17 / 20
二章
17.あれが魔獣か?
しおりを挟む俺がバティラートに怒鳴り返すと、慌てた様子でヴィリガリーが俺を抱き上げる。
「ダフィト!! な、何してるの!?」
「だってこれから魔獣のところに行くんだろ!? だったら、なんの魔獣が出たのかくらい、教えてくれてもいいだろ!!」
だけど、前を大股で歩くバティラートは俺に振り向きもせずに怒鳴る。
「うるさい!! 貴様と話すことなど、一つもないわ!! 失せろ!!」
「ああ!?? 失せてどうすんだよ!! 俺らに魔獣の相手頼んだのは誰ですかーーーー!?」
「あああああ!! うるさい!! ヴィリガリー!! そのウサギを黙らせろ!」
バティラートはそう喚き散らしているが、俺はそう簡単に引いてやるつもりはない。ここが魔獣に襲われたりなんかしたら俺の任務だって果たせないじゃないか!!
俺は、宥めようとするヴィリガリーの手を振り払い、床に降りた。そして、バティラートに駆け寄る。
「おい!! 聞いてんのか!! 魔獣なんとかしてやるから魔獣のことを教えろーー!」
「うるさいぞ!」
ついにバティラートは、魔法で大きな鎌を呼び出して、俺に襲いかかってくる。
だが、そんなもんに当たってやる俺じゃない。俺は今ウサギだし、すげえ体が軽いんだ!! こんな奴の鎌から逃げるくらい、なんてことない。
振り下ろされた大鎌を軽く避けると、バティラートはますます怒り出す。
大騒ぎになる僕らに、ヴィリガリーが慌てて言った。
「ば、バティラート様!! お急ぎください!! 門が破られてしまうかもしれません!!」
「うるさい!! だったらこのウサギを何とかしろ!!」
「そ、それは後で……それより、これが魔獣が現れたところの地図です! い、いくつかありますが門が一番深刻で……」
「一匹じゃないのか!? そういうことは早く言え!!」
そう怒鳴って、バティラートはヴィリガリーが差し出した地図をむしり取った。
あれが、魔獣が出た場所の地図か!!
俺はバティラートの頭の上に飛び乗って、それを覗き込んだ。
バティラートは、俺を振り払おうと頭を振っていたけど、地図のほうが先なのか、諦めてそれを地図を見下ろしている。
ヴィリガリーも焦っているのか、俺を咎めることはせずに、表れた魔獣の説明を続けていた。
「門が凍りかけています! お、恐らく、雪の熊のしわざかと……このままだと、この城まで凍ってしまいます!!」
「うるさい……すぐに対処する」
「でしたら! 今すぐに」
言いかけたヴィリガリーを、バディレッドは突き飛ばしてしまう。
「黙れっっ!! 貴様、私に指図する気か!?」
「さ、指図なんて……そんなつもりは……」
「貴様がそうして喚くから作業が遅れるんだ!! 貴様は地下の懲罰室で謹慎していろ!」
「そんなっ……俺はっ……!」
「黙れっ!! 貴様っ……」
言いかけたバティラートの頭に、俺の蹴りが命中する。
「ヴィリガリーに手を出すな!! そいつには恩があるんだからな!」
「このウサギっ……!!」
バティラートは、頭の上にいた俺を鷲掴みで捕まえた。そして今にも俺を握り潰してしまいそうな顔で凄んでくる。
「そんなに死にたければ、魔獣の前に突き出してやる……来い!!」
俺を怒鳴りつけたバディラートは、俺を掴んだまま、城の中を歩いて行く。そして、廊下の先にあった大きな扉を乱暴に開いて外に出ると、空に飛び上がった。
魔法で空を飛ぶと、すぐに城壁が見えてくる。その向こうに、確かに門の前で暴れている魔獣がいた。白に近い水色の毛並みをした熊のようだが、大きさは城の二階まで届きそうなくらい。それが門に向かって、真っ白な息を吐いていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。
明石 清志郎
ファンタジー
昔とある世界で勇者として召喚され、神に近い存在になった男ジン。
新人研修の一環として同胞の先輩から、適当に世界を一つ選んでどんな方法でもいいから救えと言われ、自分の昔行った異世界とは別の世界を選び、勇者四人の選定も行った。
自分もそこで勇者として潜入し、能力を隠しつつ、勇者達にアドバイスなんかを行い後方支援を行い、勇者を育てながら魔王討伐の旅にでていた。
だがある日の事だ。
「お前うるさいし、全然使えないからクビで」
「前に出ないくせに、いちいちうぜぇ」
等と言われ、ショックと同時にムカつきを覚えた。
俺は何をミスった……上手くいってる思ったのは勘違いだったのか……
そんな想いを抱き決別を決意。
だったらこいつらは捨ててるわ。
旅に出て仲間を見つけることを決意。
魔王討伐?一瞬でできるわ。
欲しかった仲間との真の絆を掴む為にまだよく知らない異世界を旅することに。
勇者?そんな奴知らんな。
美女を仲間にして異世界を旅する話です。気が向いたら魔王も倒すし、勇者も報復します。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる