけ懐かれているんだからいいだろう。こっちはキュウテに口もきいてもらえないんだぞ」
「知るか。それはお前がそんな調子でいるからだ。行くぞ。クラジュ」
「おい! 待てオーフィザン! クラジュにかまけて、さっき話したことを忘れるなよ!! あの猫じゃらしを欲しがる奴は、他にたくさんいるんだからな!」
「分かっている」

 素気なく言って、オーフィザン様は僕の手を握って、部屋を出ていった。
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