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105.言えるはずがない
しおりを挟むそれだけで僕は嬉しかったのに、殿下はそれでは満足してくれないようで、また舌を入れて奥までキスしてくる。
「ちょっ……で、でんかっ……んっ…………くるしっ……」
「黙れ」
「んぅっ……っ!」
さっき「はい」って言ったら許してくれるって言ったくせに……
それなのに、彼は何度も深くまでキスしてくる。
もう無理なのに、抵抗すればするほど簡単に抑え込まれて、解放されるまでずっと、口の中を侵され続けた。
苦しくて喘ぐ口の端から、唾液が漏れていく。口の周りを濡らして意味のない抵抗を繰り返す僕を、殿下はどこか楽しげに、何度も押さえつけて口づけを繰り返した。
体に汗が滲んでくる。
逃げられないまま足掻き続けて、息もできずにふらふらになった僕を、殿下は軽々抱き上げて、柔らかいものの上に横たえた。
もう、頭がぼんやりしてる。
ここ……ソファだ。なんでこんなところに寝かされているんだ……?
体は汗で濡れていて、力も抜けている。
こんなところ、殿下に見られたくなんかない。
起きあがらなきゃいけない。
だけど、逃げるにはもう遅かったようで、両手首を殿下に掴まれて、ソファの上で組み敷かれてしまった。
霞んだ視界の向こうの殿下は、大きな尻尾を振って、牙を出して笑っていた。
「殿下……?」
「貴様は怯えている時が一番美味そうに見えるな」
「は!?? え……な、何言って…………」
起き上がりたいのに、殿下に両手をまとめて押さえつけられているせいで、動けない。そうでなくても、もう力なんて入らない。
何されてるの? 僕……むしろ、何されるの? まさか、このまま……?
「で、殿下……? や、だ……ま、待って…………そ、そんな、いきなり…………やだっ!」
「逃げる気か? 残念だが、扉には決して開かないように魔法で鍵をかけた。貴様が俺を満たすまで、ここから出してやる気はないぞ」
「やっ……やだっ…………殿下っ!!」
つい声を荒らげた僕から、殿下は急に手を離した。
「え………………?」
てっきり、そのまま逃してもらえないと思っていたのに。
突然のことに拍子抜けする僕から少し離れ、殿下は腕を組んで笑う。
「何を考えているんだ? 俺に少し押さえつけられたくらいで」
「はっ……!? な、なんの話っ……」
「何を考えていたんだ?」
「な、何も考えてません!!」
「されたいのか?」
「何をですか!!!! な、何もっ……何もされたくなんかありませんっっっっ!!」
「それなら貴様がされたいと言うまで待ってやろう」
「はぁ……!?」
びっくりして、でもいきなりあんなことされて怒る僕に、殿下は近づいてくる。
つい身構える僕だけど、殿下は僕に微笑むだけだった。
「妃は大切にしたいからな」
「き、妃って…………じゃあキスもしないでください!」
「したくなかったのか?」
「し、したくない訳じゃ…………」
「だったらいいじゃないか」
「そ、それはっ……」
「だが、貴様が俺を満たすまで、部屋から出さない約束だからな」
「そんな約束してません!」
「代わりに、これから俺に何をされると思ったのか、詳細に話してもらおう」
「は!?? い、嫌ですっ……! そんなっ……! そんなの話せません!!」
「口に出せないほどいやらしいことを考えていたのか」
「そんな訳ないでしょう!!」
実はちょっと考えてたけど……そんなこと言えるはずがない。
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