虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

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78.まだ逆らう奴が

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「ヴァン様……そのお顔」
「ああ。私は火傷など負っていなかったのだ。全てはエルの本性を確かめるための狂言だった」

 キラキラ輝きを放っているようにも見える銀色の髪。
 包帯から解放された上半身は筋肉が引き締まり、たくましい。
 この世の奇跡だとしか思えないほどのその顔立ち。

 そんなヴァン様が私を優しそうに見つめている。
 私は恥ずかしくなり、目を逸らした。

「君にはすぐ明かすつもりだったんだ。だけど、どうしても君を試したくなってしまった」
「試す……ですか?」
「ああ。君はエルと同じで、私の外見と財産が目的なのではないかと思ってね……最初はエルの気持ちを確かめるためだけだったが……君を一目見た瞬間に、目的が変わってしまった」

 ヴァン様は眩しそうに目を細め、私の顔を見つめ続ける。

「自分の中身を見てほしかったんだ。そして君は私の容姿など気にすることなく、普通に優しく接しくれた。それが嬉しくて……気が付けば私の心の中はクリスで一杯になっていたんだ」
「…………」
「エルの目的はすでに把握している。クリスが何故ここにいるのかも理解している。私は既に全部分かっていたんだよ。そして私は君を試していた。」

 そう言うとヴァン様は跪き、私の手を取る。

「お互い様なんだ……だから気にしないでほしい。そして私を許してほしい。そして……クリス。私と一緒になってほしい」
「ヴァン様……」

 涙が止まらない。
 まさか、ヴァン様からそんなことを言われるだなんて。
 あまりの感激に言葉が出なかったので、代わりに涙を流しながら大きく頷く。

 ヴァン様はホッとし、素敵な笑みを向けてくれた。
 私はグチャグチャになった顔で、笑顔を作る。
 不細工なんだと思う。
 だけど彼は、嬉しそうに笑っている。
 それだけで幸せだった。

 いつか幸せに……
 その幸せが、本当に舞い込んでくるなんて。
 本当に夢のようだ。
 
 その上、ヴァン様という素晴らしいお方から求婚されるなんて。

「エルリーンの考え通り、彼女との婚約を破棄させてもらおう」
「はい。妹の望みのままに、ですね」

 クスクスと笑い合う私たち。
 
 こうしてエルの計画通り、ヴァン様と彼女の婚約を解消させることとなった。
 いまだに信じられないが、優しくて暖かいヴァン様は目の前にいる。
 彼は微笑を浮かべながら、私の身体を抱きしめた。
 私はこれ以上ないほどの幸せを感じながら、彼の胸に抱かれ続ける。
 
 どうか夢じゃありませんように。
 そしてこの幸せが永遠に続きますように。

 私はそう祈りながら、ヴァン様の胸の鼓動を感じていた。
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