【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

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番外編7.最終決戦

120.どうしよう……

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 ランプでトンネルの中を照らしながら、しばらく行くと、奥の方に光が見えてきた。あれが出口だ!! やったあ!!

 だけど、後ろからざわざわと聞いたことがある音が近づいてくる。え、え……これって……

 恐る恐る振り返る。な、何か迫ってくる……わあああ! 芝!! あの芝だ!!

 さっきまで枯れていたのに、元気いっぱいになっちゃったらしい芝は、僕を追いかけた時みたいに、すごい勢いで育って迫ってくる。

 うわあああん!! なんでさっきは育たなかったのに、今こんなに育つの!? ま、また捕まっちゃう……に、逃げなきゃ!!

 根のトンネルの中を、僕は必死に走った。さっき芝の人がやった時に比べたら、育つスピードは遅い。これなら余裕で逃げられるっ!!

 必死に走ると、暗いトンネルの先に、明るい光が見えた。

 やった!! 出口だ!!

 光の見える出口に、僕は飛び込んだ。抜けた先は明るい太陽に照らされ、あたり一面、美しい花々が咲き誇る花園だ!! やったあ! 目的地に着いたっ!!

 さあ!! 花を摘むぞ!!

 だけど後ろからざわざわと不気味な音がする。え、えーっと……

 恐る恐る振り向く。そこには僕が通って来たトンネル。そして、その奥で激しく蠢く緑色の物体……わああ! 忘れてた!! 芝!! 芝が来る!!

 うわあああんっ!! どうしようーー!!

 オロオロしていたら、救いのようにも聞こえる羽音が近づいて来る。空から降りて来たのはペロケだ!!

「やっときたね……」
「うわあああん! ペロケ、助けて!!」
「は? え? わああああああ!!」

 彼もトンネルの奥から迫るものに気づいて悲鳴をあげる。

「なんでこんなことに!! 馬鹿猫ー!!」

 ペロケがそばにあった小屋の引き戸を外して、トンネルの出口に当てる。僕も一緒にトンネルを塞ぐ引き戸を抑えるけど、向こう側から、クマが体当たりして来たような強い衝撃がくる。芝が来たんだ。

 次々に引き戸の向こうから大量の芝が体当たりしているみたいで、ドンドンと怖くなるような大きな音が何度もなった。

 ペロケも僕も必死に引き戸を抑えているけど、これが破られるのも時間の問題!! どうしようーー!!

「馬鹿猫! なにあれ!? なにやったの馬鹿猫!!」
「わあああん!! やっぱり僕には苗を育てるなんて無理ーーっ!! どうしようーー!」
「真面目に押して!! 花園が芝生になっちゃう! なんでこうなるのっ!? お前本当、わざとやってるだろ、クソ猫っ!!」
「ふえええん……わあっ!!」

 ひときわ大きな衝撃がした。必死に二人で押すけど、もう限界!! このままじゃまたペロケの花を枯らしちゃう!!

 トンネルで増えた芝が、一層大きく引き戸に体当たりしてきた。その衝撃に耐えきれず、僕らは吹き飛ばされちゃう。塞ぐものがなくなったトンネルの出口から、一気に大量の芝が噴き出してきた。

 花が芝で埋まっちゃう!! あれでブーケを作るって、オーフィザン様と約束したのに!!

 僕は濁流みたいに噴き出して来た芝の前に飛び出した。
 なんとかして花園を守らなきゃ!! 倉庫から持って来たランプの火なら、少しくらい芝を焼けるかも!

 轟音の中、ペロケが僕の名前を叫ぶ声が聞こえた。

 僕は思いっきり振りかぶって、ランプを投げつけた。

 ぼんっと音がして、襲って来る芝が燃え上がる。
 さすがはオーフィザン様のランプ。噴き出した芝は一瞬で燃え尽き、その場で灰になって飛んでいく。

 花園の前で、それを見上げる僕らの方には、火の粉が飛んでくることも、熱風が来ることもない。トンネルからそれ以上芝が噴き出てくることもなかった。

 や、やった……芝の勢い、止まった!!

 少し離れたところでは、ペロケがへなへなと座り込んでいる。

 よ、よかったあ……

 安心したら、僕まで足に力が入らない。僕もその場にへたり込んじゃう。

 根のトンネルの向こうから、シーニュの怒鳴り声と走って来る足音がした。

「クラージュ!! お前、何してんだ!! なんでこんなの出来てるんだ!!」
「だ、だって……その……なんか伸びて……」
「芝が伸びてそれでなんでこうなるんだよ!! お前また触っちゃいけないものに触っただろ!!」

 シーニュに怒鳴られちゃうし、後ろから走って来たペロケには突き飛ばされちゃう。い、いたい……

 勢い余って倒れる僕を無視して、ペロケは花壇に駆け寄った。

「僕の花っ!! ………………………………よかった……みんな無事だ……」

 安心したのか、ペロケは涙を流している。よかったあ……花は全部無事なんだ……

 でも綺麗だった花園には、あちこち灰が飛んでいる。僕のせいだ……ちゃんと謝らなきゃ……

 恐る恐る僕はペロケに近づいた。

「あ、あの……ペロケさん……」
「クラジュ……お前……」

 うわああああ……すっごく怒ってる!!

 振り向いたペロケは、震え上がる僕にゆっくり近づいて来た。

「お前……またロクでもないことをして……」
「う、ううう……ご、ごめんなさい……えっと……えっと……」
「まあ、花を守ってくれたことには礼を言うけど」
「え?」

 聞き間違い……じゃないよね? うわあああ、ペロケにお礼言われたの、初めて!! すっごく嬉しい!!

「じゃあ、じゃあ……は、花摘んでもいいですか!!?」
「だめ」
「…………………………え……?」
「だめ。お前なんかに絶対つませない。馬鹿猫。だいたい、あの芝だって、どうせお前のせいなんでしょ?」
「……それは……」
「やっぱりお前のせいじゃん。お前のせいならお前が花を守るのは当然だろ。芝に飲まれて死んじゃえばよかったのに」
「ひっ……ひどい……ひどいっ!! ぺ、ペロケの意地悪! だめでも摘みます!! 僕はオーフィザン様のお嫁さんになるんだもん!!」

 もう何が何でも花を摘む!!

 花壇に駆け寄る僕に、止めようとしたペロケが飛びかかってきて、もみ合いになっちゃう。

「やめろ馬鹿猫!! 花に手を出さないで!!」
「ブーケにするだけですーーっ! オーフィザン様と結婚式あげるんだもんっ!!」
「そんなことさせるかーーっ!」

 うううー! ペロケ、しつこいっ!!
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