【本編完結】ネコの慰み者が恋に悩んで昼寝する話

迷路を跳ぶ狐

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番外編3.ずっとここにいたい

82.また破れちゃった

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 うわあああ! どうしよう! ペロケを本気で怒らせちゃった!!

 僕はお城の中を、とにかく思いつく方向に逃げて、廊下の向こうで誰かと話しているシーニュを見つけた。

「シーニュっ!!」

 全力疾走の勢いそのままで、僕はシーニュに背後から飛びつく。勢いがよすぎたのか、彼は前の方によろめいてしまった。

「うおっ!! く、クラジュ?」
「シーニュっ!! 助けて!! ペロケが追ってくる!!」
「落ち着け……離れろ……」

 抱きついたままの僕を、シーニュは押し戻す。ちょっと苦しそう。飛びついてぎゅーって抱きつきすぎたからかな……

 シーニュと一緒にいた人も、心配そうに言った。

「し、シーニュさん……大丈夫ですか?」
「ああ……あ、仕事の内容はさっき言った通りだから、先に行っててくれるか?」
「え? は、はい……分かりました……」

 その人は、シーニュに頭を下げて、廊下の向こうに走っていく。見たことのない人だ。

「シーニュ……あの人は誰?」
「新しく入った雑用係。今、仕事を教えていたところだ。つーかお前、その格好なんだよ。服、破れてるぞ」
「え!? わあ!」

 ほ、本当だ!! スカート、破れてる!! さっきカゴから落ちた時だ!!

「ど、どうしよう……シーニュ……」
「部屋に帰って着替えるしかないだろ……」
「……でも……部屋に帰ろうとして、ペロケに見つかったら怖い……」

 僕は恐る恐る走ってきた方に振り返ってみる。だけど、そこにペロケはいなくて、彼の羽の音も聞こえない。よかった……ふりきれたみたい。

 ホッとする僕に、シーニュは疲れたように言った。

「お前、またペロケを怒らせたのか?」
「う……だ、だって……」
「どうせまたあいつが育てた花、踏みつけたんだろ?」
「……ふ、踏んだんじゃないよ。その……お、お尻にひいちゃっただけ……」
「……尻でも足でも大して変わらねーよ。相変わらずひどいな……ペロケがかわいそうだろ。もう少し気をつけろ」
「……はい……」

 ううう……シーニュにまで言われると、落ち込む……
 頭の耳までぺたんとなっちゃう。だけど、倒れた耳にシーニュのあったかい手が触れた。

 彼は、僕の頭を撫でてくれた。

「今度から気をつけろよ。ペロケには俺からも謝ってやるから」
「シーニュううう……」
「ほら、行くぞ………………お前、その格好で城の中、走ってきたのか?」
「え? う、うん……」
「……なあ、オーフィザン様に普通の服、渡されてないのか?」
「……わ、渡してもらったんだけど……寝る時用の服は、寒い日に毛布と一緒にくるまって寝てたら、寝ぼけて爪を立てちゃって破れて、お城の中を歩く時用の服は、初めてもらった時に嬉しくてずっと着ていたんだけど、その格好のままお城の屋根に登ったら汚しちゃって……」
「……汚した方は洗えばいいだろ……」
「焦って洗ったら破れた……」
「もうお前は服着るな」
「シーニュ……そんなこと言わないで……」
「言われても仕方ないだろ! オーフィザン様からいただいたものくらい大切に扱え!!」
「だって……」
「で、それ、オーフィザン様に話したのか?」
「……話してない……ベッドの下に隠した……」
「やっぱりな。それ、いつだよ?」
「……一週間くらい前……」
「バレてるぞ」
「え!?」
「一週間も前にやったなら、オーフィザン様、もう知ってるはずだ。さっさと打ち明けて謝れ」
「……で、でも……オーフィザン様、何も言わないよ?」
「それはあえて言わないだけだ。早く自首しろ」
「……でも、でも……怖い……言ったらお仕置きされる……」
「このまま言わないと、お仕置きが増えるぞ。怖い目にあいたくないなら、早く破いた服をオーフィザン様に見せて謝れ。お前だって、オーフィザン様からいただいたものをそんな風にして、心が痛まないわけじゃないだろ?」
「……ううう……わ、分かった……」

 シーニュは、もう一回僕の頭を撫でてくれる。

「頑張れよ。まあ、そんなに怯えるな。オーフィザン様はそんなにひどいお仕置きはしないから」
「……うん……」

 シーニュはそう言うけど、オーフィザン様のお仕置き、けっこうつらいんだけどなあ……

 オーフィザン様は怒らせるとすごく怖いんだ。悪いことをする僕が悪いんだけど、お仕置きは嫌だ。

 だけど、言いたくないけど、ちゃんと謝らないとダメだよね……ペロケにも花のこと、謝らなきゃ。

 シーニュは、僕の手を引いてくれる。

「じゃあ、先にペロケに話をしに行くか。行くぞ」
「うん……」

 僕らが二人で歩き出そうとすると、後ろから、さっきの新人さんが走って来た。

「シーニュさん! す、すみません!! ちょっと来てもらえませんか!? 倉庫の鍵が開かなくて……」
「え? 開かないか? ああ……あそこの鍵は魔法の鍵なんだ。初めてのお前には、開け方分からないか……困ったな……」

 シーニュが頭をかく。シーニュだって忙しいんだ。僕が邪魔しちゃダメだ。

「シーニュ、僕、一人で大丈夫だよ」
「そうか? 悪いな……先にオーフィザン様のところに行け。ペロケの方は、お前が一人で行っても、また何かやってますます怒らせるだろ?」
「う、うん……分かった……」
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