虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

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38.力になれるかもしれないから

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 駅は、人でごった返していた。さまざまな種族の人たちが駅舎の中にひしめいていて、切符売り場の方にも、長蛇の列ができていた。売り場のそばには、本日分の切符は完売と書かれた大きな張り紙がある。

 ホームには、ずっと列車が停まったままだ。出発の準備をしているのだろうか。
 切符が取れなかった人たちが、動かない列車の屋根に登ろうとしたり貨車に入り込もうとしたりしていて、屈強な駅員に放り出されていた。

 すごい人だ……噂には聞いていたけど、それより、ずっと多い気がする。

 最近は魔物の増加で、列車もしょっちゅう止まる。
 その上、列車は荒野に運ぶ荷物を大量に積んでいて、荒野に向かう乗客も多いから、なかなか乗れないんだ。
 乗客はだいたいが、魔物の素材狙いの人や、魔物の討伐依頼を探しにいく人たち。一攫千金を狙っていくんだ。

 僕も多分、数日後に出発する列車に乗ることになるんだろうって思ってたけど……こんなに混んでるんじゃ、数日後でも乗れるか分からないぞ……

 は、早く切符を取らないと、いつまでも出発できないかもっ……!

 急いで切符売り場の方に向かおうとしたら、駅の中に、アナウンスが響き渡った。列車の運行中止を告げるものだった。

「本日は、魔物の出現により運休です!! 皆さん! 駅から出て下さーーい!! 再開はいつになるか分かりませーーん!!」

 今日の列車は運行中止。そんな衝撃的な事態に、駅はほとんどパニックだ。

 駅に集まった人たちからは不満の声が上がり、何度も怒声が響いている。

「てめえ!! こっちは一週間前から待ってたんだぞ!!」
「魔物なんか、俺が倒してやる!」

 けれどすぐに、ホームの方から、町の警備兵らしき人たちが出てくる。そして、改札を乗り越えてまでホームに入ろうとする人たちを、無理やり押し返していた。

「運行は中止だっ……! 下がれ!! 下がるんだ!!」

 あんなに警備兵が集まっているのは、駅の近くに魔物がいるからか?

 それとも……もしかしたら、ロヴァウク殿下が来ているのかもしれない。

 列車は運休。しばらくここから動けない。だったら、ロヴァウク殿下がすでに切符をとっているのか確かめておいてもいいかもしれない。
 それに、顔も見せずにいて、また「どれだけ待たせる気だ」って言われるのも癪だ。

 いつまでも待たせるのも……殿下に悪いし……

 僕は、リュックの中のライイーレ殿下に話しかけた。

「ライイーレ殿下……これから、姿を消して天井近くを飛んで、ロヴァウク殿下を探しに行きます」

 すると、リュックの中から、小さなライイーレ殿下が顔を出した。

「ロヴァウクを? ロヴァウクに何か用?」
「用はないんですけど……会っておかないと、ま、待たせているかもしれないから……」
「使い魔でも飛ばしてみたら?」
「そんなことしたら、護衛の方々に迷惑をかけてしまいます……」
「ロヴァウクは、何度も会った人の使い魔なら見分けるよ?」
「そ、そうなんですか……?」

 僕からって分かったら、ロヴァウク殿下は使い魔を呼び寄せてくれるだろうか……

 だけど、やっぱり自分で会いに行きたい。ちゃんと、今度は僕もここへ来たって伝えたい。

「やっぱり自分で会いに行きます。このままだと、列車も出発しないし、僕らも足止めを食らったままです。いつ運行できるか分からないってことは、かなり強力な魔物が多く出てきたんだと思います……もしかしたら、力になれるかもしれないし……」
「ロヴァウクなら大丈夫だと思うけど……」
「そ、それに、僕らは魔物退治の腕を競っているんです!! きっとこれは、今度こそロヴァウク殿下に勝つチャンスです!!」
「そうかなー?」
「そうです! ライイーレ殿下!! リュックに隠れて、できるだけ声を出さないようにしていてください。あと、僕から絶対に離れないように」
「はーい」

 ライイーレ殿下は、僕のリュックの中に素早く隠れてくれた。
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