断罪された俺はあんまり知らない人と旅に出たけど、なんとかして取り入らないと詰む

迷路を跳ぶ狐

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二章

11.魂胆?

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 城の中は薄暗くて、歩けば歩くほど怖くなる。一体、どこまで続いているんだ?

 し、死にたくなかったら黙ってろってことは、黙ってたら死ななくていいってことか? ……そんなはずない。絶対に黙ってても死ぬ!
 俺、今うさぎだし……このままどこかに隠れてるか? このままむざむざ殺されるよりマシか……

 そんなことを考えながら歩いていたら、隣を歩くフィアデスが口を開いた。

「おい……」
「は!? え!? な、なんだよっ……! なんか用か!?」
「……分かりやすい野郎だな……いいか? おかしな真似したら、ぶっ殺す。俺じゃなくて、バティラート様がな……」
「お、俺は何にもしてないだろっ……!」
「いいから黙ってろ……」

 言って、フィアデスは奥にあった扉を開ける。

 そこは、幾つも武器が並んだ部屋だった。剣や弓、魔法の杖や槍なんかが並んでいて、見たこともない武器もあった。そんな狭い部屋に、二人の男が立っている。

 一人は、背の高い男だった。深い藍色の髪は長くて、地面に着いてしまいそうだ。着ているものも真っ黒なローブで、その男に向かって、フィアデスが頭を下げ、「……ただいま戻りました。バルデステイラート様」と挨拶をしていた。

 この人が、バティラートさま??

 魔法使いって聞いていたけど、右手に持っているのは、魔法のための杖ではなくて、大きな鎌。柄だけでバティラートの身長より長いだろう。おそらく魔石を使った杖だ。

 隣にいるのは、ブカブカのフードを被った、背の低い人。顔のほとんどが隠れる白いフードを被っていて、やけに大きくて重そうな本を開いて持っている。

 バティラートが、やってきたフィアデスを見て、ため息まじりに言った。

「遅かったな」
「申し訳ございません。領主側の魔法使いに、間者であることがバレました。作戦は失敗です」

 淡々と事実を告げるフィアデスに、バティラートは「……そうか……」と言って、頷いただけだった。
 フィアデスを心配することも、逆に怒り出すようなこともしない。そして、ひどく冷たい目でフィアデスを見下ろして言った。

「お前……まさかそれで領主についたのか?」
「そんなことはっ……!」

 言いかけたフィアデスの動きが止まる。フィアデスは初めて、怯えたような目をしていた。

 バティラートは、隣にいた男に冷たく言った。

「……ヴィリガリー」
「はい……」
「フィアデスを拷問部屋に連れて行け」
「でも……」
「吐くまで解放するな。この男は、領主についた」
「待ってください……! 弁解の機会を……」
「必要ない」

 それだけ言って、バティラートは部屋を出て行こうとする。

 なんだよそれ……領主についたって、そんなの勝手な憶測じゃないか!!

「おいっ……!! まっ……!」

 怒鳴ろうとした俺の口を、フィアデスが手で塞いで抱き上げる。黙っていろって言われたけど、もう遅いようで、バティラートは俺に振り向いた。

「なんだそれは……?」
「……城から来た人族です」

 すぐに答えるフィアデスだけど、その額には汗が流れている。

「懲りもせず、あなたを訪ねてきたようです。すでに魔力も取り上げ、無力な姿に変えました。このまま城に追い返してはどうでしょう?」
「……必要ない」

 そう言ってバティラートは、またヴィリガリーに振り向いた。

「ヴィリガリー、それを連れて行け。元の姿に戻し、切り刻んで城に送るんだ」
「はい」

 ヴィリガリーはあっさり答えたけど、何だそれ!! 切り刻む!?? 聞いてないぞ、そんなの!!

 さすがに黙っていられない。俺は渾身の力を込めて暴れて、フィアデスの手から逃れると、バティラートを怒鳴りつけた。

「なんだよそれ!! き、切り刻むって……少しはこっちの話も聞け!!」

 抗議する俺を、バティラートは冷たく睨みつける。

「どうせ、悪事を働きにきたのだろう?」
「そんなわけないだろ!! 俺はただ……リストの物を借りにきただけだ!! ほ、本当にそれだけだ!! それなのに、悪事ってなんだよ! フィアデスのことだって……話くらい、聞いてやれよ!!」
「黙れっっ!!!」

 突然叫んだバティラートが、俺を睨みつける。

「貴様らの魂胆はわかっている!! 二度と、私から何も奪わせるものか!! ヴィリガリー! それを連れて行け!! 今すぐ殺すんだ!」

 怒鳴るバティラートに、フィアデスが叫ぶ。

「お待ちください!! これは今、無力な姿です! 魔力も使えません!! どうせ何もできません!! 俺が送り返しますから……」
「黙れっっ!! 貴様、口答えするのか!? それなら貴様も死罪だ!!!! ヴィリガリー! 処刑人に言っておけ!! そいつが知っていることを全て吐かせろと! 終わったら私が頭を吹き飛ばしてやる!!」

 ヴィリガリーにまで怒鳴りだしたバティラートは、もう誰の言葉も聞いていないように見えた。俺たちは何もしてないだろ!

「おい!! 待てよ!! なんだよそれ!! 死罪って、殺す気かよ!?」
「そのウサギを連れて行け!! 目障りだ!!」

 喚くバティラートに言われて、ヴィリガリーが俺にそっと耳打ちした。

「ごめん……今は、一緒に来て。そうでないと、みんな殺される」
「なんだよっ……! それ!! おい!! てめえどういうつもりだ!!」

 喚く俺を、フィアデスが乱暴に掴んでしまう。彼はヴィリガリーと顔を見合わせ頷くと、バティラートに丁寧に頭を下げて、部屋を出て行った。
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