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番外編5.花嫁修業してドジを直します!
100.お客さんのために頑張る!
しおりを挟む僕らは客間についたけど、オーフィザン様がいない……どうしたんだろう?
「しばらく待っていてください。クラジュ、決して周りにあるものに勝手に触れないように」
セリューは、僕に念を押して部屋を出て行く。
三人だけになって、僕らはみんなでソファに座った。僕が真ん中でフィッイルが僕の左隣、キュウテが反対側。早くオーフィザン様、戻ってこないかなあ。寂しいよ。
ドアが早く開かないかなって思いながらそっちを見ていると、隣のフィッイルが僕のことをツンツンってつついた。
「ねえねえ、クラジュ」
「なに?」
「オーフィザンのこと、もっと教えてあげようか? お前まだ、オーフィザンについて知らないこと、多いだろ?」
「フィッイルは知ってるの?」
「もちろん。僕、魔法使いなんだよ」
「え?」
フィッイルも? オーフィザン様と同じことができるの?
彼はソファから起き上がる。キュウテも興味深そうに言ってきた。
「えー、なんの話ー?」
「フィッイル、魔法使いなんだって!!」
「え? ま、魔法が使えるの? すごーい!! ねえ! やって見せてよ!!」
「仕方ないなあ……」
そんなことを言いながらも、フィッイルはちょっと嬉しそう。
彼が一度手を握り、それをゆっくり開くと、てのひらから光が溢れてくる。だけどそれはすぐに消えてしまう。他には何も起こらない。
「フィッイル……? 何にも起こらないよ……?」
僕が聞くと、フィッイルは決まり悪そうに顔をそらす。
「僕……あんまりうまく魔法が使えないんだ……」
「……え?」
「……昔、オーフィザンに襲われたことがあって、その時魔力を使いすぎて……それからずっと……」
「お、襲われた!?」
「うん……あいつ、ひどいんだ……」
……そんな……オーフィザン様、なんでそんなことしたの? フィッイル、すごく悲しそう。このままじゃかわいそう!!
「だ、大丈夫だよ! フィッイル! 僕がフィッイルに魔法が使えるようにしてあげる!!」
「え? ちょ……クラジュ!? どこ行くの!?」
僕は部屋を飛び出した。オーフィザン様の寝所には、オーフィザン様の杖がある! オーフィザン様は、いつもはあれを使わないけど、広範囲の魔法を使う時は、これがあれば集中できるって言ってた。それなら、フィッイルも、あれがあればうまく魔法がつかえるかも!!
寝所の鍵はオーフィザン様に渡されている。そこの鍵を開けて中に入るけど、いつもある場所に杖がない。
なんでだろう……朝はあったのに!
どうしよう……何か、代わりの杖があればいいのに。あ、そうだ! 確か、だいぶ前に魔法の道具の研究室から持ち出したものを、隠したことがあるんだ! あれも杖っぽかった。おととい持ち出したものは全部回収されちゃったけど、あれなら別の部屋のベッドの下に隠していたから、きっとまだある!
急いでその部屋に行くと、確かにベッドの下にあった! いつもオーフィザン様が使うものとは少し違う気がしたけど、これでもなんとかなるはず!
僕は杖を持ってフィッイルたちがいる部屋に戻るけど、せっかく魔法が使えるかもしれないのに、フィッイルは受け取ってくれない。
「やめとく。その犬が僕を見張ってるから」
彼は、彼の後ろにぴったりくっついている犬さんを指差す。
「でも、これがあるとうまく魔法を使えるんだよ! 僕、オーフィザン様が使うの見たことがある! 見ててね!」
えーと、どうやって使うんだっけ?
オーフィザン様がこれを使ってた時を思い出してみるけど、なかなか思い出せない。やり方を教えてあげたら、フィッイルもやる気になってくれるはず!
必死に振り回していると、フィッイルに後ろから肩をポンって叩かれた。
「クラジュ、もういいから。何か起こったら僕がオーフィザンに責められる。それに、それ本当にオーフィザンの杖?」
「あ、諦めちゃダメだよ!」
彼に振り返ると、杖の先がテーブルに置いてあったものに当たっちゃった。
ぶつかったものは小さな竜の置物で、それは床に落ちて割れてしまう。
わわわ! どうしよう! また壊しちゃった!!
焦って破片を片付けようとしたけど、近づくと壊れた置物は急に光りだした。え……なに?
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