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43.離れたくない
しおりを挟むう、う……なんだか温かい……どうしたんだろう……僕……
僕は、目をこすりながら起き上がった。
あれ……僕、なんで寝てたの? オーフィザン様が起きるまで、廊下で待っていたはずなのに。
もしかして、途中で寝ちゃった!? え、ここ、どこ? 廊下じゃない……だって、僕がいるの、ベッドの上だ。
キョロキョロして、あたりを見渡す。
ここ、オーフィザン様の部屋だ。僕、オーフィザン様のベッドで寝てたんだ。
ふかふかの布団……気持ちいい……
よほどぐっすり寝ていたのか、窓の外はもう夜空。丸い月が上っている。月の光のおかげで、明かりがなくても部屋の様子が分かった。
部屋には誰もいない。ベッドの上の僕だけ。
オーフィザン様……いないな……どこに行っちゃったんだろう。この部屋で休んでいたはずなのに……
あ! ぺ、ペロケの花束がない! ダンドのクッキーも! ど、どうしよう……大事なものなのに!! きっとまだ廊下だ!! 探しに行かなくちゃ!
僕は、ベッドから飛び降りた。
「どこへ行く?」
突然聞こえた声に驚いて振り向く。
さっきまで閉まっていた窓が開いていて、そこに、羽を広げたオーフィザン様が座っていた。
外から飛んで来たのかな……寝てなくて大丈夫なの!?
「お、オーフィザン様っ……! 体は、もういいんですか?」
「ああ。お前はどこへ行くつもりだ?」
「え……あ、あの、花とクッキーを探しに……」
「ペロケとダンドから預かったものか? それなら、そこにある」
オーフィザン様が指した棚の上には、花瓶に生けられたペロケの花と、そのそばにクッキーの包みが置いてあった。
「よ、よかった……み、見つけてくれたんですか?」
「セリューから受け取った」
「せ、セリュー様から!? セリュー様が渡してくれたんですか!?」
「ああ」
「……」
「あいつは誰にでも厳しい男だが、曲がった人間ではない。ちゃんと受け取った」
「……はい……よ、よかったです……」
セリュー、僕のことを窓から捨てるくらい怒っていたのに、ちゃんと渡してくれたんだ……よかったあ……
ホッとする僕に、オーフィザン様は近づいてきて、ミルクが入ったグラスを渡してくれた。
「飲め」
「え? あ、ありがとうございます……で、でも、オーフィザン様の分は……? ち、ちゃんと休んでなきゃダメです!」
「もう十分休んだ」
「ほ、本当ですか……?」
僕が聞くと、オーフィザン様は微笑んで「本当だ」って答えてくれる。
部屋は暗いけど、月明かりが、その人の顔を照らしてくれる。
僕よりずっと背が高くて、ちょっとだけ意地悪そうに僕を見下ろすところ……いつものオーフィザン様だ。
オーフィザン様、元気になったんだ……よかった……
ホッとして、ミルクが入ったグラスに口をつける。
わ、冷たい。美味しい……僕が好きなミルクだ。
「あ、ありがとうございます……」
「シーニュから、お前はそれが好きだと聞いた」
「シーニュから?」
「いい友人だな。明日から忙しくなるというのに、お前のことも忘れない。ずいぶん心配していたぞ」
「……シーニュは、僕がここにきた時から、ずっと……仲良くしてくれたんです。し、シーニュ、忙しいんですか?」
「ああ。あいつには、明日から使用人たちの指導をしてもらう」
「……え? ら、ランキュ様は?」
「田舎へ帰った」
「……え……」
そうなんだ……もう蹴られないで済むんだ……よかった……これで安心してお城の中を歩き回れる!
オーフィザン様は、テーブルでワインを注いでいる。そのテーブルには、僕が直した香炉が置いてあった。
あの香炉……ちゃんと置いておいてくれたんだ……嬉しい……
ちょっとニヤニヤしながらミルクを飲む僕に、オーフィザン様が聞いてくる。
「うまいか?」
「え? は、はい!」
「そうか……」
そう言って、ワインのグラスをあおるオーフィザン様は、元気そうに見える。
だけど……
「お、オーフィザン様……」
「なんだ?」
「あ、あの……あの……ぼ、僕……申し訳ございません……でした……僕のせいで、魔力、いっぱい使っちゃったんですよね? ずっと……寝てなきゃいけなくなっちゃったんですよね……?」
「お前のせいじゃない」
オーフィザン様が、ゆっくり僕に近づいてくる。
え? え? ま、まさか、またお仕置き?
怖くて、僕はうつむいて目を瞑った。
怖い……けど、オーフィザン様がお仕置きって言うなら。お仕置きされる!
震えながら、オーフィザン様を待つ。
ドキドキしていたら、僕の背中に温かい手が触れて、僕は強く抱き寄せられた。
「え……お、オーフィっ……!」
彼の名前を呼ぼうとしたけど、顎を上げられて、一瞬、オーフィザン様と目があった。暗い中で、その鋭い目に捕まって、僕は声も出ない。何か言おうとしていたはずの唇に、オーフィザン様の唇が触れる。
この前地下でキスした時は、舌を入れられて、苦しいくらいだった。
それなのに、今度は一瞬、唇を合わせただけ。
唇を離したオーフィザン様と、また目があう。
それだけで、僕の体温が一気に上がって、すぐに顔をそむけた。
き、キスしてすぐに、オーフィザン様の顔なんて、見れないよ……
キスなら、もう何度かされちゃってるのに、すごくドキドキする。オーフィザン様がくれたキスの感触、まだ消えてない。柔らかくて、微かに濡れてて。思い出しただけで、身体は熱を増して鼓動が早くなっていく。
俯いたままでいると、僕の体が、風に包まれた。
な、なにこれ……なんだかくすぐったい。目を瞑っていると、風はおさまり、僕は以前、オーフィザン様に渡された服を着ていた。背中が大きく開いたワンピースで、今度はちゃんと、下着をつけている。
それなのに、なんだかすごく恥ずかしい。
オーフィザン様が、僕を見下ろしているからだ。
「それを着て、ぺットらしく可愛がられろ」
「……」
オーフィザン様、意地悪ばっかり言う……僕、ペットじゃないもん。
だけど、オーフィザン様には、そう見えているのかな?? 背中も開いてて、ちょっと露出した格好だけど、オーフィザン様には満足してもらえてないのかな。
拗ねる僕に、オーフィザン様はベッドを指して言った。
「……ベッドにあがれ。魔法を解いてやる」
「え? あ……で、でも、魔力が戻ったばかりなのに…………」
「もう回復した。早くしろ」
「でも……」
魔法……解いちゃうんだ……それはそうか。だって、オーフィザン様は、僕にかかった魔法を確かめるために、僕を性奴隷にしたんだ。
じゃあ……ま、まさか、魔法を解いたら、本当に……もう用済み!?
「……クラジュ? どうした?」
「……」
もし、このまま魔法を解かれてしまったら、もうオーフィザン様とも、この城とも、お別れになっちゃうかもしれない……
そんなの嫌だ!
もっとここにいたい。シーニュやダンドたちと、一緒にいたい。
オーフィザン様と、離れたくない。
……じゃあ、魔法さえ解かれなければ、ずっとここにいられるかな?
そうだ!! 魔法解いちゃだめって言えばいいんだ!!
「お、オーフィザン様……」
「……なんだ?」
「……あ、あの……あ、後にしませんか!?」
「……あと?」
「は、はい……そ、そんなにす、すぐに魔法を解かなくても、後で解けばいいんです! あ、明日にしませんか……?」
「早く解いたほうがいいだろう。次で最後だ」
「さ、最後!? え、え……ま、ますますダメ……お、お願いします! 解かないでください!」
「なぜだ?」
「え、そ、それは……だって……だって……だ、ダメなんです……だ、ダメです! い、いけません!!」
僕は、オーフィザン様に背を向けて、逃げ出した。
そのまま急いでドアに飛びつくけど開かない。ま、まさか、また魔法?
どうしよう……これじゃ逃げられないし、すぐに捕まる!!
振り向くと、オーフィザン様はベッドに横たわりながら、こっちを見ていた。
「逃げられると思っているのか? お前はまだ俺の性奴隷だろう」
「そ、そうですけど……でも、でも……」
「早く来い」
「い、い、い……嫌です! あ……後で……もう少しだけ後がよくて……ひゃ!」
口答えを続ける僕の首に、首輪が現れた。
うううー……また首輪つけられた。
その首輪につながる鎖を、ベッドに横たわったままのオーフィザン様がぐいぐい引く。どうしてもオーフィザン様のそばに行きたくなくて、僕は必死に抵抗した。
このままじゃ、魔法とかれちゃう!
「は、離して……ください……魔法……解いたらダメなんです……」
「しつこいぞ。なぜそんなに嫌がるんだ?」
「……え……えっと……だって、い、痛いし…………」
「……今日は痛くないようにしてやる。逃げた仕置きだ」
「やだっ!!」
オーフィザン様が鎖を引く。今度は魔法を使ってるんだ。僕の体が浮いて、そのままベッドまで引き寄せられてしまう。
ふかふかのベッドの上に、乱暴に落とされた。
ひどい……僕の気も知らないで!!
鎖を首輪から外そうと、力の限り引っ張るけど、全然外れない。
もがく僕の鎖を、オーフィザン様が引いて、僕はオーフィザン様に引き寄せられた。
「いやっ……!! オーフィザン様!!」
抵抗するけど、オーフィザン様には敵わない。
ぐいぐい鎖をひかれて、怯える僕を見て、オーフィザン様はにやにや笑っている。
オーフィザン様に僕の気持ちなんか分からないんだーー!!
「は、離して……オーフィザン様!」
すぐに抵抗しようとしたけど、体が動かない! また魔法!? しかも、動けなくするだけじゃなくて、着せてもらったばかりの服に、手をかけられた。
抵抗できなくしてから服脱がすなんてひどい!
「や、やだ……嫌……」
ベッドの上に座り込んだ僕を、オーフィザン様は楽しげに見下ろして、僕の服のボタンを外していく。
嫌だ……また裸の姿、見られちゃう。
だけど、体は硬直したみたいに動かない。手も足も、指を一つ動かすことすらできなくて、僕はオーフィザン様から顔をそらして震えていた。
ついに最後のボタンを、オーフィザン様が外してしまう。僕の胸に、オーフィザン様はそっと触れて、静かにきいた。
「嫌なら話せ。なぜ魔法を解いたらダメなんだ?」
「それは……あ!」
オーフィザン様が僕の乳首に触れる。指先でツンと触れられただけど、体がピクンピクンと反応してしまう。
乳首に触れられただけで、そこから、腰がむずむずするような快感が生まれる。
オーフィザン様が、僕に触れてくれてる。この手から離れたくないよ……
ぽろっと、僕の目から涙が落ちた。一度出ると止まらなくなる。ぐすぐす泣き出した僕を見て、オーフィザン様は手を止めてくれた。
「……俺に触れられるのが嫌なのか?」
「……ち、違います……ぼ、僕……僕……僕……ず、ずっと……ずっと、ここにいたいんです……」
「……ここに?」
「い、いたいんです! ま、魔法解いたからって、ぼ、僕を捨てるなんて……」
「何を言っているんだ? ここを去ることは許さないと言っただろう?」
「え……?」
乳首に、濡れたものが押し当てられる。
オーフィザン様が、今度は唇で、僕の乳首に触れてきたんだ。
じっくり、時間をかけて、それを舐め上げられる。
熱い舌が、僕の弱いところをゆっくり刺激する。少し触れられただけなのに、先はもう硬くなってしまった。
「ひぅ……ひっ……ひゃんっ……や、やめ……やめて……」
「……いたければいればいい」
「え!? で、でも……でも、でも……僕、い、いっぱい迷惑かけたのに……ひゃああ!!」
乳首の先に、オーフィザン様が吸い付いてくる。舌で敏感になったところをジュルジュル音を立てて嬲られて、僕は何度も逃げようとした。
だけど、オーフィザン様が僕の細い腰を捕まえているから、逃げようがない。
オーフィザン様がくれる快感って気持ちいいけど怖い……頭の中、全部溶けて、オーフィザン様のことしか考えられなくなっちゃう……
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