虐げられた僕は、ライバルの最強王子のパーティになんて入りません! 僕たちは敵同士です。溺愛されても困ります。執着なんてしないでください。

迷路を跳ぶ狐

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11.誰がこんな奴を

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 こんな奴のために焦って入ってきたりして、僕は馬鹿みたいじゃないか。全部分かっててやっているみたいだし、こんな奴、無視しておけばよかった!

「と、とにかく、危険なことは伝えました! ち、ちゃんと逃げてくださいね!!」

 急がないと、人が戻ってくる。

 だけど、殿下はテーブルについたまま。一向に動こうとしない。

「あ、あのっ……殿下!?? い、急がないと、人が来ますっ……早く逃げないと……」
「レクレットに連れて行かれないと逃げられそうにない」
「……は?」
「俺の護衛は今いない。貴様がエスコートしろ」

 エスコートって……なんで僕がそんなことしなきゃならないんだ!!
 今だって、椅子に座って足を組んでニヤニヤしているし、絶対に自分で窓から出て逃げられるだろ! それなのに、なんで僕が連れて逃げなきゃならないんだ!!

 って言いたい。だけど、相手は王族。滅多なことは言えない……今日の晩はこいつの名前を呼びながら枕を滅多刺しにしてやる!

 代わりに今はぐっと堪えて、僕は出来る限り柔らかい言葉を探した。

「こ、困りますっ……! あ、あのっ……! 護衛の方は今どちらにいらっしゃるのですか!?」
「ここではないところで待ち合わせをしている」
「……」

 待ち合わせるなよ。護衛の意味がないだろ。なんでそばにいないんだ。

 もう本当に呆れてきた。

 なんで僕は、こんなムカつく王子の救出まで押し付けられているんだ。護衛はどこへ行った? 今すぐここに来て、この王子を連れて行ってくれ。

「あの……! だったら、護衛の方を呼んでください!! 魔法で……できますよね!?」
「出来るが、呼びたくない。貴様が連れて行け」
「僕は反逆者ですよ!?」
「そうなのか?」
「あっ……いやっ……ほ、本当は違うけどっ……!! そうじゃなくて、ぼ、僕らは……その……討伐隊の座を争っているわけで、言わば……あの……えっと……敵? ですよね?」
「ああ。そうだな。しかし、俺は今、怯えて動けないんだ。助けるのが道義ではないか?」
「……」

 じゃあ護衛を呼べよ。だいたい、どのあたりが怯えているのか言ってみろ。むしろ、すごく楽しそうに見えるんだが。

 何がそんなにおかしいのか、ロヴァウク殿下はずっとニヤニヤしてる。
 こんな時にそんなわがままを言っている場合ではないと思うんだが。やっぱり僕をからかっているのか?

「…………あ、あのっ……! 動けますよね?」
「立てない。足が震えているだろう?」
「どこがだ……」
「何か言ったか?」
「……い、いいえ…………」

 正直、ここに放っていきたい。しかし、そんなことをすれば、殿下は奴隷として売られてしまうかも知れない。

 偉そうに腕なんか組んでいる殿下だけど、魔法の道具で拘束されて従属を命じられたら、従わざるを得ないはずだ。

「殿下は、ご存知ないのです……魔法で従属させられて弄ばれるのが、どれだけ恐ろしいか……」
「……」
「……わ、分かりました。早く逃げないと、奴らが戻ってきます! 僕が案内します! ま、窓から逃げますが……歩けますか?」
「……ああ。貴様に俺を担ぐのは無理そうだからな」
「……」

 僕に自分を担がせるつもりだったのか? 誰がこんな男を担ぐもんかっ…………!
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