虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

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74.隙を見せるな

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 ロヴァウク殿下は、塔の上から、街の方を見下ろしているようだった。
 僕もその横に立ってみたけど、街は今日も静かで、特に異変があるようには見えない。

「魔物がいないか、ここから見下ろしていたんですか?」
「いいや。フィンスフォロースが使い魔を飛ばしてきた」
「え?」

 ロヴァウク殿下が右手を出すと、そこに、宝石で作られたような小さな竜が降りてくる。フィンスフォロースが飛ばしたものだろう。だって、竜の背中に彼の字で「人使い荒すぎ」と、多分殿下にあてたものであろう怒りの言葉が書いてある。

「ギンケールたちからあの場所を奪った富豪について調べさせていた。随分と領主と仲のいい男らしい」
「ディロヤル伯爵と?」
「ああ。ランギュヌ子爵といい富豪といい……お友達の多いやつだ」
「……今日中に会えそうですか?」
「どうだろうな……しかし、結界の道具が破損したとなれば、放っておくわけにはいかないだろう。降りるぞ。朝食の時間だ」
「……はい……」







 食事をしに下へ降りると、食堂には誰もいない。当然か……警備隊の人、めちゃくちゃ減っているみたいだし。

 厨房の方から音がして、そっちに行ってみると、一人の料理人がパンを切っていた。いや、料理人じゃなくて、料理人の格好をしたコティトオン警備隊長だ!

 彼は、厨房に入った僕らに気づいて、微笑んだ。

「おはよう。ロヴァウ。レク」
「……ここの食事は、貴様が用意しているのか?」

 ロヴァウク殿下がたずねると、コティトオン警備隊長は首を横に振る。

「いいや。料理人が全てやめてしまったので、当番制になっているだけだ」

 そう言って、彼は見事な手つきでパンに野菜を挟んでいく。
 料理上手だなあ……作りたてのサンドイッチからいい匂いがして、パンに刺している小さな犬のピックがすごく可愛い。ちょっとライイーレ殿下に似てるし。

 サンドイッチに手を伸ばそうとしている小さなライイーレ殿下から、隊長は皿を遠ざけて、顔を上げた。

「ところで、今日のことだが……」
「……どうした?」

 たずねるロヴァウク殿下に、コティトオン隊長は、厳しい顔をして言う。

「夕暮れごろに、客が来る……伯爵の使者だ」
「……使者? こちらから出向こうと思っていたのだが……先手を打たれたか」
「……ロヴァウ……」
「なんだ?」
「街で、市民に手を出したという話は本当か?」
「……誰かに聞いたのか?」
「何があったのか報告するために、報告書というものが存在しているんだ。ロヴァウ、勝手にそんな真似をされては困る。俺たちは警備隊だ。市民を虐殺するためにいるんじゃない」
「そこまではしていない。魔法を使えるなら、俺たちより魔物を相手にした方がいいと思っただけだ」
「……憤る気持ちは分かる。しかし、我々は警備隊だ。市民は守るべき対象であって、魔物の前に突き出すなんて、もってのほかだ」
「突き出した覚えはない。王である俺の前に立ち塞がるよりも、魔物退治の方が、勝ち目があるのではないか?」
「……王ではないだろう……それに、勝てる勝てないの問題ではない。警備隊には、市民を守る義務があるんだ」
「もちろんだ。そして、俺は王だ。街を守ることも、約束を守ることも、俺の責務だ。使者が来るまでに用意をしておく。貴様も、戦う準備をしておけ」
「……ここの警備隊で、あまり問題を起こされては困る。そもそも、警備隊というのは……」
「貴様……結構口うるさいな」
「……フィンスフォロース殿から、うちの殿下はきつーく言ってほしいタイプだから、何かあったらそうしてあげてねー、と言われている」
「あいつ……」

 思いもよらないところから、昨日任せた激務のカウンターをくらい、殿下は苦い顔。

 昨日の街で起こったことの処理にだいぶ労力を使ったらしい警備隊長も、警備隊とは何かを一から説明し始めた。

「そもそも、我々警備隊は……」
「あ、あの……コティトオン隊長……で、殿下も、彼らを傷つけるような気はなくて……」

 僕が言い訳を始めると、隊長は僕にも苦い顔をして言う。

「傷つける気がなければいいというわけではない。君も分かっているだろう。使者も、その件に関して必ずこちらを責めてくる」
「……ごめんなさい……迷惑かけて…………」
「……そうじゃない。必要のない処分を受けたくなければ、警備隊である間の行動には注意しろ。ロヴァウも、下手なことをすると王座が遠のくぞ」

 すると殿下は、腕を組んで言った。

「俺はすでに王だ。貴様に王座の心配をされたくない」
「……まだ国王ではないだろう」
「それに、貴様の顔を潰すつもりはない。必要のない責めを受けさせることもだ」

 相変わらずの様子で胸を張るロヴァウク殿下に、警備隊長は怒るかと思いきや、静かにサンドイッチを皿に並べながら言う。

「……あなたたちの正体は知っている。だが、ここではあなたたちはロヴァウとレクで、隊長は俺だ。そんなことは気にしなくていい。俺が言いたいのは、警備隊でいる間は、市民を傷つけるような真似をするなということだ。警備隊は、街と市民を守ることを矜持としている。顔だのなんだのは、今更どうでもいい」
「どうでもいいと言うことはないだろう」

 首を傾げるロヴァウク殿下に、隊長は出来立てのサンドイッチの皿を突き出す。ローストビーフがたっぷり詰まったサンドイッチと、レタスとトマトのサンドイッチが並んでいた。

「……警備隊でない俺は負けず嫌いだ。こっちから売った喧嘩で負けたくない。変な隙は見せるな」
「いらん心配だ。俺はあと数日で隊長になる。安心して俺の後ろにつく用意をしておけ」
「……始末書書いてるうちは無理だ……」
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