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番外編6.執事になる!
104.お昼寝がすごく気持ちいい
しおりを挟むふああああ……眠ううう……
今日も僕は、キュウテとフィッイルと一緒に、お城で一番あったかい部屋で日向ぼっこ。大きな窓から入ってくるポカポカ太陽が気持ちいいお部屋には、大きなベッドがあって、ふっかふかのお布団がかけてある。その上で丸くなると、夢の中いるみたいに気持ちいい。
ずーっと使ってる大切な毛布にくるまって、気持ち良すぎて大きなあくびが出ちゃう。
僕のすぐそばでは、キュウテが陛下にいただいたふっわふわの毛布の上で丸くなって寝息を立てている。
彼からちょっと離れたところでは、フィッイルが寝ている。彼が頭から被っている毛布は、初めてロウアルさんに渡されたものらしい。ここへ持ってきた時は、かなり痛んでいたんだけど、シーニュが丁寧に洗濯して、破れたところは綺麗に縫って直してくれた。フィッイルはロウアルさんのことが苦手らしいけど、毛布はあれが一番お気に入りなんだって。
ベッドの真ん中には、僕らが大好きなクッキーがいっぱい入ったカゴが置いてある。いつもは、ご飯食べなくなるからダメって言って、たくさんは焼いてくれないダンドも、キュウテが遊びに来た時は、特別にいっぱい焼いてくれる。
あったかいベッドで日向ぼっこして、クッキー食べて……幸せええええ……
ずうっとこうしていたい。それなのに、バタンと乱暴にドアが開いた。
開けたのは僕の天敵、執事のセリューだ。
慌てて起き上がる。セリューの前では、怖くてお昼寝できないもん。
こんなに気持ちよくて、ポカポカあったかいお天気の日なのに、セリューは相変わらず眉間にしわを寄せて、ものすっごく不機嫌そう。
「出て行きなさい。ここには近々、客人が泊まることになります。昼寝がしたいのなら、庭にでも行きなさい」
えええー……もう春だけど、庭はまだ北風が吹いて寒いし、僕が庭へ行くとペロケが怒って飛んで来るのに。
外でお昼寝は嫌だけど、怖くてセリューにはやだって言えない。
だけど、そこまでセリューを怖がるのは僕だけで、フィッイルは鬱陶しそうにセリューを睨んで、布団をかぶって向こうを向いちゃうし、キュウテは起き上がって、頭の猫耳をしゅんって垂れさせながら、セリューに言った。
「セリューさん、外はまだ寒くて、お昼寝は無理です……ここを使うなら、僕らは別のお部屋へ行きたいです」
「……残念ですが、昼寝をするための部屋というものはありません」
「じゃあ、クラジュがいつも寝ている部屋へ行こう!」
元気に言うキュウテだけど、それは無理……
だって、僕が夜眠るのは、オーフィザン様の寝室なんだもん。あそこは僕とオーフィザン様と僕の世話をしてくれている兄ちゃんとシーニュだけしか入れちゃダメって言われているんだ。
「ごめん……キュウテ……オーフィザン様の部屋には、オーフィザン様が許可した人しか入れないんだ」
「そうかあ……クラジュはいいなあ。入れてもらえて」
「……え……」
ううう……ちょっと照れちゃう。照れちゃうけど、嬉しい。あそこは僕とオーフィザン様の部屋。僕の縄張り。いっつもオーフィザン様が僕を愛してくれるところなんだ。
すっごく嬉しくてニコニコしちゃう。そんな風にしていたら、セリューに、思いっきり睨みつけられた。怖あああ……
「とにかく、この部屋からは出て行っていただきます」
「じゃあ、セリューさんの部屋に入れてくださいっ!!」
うわあああ! キュウテ、なんてことを!!
僕が言ったら殴られそう……そんなことを笑顔で言うから、キュウテはすごい。
セリューも、キュウテにはあまり強く言わない。というかセリューは、僕に特に厳しくて、キュウテには甘いんだ。僕があんなこと言ったら、すぐに短剣を振り上げるくせに、キュウテが相手だと、今みたいに少し困った顔をするだけだもん。
「私の部屋は、仕事のための書類で散らかっていますので、ダメです」
「散らかっててもいいですっ!」
「……そういう問題ではありません……あの部屋に他人を入れるわけにはいかないのです」
「うう……」
シュンとなるキュウテは頭の耳が垂れている。尻尾まで垂れていて、ちょっと泣き出しそう。こういう時のキュウテは、ついなでなでして慰めたくなっちゃう。
僕が頭にそっと触れると、キュウテの猫耳がピンって震えた。
セリューだって、僕が同じようにしゅーんってなったって、冷たーく突き放すくせに、こうなったキュウテには弱い。ため息をついて、びっくりしちゃうくらい簡単に折れた。
「……分かりました。私の部屋には入れられませんが、南側の部屋をあなた方にお貸しします。そちらへ移ってください」
「わあい! ありがとうございます!! セリューさん!!」
ずるいなー。セリューはいっつもキュウテにだけ甘いんだ。僕が言ったら短剣持って追いかけて来るくせに。ずるいなー。
すっごく不満だけど、新しい部屋を用意してくれるならいいかあ……
「行こう! クラジュ! フィッイル!!」
嬉しそうなキュウテを見ていると、僕まで笑顔になっちゃう。
フィッイルはちょっと面倒臭そうにしているけど、やっぱりお昼寝はしたいみたいで、僕らは三人で、セリューの後について行った。
廊下に出ると、もう春なのにかなり寒い。
ううう……廊下は日が当たらないからかな……別の部屋に移るのも楽じゃない。
僕の隣を歩くフィッイルも、寒そうに腕をさすっている。彼は恨めしそうにセリューの背中を睨みつけて言った。
「ねえ、セリューさーん、なんでセリューさんって、キュウテにだけ甘いの?」
「……キュウテに甘いわけではありません。クソ猫以外には、平等に接しています」
「相変わらず嫌なやつー」
フィッイルは口を尖らせている。
クソ猫って、僕とフィッイルのことだよね……僕たち、クソ猫じゃないのに……
文句言いたいけど、セリューが怖くて言えない。
黙ってしばらく行くと、南側の奥の部屋の前に来た。セリューがそこの鍵を開けてくれる。
中には大きなベッドが一つだけ。この部屋、ずっと空き部屋で、ベッドなんて無かったはずなのに、ちゃんとシーツもかけてあって、布団もある。
「ここを使ってください。客人のために用意された部屋ですが、ここでは狭いので、しばらく誰も使いません」
「はーい! ありがとうございます!!」
キュウテがすっごく笑顔で答える。このお部屋ならいっぱいお昼寝できそう!!
「ありがとうございます! セリュー様!!」
キュウテの真似をしてお礼を言ってみたけど、セリューには睨まれちゃう。
ううう……なんで?
怖くてつい、キュウテの後ろに隠れちゃう。セリューは忙しいみたいで、すぐに部屋から出て行こうとする。
「では、私はこれで失礼します。部屋の中を荒らさないように」
「セリューさん、まだ仕事ですか? 一緒に日向ぼっこしませんか?」
たずねたキュウテに、セリューはかなりの呆れ顔で振り返る。
「……忙しいんです。昼間から寝ている時間はありません」
「じゃあ、また今度、一緒に日向ぼっこしましょう!!」
「………………」
セリューは、はいともいいえとも言わずに出て行っちゃった。
やっぱりセリューって、キュウテに弱い気がする。なんでなんだろう。どうやったら、セリューがあんなに優しくなるのかなあ……僕とキュウテ、何が違うの?
キュウテの方に振り返ると、彼は布団の上にぴょんって飛び乗っている。
「やったね。昼寝できるよー!」
ふわあああ! 布団、ふわふわで気持ちよさそう!!
僕もキュウテの隣に飛び乗った。
あああー……気持ちいい……
フィッイルも僕の隣に来て、ベッドの上に置いたクッキーをかじりはじめる。
「本当に嫌なやつだよねー。セリューって」
「そんなことないよ。お部屋、くれたじゃん」
キュウテに否定されても、フィッイルは、ふーんってそっぽを向いちゃう。
「部屋くらいでありがたくないでしょ。ね? クラジュ」
「え……? お、お部屋は嬉しいよ。セリューは怖いし、さっきの部屋の方がいいけど……」
「クラジュはどっちの味方ー?」
「み、味方? そんな難しいことは分からないけど、とにかくセリューが怖いから、キュウテみたいにセリューが怖くなくなる方法、知りたい……」
ずーっとキュウテにお願いしたかったことをお願いするけど、キュウテは首を傾げちゃう。
「僕は何もしてないよー?」
「ううう……でも、セリュー、僕にはすっごく怖いんだもん……」
「セリューさんは、クラジュのドジが嫌いなんじゃない?」
「うううううー……」
それは気づいていた。
僕もドジを直したいんだ。オーフィザン様のお嫁さんになるために、なんとかしようと頑張っているけど、ちっともうまくいかない。このドジのせいで、オーフィザン様にひどい迷惑がかかるからって、お城のほとんどの人が、僕らの結婚は認めないって言ってる。ペロケなんかは毎日、包丁を研いでいるって聞いた。
なんとかならないかなあ。寝ながら考えよう……
僕もフィッイルが寝ているそばで丸くなる。
ポカポカふかふか……ああ、気持ちいい……
僕がそばに来たからか、フィッイルはちょっと鬱陶しそうに向こうを向いちゃう。素っ気ないし、たまにきついことも言うフィッイルだけど、僕が困っていると助けてくれるから、僕はフィッイルが好き。
キュウテもそばで丸くなり、また三人でお昼寝。最近は三人でこうして丸くなることが増えて、僕は本当に幸せ。
しばらくうとうとしていると、部屋のドアがいきなり開く。今度はオーフィザン様だ! 後ろに、キュウテをいつも連れて来てくれる二人の従者たちもいる。
「キュウテ、迎えが来たぞ」
オーフィザン様が後ろの二人を指す。二人は前に出て、キュウテに恭しく頭を下げた。
「キュウテ様……お迎えにあがりました」
えええ……キュウテ、もう帰らなきゃいけないんだ……
療養に来ているフィッイルと違って、キュウテはここに遊びに来ているだけだから、こうしてお迎えが来たら帰らなきゃならない。それは仕方ないんだけど、寂しいよ……
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