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5.部屋、ぐちゃぐちゃ……
しおりを挟む目を覚ますと、僕はふわふわの布団の中にいた。すごい……雲の中にいるんじゃないかってくらい、ふわふわだ。
うーん……よく寝た……多分いっぱい寝たんだろうけど、布団から出たくない。もう少しくらい、いいか……
もぞもぞ布団の中に頭から潜り込む。
ああ、ふかふかだー。あ、あれ? 布団の中で何かにぶつかった。なんだこれ? なんか温かい……それに気持ちいい……
くっついて頬を擦り付けると、触り心地が良すぎて、また眠くなってきた。
これ、なんだ? あ、あれ? 今、手に当たったの、人の肌?
え、え、これ……これ……っっ!!
慌てて布団から出る。うわああああ! 僕がスリスリしてたの、オーフィザン様じゃないか!
部屋も、オーフィザン様の部屋だ。じゃあ、このベッド、オーフィザン様のベッド?
どうりでふわふわのはずだー……って、布団にスリスリしてる場合じゃない! 僕、裸じゃないか!
ふ、服……どこ?
あ、あれ? 部屋を見渡しても、僕の服がどこにもない!
あ、そうだ。服は、昨日脱衣所で脱いでそのままなんだ!
代わりに、布団の上にバスローブがあるのを見つけた。これ、借りよう……
裸じゃなくなったら、ちょっと落ち着いた。このバスローブ、すごく大きいなあ。多分オーフィザン様のだ。
もう朝だ。僕、朝までオーフィザン様のベッドで寝ちゃったんだ。
昨日、途中で気絶しちゃったから、そのまま次の日の朝まで寝てたんだろう。
僕は眠ることが大好き。その上、こんな気持ちいいベッドの上なら、起こされなければ、一日中でも寝てられそう。
でも、夜はオーフィザン様に奉仕しなくてよかったのかな? 朝までこんなに気持ちいい布団で眠らせてくれるなんて、オーフィザン様はやっぱりいい人なんだ!
オーフィザン様の枕元に近づくと、彼はまだ気持ちよさそうに寝息を立てている。
僕、さっきまでオーフィザン様と寝てたんだよな……わ、なんだかドキドキしてきた!!
でも、オーフィザン様、ちゃんと服着て寝てる。それなのに、なんで僕は、裸だったんだろう?
…………………………ま、まさかこの人、僕が寝ている間に、勝手にいろいろしたんじゃ……まさか、寝てる間に犯された!? 裸だったし……
ひ、ひどい……そういえば、僕、性奴隷だったんだ。じゃあ、やっぱり寝てる間に…………ひどい! あんまりだ! いい人だと思ったのに……
うう……寝てる人が悪魔に見えてきた。
ひどすぎる。このままここにいたら、絶対ひどいことされる。逃げたいけど、逃げたらもっと怖いことになりそうだし……
バスローブも勝手に借りたら怒られるんじゃ……ぬ、脱いだほうがいいのか? だけど脱いで裸でいるのは嫌だ。
どうしよう、どうしよう……脱ぐべきかな? だけど脱いだら裸になっちゃうし……
そうだ! 部屋の中を探したら、僕の服があるかもしれない。
僕は、オーフィザン様を起こさないように、ベッドから降りて、服を探し始めた。
うわあ……見たことないものがいっぱいある……
棚の上にいっぱい並んでるのは、香炉かな? その隣にあるのは、変な人形だ。不気味……もしかして、オーフィザン様、趣味悪い?
その隣のガラスの器には、いっぱいフルーツが盛ってある。近くに短剣もある。だけど、フルーツをむくためのものじゃなさそう。何に使うんだ?
フルーツと一緒に、かわいい猫のぬいぐるみまで器に盛ってある。
オーフィザン様、やっぱり猫好きなのかな。その横には、豪華な棚にいっぱい、宝石箱みたいなものが並んでいた。
「わっ!」
いった……キョロキョロしながら歩いていたら、何かにつまづいた……
落ちていたのは、オーフィザン様がいつも出かける時に持っていく魔法の杖だ。真っ黒で、不思議な輝きを放つ宝石のような石でできた、僕の身長より長い杖だ。これ、普段から、何に使うんだろうって不思議に思ってたんだ。
だけど……あれ? 僕が見た時より短くなってる………………僕が見たものの半分くらいの長さしかない。
あ……真ん中くらいのところで折れて二本になっちゃってる……
お、お、折れてる……折れてるーーーーーーっっ!!!!
どうしよう……うわあああっっ!!!!
オーフィザン様の大事な杖が、真ん中で折れて半分になっちゃった!!
これ……怒られる程度じゃすまない。どうしようどうしようどうしよう……
隠すしかないっっ!! どこかいい隠し場所は……そうだ、クローゼット!
僕はクローゼットを開けて、折れた杖を突っ込んだ。
でも、こんなのすぐバレる。だけど部屋を見渡しても、他に隠せそうなところはない。
こうなったら、窓から捨てるっ!!
クローゼットから杖を引っ張り出して、僕は窓に駆け寄った。
すぐに窓を開けたいのに、その前にある棚が邪魔だ。もう、棚の上に並んでるもの、全部どかして上に登っちゃえばいいんだ!
上のものを全部一気に端に寄せると、ガチャガチャ音がなって、香炉は倒れてしまう。だけど、後で直せばいい!
邪魔なものがなくなった棚の上に、僕は急いで登って窓を開け、折れた杖を放り投げた。
折れた杖は、遥か下の庭に落ちて行く。これで安心。
あれ? 落ちていく杖に、何か、布みたいなものが引っかかってる。
まずい!
急いで手を伸ばすけど、もちろん届かない。それは、杖と一緒に庭まで落ちて見えなくなる。
多分、クローゼットに杖を突っ込んだ時に引っかかったんだ!
服かと思ったけど、あれは服じゃない。服なんかより、よっぽどまずい。
下着だ……オーフィザン様の下着だ。下着まで杖と一緒に捨てちゃった……………………
………………い、いいよな!! い、一枚くらいなくなっても、気づかないよな!!
そうだよ! オーフィザン様、下着なんかいっぱい持ってるだろうし!!
それより、窓、閉めなきゃ! それから、棚の上にあった香炉とか、元に戻すんだ!
急いで棚の上にあったものを並べ直すけど、どんなふうに並んでたか忘れた。
か、勘でいいよな! あ、あれ……? 一番キラキラしてた香炉が割れてる……まずい……
破片を合わせたら、くっつかないかな!?
試してみるけど、ダメだ。全然くっつかない。あ、そうだ! 棚の中に、何かないかな? くっつけるもの。
棚の扉を開いてみるけど、並んでいるのは、小さなお酒の瓶とグラスばかりだ。
何かないかな……香炉を直せそうなもの。
グラスを避けながら、何かないか探す。
探していたら、棚の真ん中にあった、細かい細工がされた一番大きいグラスに手が当たって、床に落としちゃった。
ど、どどどうしよう……割れちゃった……
い、一個くらいなくなってもバレないよな!
僕は急いで棚を閉めた。僕は何もしてない! うん! 絶対絶対何もしてない!
えーと……僕、何してたんだっけ? あ、そうだ。服、探してたんだ。
割れた香炉も棚に隠したし、早く服を探そう。
周りをキョロキョロして服を探す。
えーと……あ、ふ、布団の上に服っぽいもの、あるじゃないか!
急いでベッドに登り、それを手に取るけど、これ、服じゃない。
なんだこれ? 布? じゃない。オーフィザン様が出かける時にいつも羽織っているマントだ。大きい……
「わ!」
マントを見ることに夢中になっていたら、僕はマントごとベッドから落ちてしまう。
いたた……マントを頭からかぶっちゃって、真っ暗だ。マントに埋まってるみたい……
マントから出ようとしてあがいても、出れない。マントが手や足に絡みついてくるばかりだ。
わー! どうしよう! 怖い!
つい、爪を立ててしまう。力づくで目の前の布を引っ張ると、変な音がしたけど、やっとマントの外に出られた。
だけど……あ、あ、あ、どうしよう……マント、破れてる……ど、ど、どうしよう……
真っ青になってマントを見下ろして、あらためて隠す場所がないか見渡す。
隠す場所の代わりに、ぐちゃぐちゃになった棚や、さっきいろいろ捨てた窓が目に入った。
うわあああ……どうしよう……部屋にあるもの、いっぱいぐちゃぐちゃにしちゃった……
「……クラジュ……?」
え? い、今、名前、呼ばれた?
振り向くと、オーフィザン様が起き上がって、僕を見ていた。
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