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番外編6.執事になる!
110.甘いお菓子をもらえた
しおりを挟むうーん……頭がフラフラする……まだ頭の中もぼんやりしてる……あ、あれ? なんだか美味しそうな匂いもする。甘くていい匂い……甘いお菓子だ!! 甘いお菓子がそばにあるんだ!!
跳ね起きると、僕が寝ていた布団のすぐそばに、かわいくて丸いお菓子が乗ったお皿が置いてあった。そのお皿の向こうに、セリューが寝ている布団がある。どうやら、セリューの隣に寝かされていたみたい。セリューが起きていたら、刺されそうなところだけど、まだセリューは気持ちよさそうに寝ている。顔色もここに着いた時よりずっといいみたい。薬が効いたのかな? よかった……
「起きたのか?」
見ていた方の反対側から声をかけられ、振り向くと、そこには着物に着替えたオーフィザン様。ふわああ! オーフィザン様、着物、よく似合う!! 少しゆったり目に着た着物の胸元が開いていて、そこから肌がのぞいている。なんだか色気があるなあ……
ううう……なんだか直視できないよう!!
顔をそらしてうつむくと、自分もオーフィザン様と似たような格好をしているのに気づいた。わ、可愛い! 猫の柄だ!
「お、オーフィザン様……これ……」
「浴衣というらしい。よく似合っているぞ」
え、え!? 本当!? オーフィザン様が褒めてくれた!!
嬉しくて尻尾がピンって立っちゃう。すると、浴衣の後ろもペロってめくれ上がっちゃった! わわわ!
慌てて押さえる。ううう、でも、これ、尻尾のところがめくれちゃう。笹桜さんは同じような格好をしていても尻尾でめくれたりしてなかったのに。
「お、オーフィザンさま……こ、これ……尻尾が……」
「尻尾がどうした?」
「……し、尻尾のところがめくれて…………」
「いい眺めじゃないか。そのままでいろ。仕置きだ」
「えええっ!?」
またオーフィザンさまが意地悪を始めちゃった……絶対エッチな魔法かけてるんだ……ううう……
真っ赤になって俯いちゃっていたら、オーフィザン様が僕の頭にぽんって手を置いてくれて、耳元で囁かれた。
「そんな顔をするな……ますます仕置きしたくなる……」
「う、ううう……」
そんな……じゃあ、僕、もっとひどいことされちゃうの? ううううう……
泣きそうになっちゃった僕は、オーフィザンに顎を上げられ、キスされちゃう。ふわあああ!!
久しぶりのキスで、体に力の入らない僕は、オーフィザン様にされるがまま、深くまで味わわれちゃう。
う、う、もう息ができなくて苦しいよ……口の端からもだらだらよだれが出ちゃう。淫らで強引なキスに酔わされてきた僕には、そんなことですら嬉しい。
苦しいのに、体は熱くてそれすら気持ちいい……
頭がクラクラしてぼーっとしてきたあたりで、オーフィザン様は僕をそっと離してくれた。
「仕置きは家に帰ってからだな」
「え? あ……」
いつの間にか、僕の浴衣からは、尻尾だけが出ている。これなら大丈夫だ。ってことは、お仕置きもなし? 嬉しい……けど、ちょっと寂しい……
僕の頭をいっぱいなでなでしてくれるオーフィザン様を見上げていたら、もっと触れて欲しくなっちゃうよ。
つい、じーっと、オーフィザン様を見上げちゃう。そうしていたら、オーフィザン様もそれに気づいたみたい。僕の頬にそっと手を置いてくれる。オーフィザン様の手の感触、すっごく愛おしい……もっといっぱい欲しい。
オーフィザン様も、欲しがる僕を見て、微笑んでくれる。
「して欲しいのか?」
「う、うう……」
「……誘うな……」
あ、またキスされる……ふわあああ! 嬉しいよう!!
だけど、唇同士が触れ合うより早く、部屋にダンドが入ってきちゃう。うわあああ! 恥ずかしい!!
急いでオーフィザン様から飛び退く。み、見られてないかな? ダンドは普通にしているし、見られてない……よね?
ダンドもオーフィザン様と同じように、着物を着ていた。ちょっと着崩した感じにするあたりが彼らしい。
「クラジュ、起きたんだ……気分はどう? 気持ち悪くない?」
「う、うん……」
「どうしたの? 顔が赤いよ?」
「あ、あ……な、なんでもないんだ……」
「そう? じゃあ、お菓子でも食べない? 笹桜さんが桜餅用意してくれたんだ」
「え? さ、桜餅?」
あ! これか!?
僕はすぐそばにあった丸いお菓子の乗ったお皿を手に取った。
嬉しくて、つい尻尾を振っちゃう。可愛いし、美味しそう!!
「いただきます!!」
早速お餅を手にとって一口パクンてくわえてみる。ふわあ。なんだかさっき庭で追いかけた桜の香りがする。すっごくおいしい!!
オーフィザン様が僕にお茶の入った木の湯呑みをわたしてくれた。
「うまいか?」
「はい! すっごく!! あ、お、オーフィザン様もどうぞ!!」
二つあったうち、一つをオーフィザン様に差し出すけど、オーフィザン様は受け取ったお餅を僕の口元に差し出す。
「俺はこうしている方がいい。さあ、食え」
え? え? い、いいのかな?
ちょっと悩んだけど、お菓子がすっごく美味しそうで、それをくわえちゃう。ふわあああ! 美味しいいいい……幸せ。もっともっと欲しくなっちゃう。甘いお菓子、オーフィザン様が食べさせてくれたらますます甘く感じちゃう。
そんなことをしていたら、部屋に笹桜さんが入ってきた。
「起きたか……クラジュ。よかった……菓子は気に入ったか?」
「はい! すっごく!!」
「それは良かった」
笹桜さんは座布団に座り、お茶を入れてくれる。トポトポって、気持ちのいい音がした。
「すまんなあ。こんな魔物だらけのところへ足を運ばせて」
「いや……あれを守れなかったのは俺の落ち度だ。お前が詫びることじゃない」
オーフィザン様が答えると、笹桜さんは少し笑った。
「変わらないな。お前も。城にお気に入りをはべらせていると聞いたぞ」
「可愛いものをそばに置いておきたいだけだ」
「はは…………そろそろだな……」
え?
笹桜さんが開けっ放しの障子の向こうの夜空を見上げる。暗い空には星は見えなくて、月だけがぼんやり光っていた。もう深夜だ。
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