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番外編13.恩返しします!
140.役に立つもん!
しおりを挟む大きなあくびをして、ベッドの上で丸くなる。
今日の僕は、一人でお部屋にいる。外は雪が降っていて、城の中も静か。
お部屋はあったかいし、気持ち良くて最高のお昼寝時間のはずなのに、うまく寝付けない。
だって心配事があるんだ。
僕が大好きなオーフィザン様のこと。
最近、オーフィザン様が全然かまってくれない。
少し前までは収穫期で、一年で一番忙しい時期だから、それも仕方ないかなって思ってた。
オーフィザン様はお城にいないことも多かったし、珍しくお城にいる時でも、ひっきりなしにお客さんが来て、ずっと忙しそうだった。
だから僕は、ほとんど兄ちゃんやシーニュと一緒にいた。二人とも、僕が寂しがっているのを知って、二人だって忙しいのに、僕にも少し手伝えって言って、そばにいてくれたんだ。僕も頑張ったけど、セリューに怒られることの方が多かった。
そして収穫期が終わって、今は冬。毎日しんしんと降り積もる雪で、外は一面真っ白。雪の森を抜けてここまで来るお客さんもほとんどいなくなり、お城に出稼ぎに来ている人たちは、田舎の方に帰っていった。だから今は、一年で一番静かな冬の季節。オーフィザン様も暇なはず。
それなのに……
今日も僕のそばに、オーフィザン様はいない。僕はお部屋に一人……寂しい……
もちろん、夜になればオーフィザン様はお部屋に来てくれる。僕のことを抱っこして、いっぱい可愛がってくれる。だけど、それだけじゃ足りない。もっとずっとオーフィザン様と一緒にいたいし、離れたくない。オーフィザン様は違うのかな……
気持ちがしゅんってなると、頭の耳もペタン、てなっちゃう。
そしたらだんだん寂しさも増してきて、お布団に潜り込んでいたら、こんこんドアを叩いて、兄ちゃんが入ってきた。
「クラジュー。部屋を掃除するぞー。お前は動くなよー」
言うが早いか、兄ちゃんは早速、持ってきたモップで床をゴシゴシし始める。
「兄ちゃん、僕もする!」
「そうか? 最近お前も掃除をしてもモップを破壊しないようになったからなあ。兄ちゃんは嬉しいぞ」
「シーニュたちのおかげだよ! そういえば、シーニュは?」
「シーニュさんは昨日から一週間ほど、郷里の方に帰ると話したじゃないか。忘れたのか?」
「あ……そうだった…………」
シーニュは山奥にある町からここまで、出稼ぎに来ている。山を超えた向こうにあるシーニュのおうちには、兄弟がいっぱいいて、みんな一年に一回、この時期だけ帰ってくるシーニュのことを心待ちにしているらしい。
シーニュまでいないのかあ……ますます寂しい……
「クラジュ? どうしたんだ?」
「え?」
顔を上げると、兄ちゃんは掃除の手を止めて、僕の方を心配そうに見下ろしていた。
「元気がないじゃないか。何かあったのか?」
「兄ちゃん……」
気づいてくれてたんだ……やっぱり兄ちゃんは、いつも僕に優しい。
「えっと………………オーフィザン様って、今何してるか知ってる?」
「オーフィザン様? お部屋にいらっしゃったぞ。俺がお掃除しに入った時は、ダンドさんとセリューさんを呼んで、談笑されているようだった」
「ダンドと、セリュー……? 僕のことは呼んでくれないのに…………」
「どうしたんだ? クラジュ。そんなに浮かない顔をして。オーフィザン様が、どうかされたのか?」
「うん……えっとね、最近、オーフィザン様があんまり構ってくれないなあって思って……」
「オーフィザン様が?」
「うん……今は冬で、収穫期じゃないし、お客さんも少ないし、オーフィザン様、いつもより暇なはずなのに、僕のこと、全然呼んでくれないんだ。今だって、ダンドやセリューのことは呼ぶのに……僕に、二人みたいにオーフィザン様のお手伝いをすることはできないけど、お話相手くらいだったら、僕にもできるのに……」
しゅんってなりながら言うと、兄ちゃんは優しく、僕の頭を撫でてくれる。
「それで心配していたのか……? オーフィザン様が、お前をもう愛していないのではないかと……」
「……そこまでじゃないけど……でも……ちょっとくらい冷めちゃったのかなって思って……」
「クラジュ、そんな心配は無用だ。オーフィザン様は、心からお前を愛してくださっている。気にすることはないんだ」
「兄ちゃん……」
「お前は毎日、精一杯オーフィザン様にお仕えしているじゃないか。嫌われるようなことなんてしていない。恐れることはない。お前は、お前にできる事で、オーフィザン様にご奉仕すればいいんだ」
「兄ちゃん……」
「それでも心配なら、後で兄ちゃんと一緒に、オーフィザン様に会いに行こう。きっとそうすれば、不安な気持ちもなくなるはずだ」
「兄ちゃん……うん!! ありがとう!!」
やっぱり、兄ちゃんは優しい。なんだか、気持ちが軽くなったよ。
僕が頷くと、兄ちゃんも笑顔でうなずいてくれた。
僕はオーフィザン様が好き。オーフィザン様だって、いつも僕を愛してくださる。だから、心配することなんかないんだ!!
元気が出た。後で兄ちゃんとオーフィザン様に会いに行こう!
僕はホッとしたけど、一呼吸置いて、兄ちゃんの絶叫が部屋に響いた。
「嫌われることしかしてないじゃないかああああーーーーーーーっっ!!!!」
「え、ええ!? 兄ちゃん、どうしたの!?」
「クラジュ!! 今よく考えてみたんだが、お前、オーフィザン様に嫌われることしかしてないぞ!!」
「そ、そんなっ……! 僕そんなことしてないもん!!」
「毎日毎日、ドジで迷惑をかけているだろう!!」
「う……それは…………ま、毎日じゃないもん……」
「いいや。小さいものも合わせると毎日だ。クラジュ……まずいぞ…………」
「え、ええ!? な、なにが!?」
「何がじゃない!! よく考えてみろ! オーフィザン様には、俺たちは感謝してもしきれない恩がある!! あの方がいらっしゃらなければ、お前は迷子になった時に森で野垂れ死、俺たちの群れは人買いに捕まって奴隷として売られていたかもしれないんだ!! オーフィザン様は俺たちの群れ、みんなの恩人なんだぞ!」
「う、うん……それはわかってるよ?」
「だが!! 対してお前の方はどうだ!? 来る日も来る日も、ドジでオーフィザン様に迷惑をかけてばかり!! オーフィザン様の服を破るわ魔法の杖をおるわ魔法の道具は破壊するわ!!」
「う、うう……それは……」
「庭の薔薇をへし折り、芝生を暴走させたこともあっただろう! オーフィザン様がくださったものは破壊してばかり!! 厨房にしょっちゃう忍び込んではつまみ食い、作ってあった料理はひっくり返す、毎日執事であるダンドさんやセリューさんの邪魔をして、その上寝所に火を放ち、城を破壊しかけたことまで……な、なんでこれで嫌われないんだ…………?」
「兄ちゃん!! 真剣な顔して悩まないで!!」
「これを悩まないで何を悩むんだ!! だめだ……列挙するとあまりに悪すぎて自分の弟だということを忘れたくなりそうだ……」
「兄ちゃああああん……」
「あ、ああ、ごめんなクラジュ。そうじゃないんだ。思い出したら、ずいぶん……いや、相当ひどいと思ってしまったくらいなんだ。いや……あまりにも酷すぎる…………とっくにつまみ出されていてもなんら不思議ではない……あ、ああ……胃が……胃が痛い……」
「に、兄ちゃん!? 大丈夫!?」
「あ、ああ……お腹がずきずき痛いくらいだ……しかし……これはまずい。お前がオーフィザン様と結婚すると知り、群れの皆も喜んでくれただろう! 必ずオーフィザン様にご恩返しをするんだぞと言われて、俺も任せてくださいといって出てきたんだ! それなのに!! このままでは、ただ毎日、あの方を脅かしているだけになってしまう! クラジュ!! これではいけない!! このままじゃダメだ!! 絶対にダメだ!!」
「う、ううー…………それは分かるけど……」
「いいか! クラジュ!! 俺は今から、オーフィザン様のお部屋に向かう!! 日頃のご迷惑を帳消し……はさすがに無理だが、いくらか相殺できるほどに役に立たなくては……今は城にいる人も減っている! きっと、お役に立てることがあるはずだ!!」
「そ、そうか……に、兄ちゃん! 待って!!」
僕は出て行こうとした兄ちゃんを慌てて止める。
「どうした? クラジュ?」
「僕も行く!」
「クラジュ……なにを言ってるんだ? ダメに決まっているだろう。またドジを重ねる気か?」
「き、気をつけるよ!! だ、だから、僕も連れてって!!」
「クラジュ……だが……」
「だって、ドジで迷惑かけてるのは僕だし、僕だって、オーフィザン様のお役に立ちたいよ!!」
「……」
「に、兄ちゃん!! お願い!! 僕、気をつけるから!! 僕だって、オーフィザン様のお役にたい!! 一生懸命がんばるから!」
「クラジュ……」
じーっと見上げていたら、兄ちゃんはうなずいてくれた。
「そうだな……クラジュ……わかった!」
「あ、ありがとう! 兄ちゃん!!」
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