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18.賑やかな街
しおりを挟む殿下から逃げ出した僕は、魔法の道具を売る店に向かった。
そこは顔見知りの店で、店主は僕が「反逆者の淫魔」と言われていることを知っているけど、売買に応じてくれる。
持っていた魔法の道具と、昨日の雨の中の掃除中に見つけた、魔物が残して行った残骸を売って、僅かなお金を手に入れた僕は、店主に、これまでのお礼を言ってから、店を出た。
早足で歩く僕に、リュックの中のライイーレ王子が顔を出して、残念そうに言う。
「あんまりお金にならなかったね」
「それでも、あの店に挨拶ができたから、よかったです。それに、予想はしていました……そんなにレアなものではないし、魔力もあんまりこもっていないから、仕方がありません」
「でも、給料出るんだよね!?」
「はい……でも、どれくらい出るか分からないし、荒野の城まで、長い旅になります。できるだけ節約しないと……」
「俺、お肉食べたい!」
「……僕の話を聞いていましたか? だいたい殿下、普段からお肉食べてますよね? 殿下にはちゃんとした食事が出ているんだから……それに殿下……リュックの中のビーフジャーキーも全部食べちゃって……」
「だって、お腹空いていたんだもん!」
「……」
……お腹空いたからって、全部食べなくてもいいのに。朝食も渡したのに……確かに今日の朝食は少なかったけど。
今朝、食事をもらいに厨房に行ったら、もう出ていく奴に食事はいらないと言われ、残飯を投げつけられた。それでも食い下がって放られた野菜のかけらとかパンのかけらを拾って、全部ライイーレ殿下にあげたのに……
僕もお腹がすいたぁ……
森を抜けた先にある街で、食料と、旅に必要なものを買おう。
給料は使い魔で届けてくれるらしいし、もうこの街を出るか。
だけど、ライイーレ殿下は不満そう。
「ねー! お昼、この町で食べていかないの?」
「……行きません。街中なんて、どこで誰に襲われるか分かりません。危険です……」
本当は食事をしたいけど、この街では、僕はよく反逆者だの淫魔だのと言われて絡まれる。反逆者に金はいらないと言って、金を奪おうと襲いかかってくる奴だっているんだ。
給料が来たら、僕は金を持つことになる。その前に街を離れないと、金を持った時点で囲まれる。
「ライイーレ殿下、どうか、リュックから出ないでください……急いで街を出ます」
早足で、街から出るための門に向かう。
最近、魔物が増えていて、領主は、魔物を寄せ付けないための対策を進めている。
街は魔物避けの魔法がかかった壁で囲まれ、外に出るためには、大通りの先にある門を通らなくてはならない。
人気のない通りを通って行きたいが、裏通りでは警備隊の巡回がいつもよりずっと多く行われていた。今朝の件があるからかもしれないが、そもそも、第五王子が来ているんだから、警備が厳しくなるのは当然か。
王子が来る際には、何日も前から警備体勢を整えることになっているのだが、今回はロヴァウク殿下の訪問があまりに急だったから、間に合わないのだろう。
僕が街を出るための許可は、すでに警備隊が出している。今の時間なら、まだ門の辺りも混んでいないはず。急ごう。
警備隊とはあまり顔を合わせたくない僕は、俯きながら大通りを進んだ。
街はいつもより賑やかで、人通りも多い。
ロヴァウク殿下がいきなり街に来たことは、ちょっとしたニュースになっているらしい。雑踏の中、号外の新聞が配られていた。
楽しそうな人たちは、みんな新聞や立ち話に夢中。
通りには露店が出始めていて、みんな忙しそう。
誰も通りの端をコソコソと歩く僕なんか、気にもとめない。お陰で、誰にも絡まれずに門に向かうことができた。
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