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番外編5.花嫁修業してドジを直します!
96.初対面の人が来た!
しおりを挟む客間に連れてこられた僕は、オーフィザン様の隣に座らされた。
ちょっと緊張する……王様に会うのは久しぶりだ。それに、王様と一緒に知らない人が三人いる。初対面の人に会うの、すごくドキドキする。
ソファに座る王様の隣にいるのは、可愛い猫耳と猫の尻尾がある男の人。普段は山に住んでいる化け猫さんで、名前はキュウテ。ふわふわした金色のショートカットの髪と、大きな丸い目の華奢で小柄な人で、王様は彼がお気に入りみたい。頭を撫でたり、耳に触れたりしてる。だけどキュウテさんはちょっと不機嫌に見える。どうしたのかな……?
もう一人はソファには座らず、窓辺に立って空を見ている。人の姿をしているけど正体は銀竜で、ロウアルって言う名前らしい。金色の目が、灰色の長めの髪の間からチラチラ見えている眼光鋭い男の人。オーフィザン様とは昔からの知り合いらしい。
彼の隣で、床に座っているのは僕と同じ狐妖狼のフィッイルさん。頭に狼の耳と、お尻に狐の尻尾がある。顔が隠れちゃいそうな長さの茶色い髪と目をした小柄な人。彼もオーフィザン様とは知り合いらしい。だけど、ずっとこっちを睨んでいる。オーフィザン様とは仲が悪いのかな……?
セリューがお茶とお菓子を運んできてくれても、今にもひび割れそうなこの空気は変わらない。
な、なんでこんなにギスギスしてるの?
オーフィザン様は、頬杖をついてそっぽを向いてるし、ロウアルさんとフィッイルさんは席に着く気配すらない。
ご機嫌なのはいつも優しい王様だけ。ティーカップを傾けお菓子をつまみながら、隣のキュウテさんの頭を撫でている。
「どうした? オーフィザン。ずいぶん機嫌が悪いな」
「何の用だ……?」
「そう邪険に扱うな。こいつが気にいる菓子を作って欲しい」
こいつって、キュウテさん? そのためにわざわざここまで来たの? すごくキュウテさんのこと、大事にしてるんだ……
なんだか羨ましくなっちゃう。僕もオーフィザン様に頭撫でて欲しいなあ……
だけど、僕の隣に座るオーフィザン様は、すごく機嫌が悪いみたい。王様を睨みつけながら言った。
「そんなくだらないことのために来るな……菓子なら、お前の城のシェフに頼め」
「ここには狐のシェフがいるじゃないか」
「あれは俺のものだ。貴様なんぞに貸すか」
「シェフを貸せとは言っていない。クッキーだけでいい」
「あれが作るものも俺のものだ。貴様にはやらん」
ますます機嫌が悪くなるオーフィザン様。
「もうお前は帰れ……」
だ、大丈夫かな?
窓際のロウアルさんたち、間に入ってくれないかなあ……
彼の隣のフィッイルさんは、ずっと震えてる。寒いのかな? 顔色も悪いし、大丈夫かな?
ロウアルさんも、フィッイルさんの様子に気づいたらしく、心配そうに聞いた。
「フィッイル? どうした?」
「寒い…………」
「寒いのか? それならほら、来いよ! 抱っこしてやる!!」
「……嫌……」
あの二人、あんまり仲良くないのかな……? フィッイルさんは顔をそむけちゃう。
だけど、ロウアルさんは本当にフィッイルさんのことを心配してるみたい。オーフィザン様の方を向いて、怒鳴るように言う。
「オーフィザン、お前魔法使いだろ! 城、あったかくしろ!」
「十分だ。そんな奴のわがままに付き合えるか」
……どうしたんだろう……オーフィザン様、フィッイルさんにちょっと冷たい。あのままじゃ、フィッイルさんが風邪を引いちゃう。それに、ずっと寒いのは可哀想だ。
「あ、あの……よかったら、日向ぼっこしに行きませんか?」
恐々、フィッイルさんに聞くと、彼は初めてこっちに振り向いてくれた。
「は? 日向ぼっこ?」
「はい! この時間はここから少し離れたところにある部屋が、すごくポカポカで気持ちいいんです! あそこへ行けば寒くないですよ!!」
「……」
あ、あれ? 嫌なのかな? 日向ぼっこ、すごく気持ちいいのに。
ロウアルさんは、フィッイルさんを気遣うようにすごく優しく聞いた。
「どうする? フィッイル」
「……僕、そこ行きたい」
よかった! やっぱりフィッイルさんも日向ぼっこしたいんだ!! これで、フィッイルさんも寒くないし、お客さんの相手ができたらオーフィザン様も喜んでくれるはず!!
ロウアルさんも頷いてくれる。
「わかった! お前、案内してやれ!」
だけど、オーフィザン様は苦い顔。立ち上がろうとした僕の手を取り、僕をソファに座らせる。
「勝手に決めるな。そんなやつとクラジュを二人にさせられるか」
睨まれて、フィッイルさんは体を縮こませている。
「……僕、もう何もしません……」
「おい、オーフィザン! こいつが悪さなんかするはずないだろ!」
あ、あれ? どうしよう……ロウアルさんまで怒り出しちゃう。
なんで僕とフィッイルさんを二人にできないの? もしかして、僕がまたドジをして、お客さんに失礼なことをするって思われてるのかな?
「あ、あの……オーフィザン様……僕もうドジしません……」
「そう言う問題じゃない。お前は黙っていろ」
やっぱり信用されてない……僕もオーフィザン様のお役に立ちたいのに!!
なんとか説得できないか考えていると、王様が助け舟を出してくれた。
「クラジュの言う通りだ。そっちの狐が震えているのに、かわいそうじゃないか」
今度は、陛下の隣のキュウテさんが手をあげる。
「あの、二人で心配なら、僕も行きます。僕も寒いので」
「ありがとうございます! それなら大丈夫ですよ! オーフィザン様!!」
僕は嬉しくてオーフィザン様に言うけど、オーフィザン様はやっぱり苦い顔。なんで? ……僕、オーフィザン様の役に立てないのかな……
「お、お願いします……オーフィザン様。僕、オーフィザン様のお役に立ちたいんです……」
「………………」
オーフィザン様を見上げながら、一生懸命お願いすると、オーフィザン様はしばらく考えて、フィッイルさんに向き直った。
「この城でおかしな真似をするなよ」
「しません……」
呟くフィッイルさんをオーフィザン様はしばらく見ていた。そんなに心配しなくてもいいのになあ……
それからオーフィザン様は僕に振り向いた。
「これをやる」
オーフィザン様がてのひらを開くと、その上には小さな犬さんが座っている。ガラスみたいに透き通ってて、すごく可愛い。
「俺の使い魔だ」
「ありがとうございます!」
「……何かあったらすぐに俺を呼べ……」
「はい!!」
「……部屋から出るなよ……」
やったあ。頑張るぞ!!
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