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二章

17.あれが魔獣か?

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 俺がバティラートに怒鳴り返すと、慌てた様子でヴィリガリーが俺を抱き上げる。

「ダフィト!! な、何してるの!?」
「だってこれから魔獣のところに行くんだろ!? だったら、なんの魔獣が出たのかくらい、教えてくれてもいいだろ!!」

 だけど、前を大股で歩くバティラートは俺に振り向きもせずに怒鳴る。

「うるさい!! 貴様と話すことなど、一つもないわ!! 失せろ!!」
「ああ!?? 失せてどうすんだよ!! 俺らに魔獣の相手頼んだのは誰ですかーーーー!?」
「あああああ!! うるさい!! ヴィリガリー!! そのウサギを黙らせろ!」

 バティラートはそう喚き散らしているが、俺はそう簡単に引いてやるつもりはない。ここが魔獣に襲われたりなんかしたら俺の任務だって果たせないじゃないか!!

 俺は、宥めようとするヴィリガリーの手を振り払い、床に降りた。そして、バティラートに駆け寄る。

「おい!! 聞いてんのか!! 魔獣なんとかしてやるから魔獣のことを教えろーー!」
「うるさいぞ!」

 ついにバティラートは、魔法で大きな鎌を呼び出して、俺に襲いかかってくる。
 だが、そんなもんに当たってやる俺じゃない。俺は今ウサギだし、すげえ体が軽いんだ!! こんな奴の鎌から逃げるくらい、なんてことない。

 振り下ろされた大鎌を軽く避けると、バティラートはますます怒り出す。

 大騒ぎになる僕らに、ヴィリガリーが慌てて言った。

「ば、バティラート様!! お急ぎください!! 門が破られてしまうかもしれません!!」
「うるさい!! だったらこのウサギを何とかしろ!!」
「そ、それは後で……それより、これが魔獣が現れたところの地図です! い、いくつかありますが門が一番深刻で……」
「一匹じゃないのか!? そういうことは早く言え!!」

 そう怒鳴って、バティラートはヴィリガリーが差し出した地図をむしり取った。

 あれが、魔獣が出た場所の地図か!!

 俺はバティラートの頭の上に飛び乗って、それを覗き込んだ。

 バティラートは、俺を振り払おうと頭を振っていたけど、地図のほうが先なのか、諦めてそれを地図を見下ろしている。
 ヴィリガリーも焦っているのか、俺を咎めることはせずに、表れた魔獣の説明を続けていた。

「門が凍りかけています! お、恐らく、雪の熊のしわざかと……このままだと、この城まで凍ってしまいます!!」
「うるさい……すぐに対処する」
「でしたら! 今すぐに」

 言いかけたヴィリガリーを、バディレッドは突き飛ばしてしまう。

「黙れっっ!! 貴様、私に指図する気か!?」
「さ、指図なんて……そんなつもりは……」
「貴様がそうして喚くから作業が遅れるんだ!! 貴様は地下の懲罰室で謹慎していろ!」
「そんなっ……俺はっ……!」
「黙れっ!! 貴様っ……」

 言いかけたバティラートの頭に、俺の蹴りが命中する。

「ヴィリガリーに手を出すな!! そいつには恩があるんだからな!」
「このウサギっ……!!」

 バティラートは、頭の上にいた俺を鷲掴みで捕まえた。そして今にも俺を握り潰してしまいそうな顔で凄んでくる。

「そんなに死にたければ、魔獣の前に突き出してやる……来い!!」

 俺を怒鳴りつけたバディラートは、俺を掴んだまま、城の中を歩いて行く。そして、廊下の先にあった大きな扉を乱暴に開いて外に出ると、空に飛び上がった。
 魔法で空を飛ぶと、すぐに城壁が見えてくる。その向こうに、確かに門の前で暴れている魔獣がいた。白に近い水色の毛並みをした熊のようだが、大きさは城の二階まで届きそうなくらい。それが門に向かって、真っ白な息を吐いていた。
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