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53.僕も嬉しいんです

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 キャドッデさんもテーブルについて、自分のコーヒーを飲みながら言う。

「トルフィレ様、前にお渡しした魔法の道具の調子、どうですか?」
「あ……す、凄くいいです!」

 僕は、カバンの中から、小さな宝石のような物を取り出して、テーブルに置いた。魔物と戦う時に、結界の力を強化してくれる魔法の道具で、レグラエトさんが試作品として作ったものらしい。使い心地を教えてほしいって言われてたんだ。

「これがあると、結界を張る時に必要な魔力も少なくて済んで……特に、たくさん魔物が出た時には調法してます。以前、ヴォーヤジュ様の領地にお伺いした時に、これを使って結界を張ったら、すごく興味を持たれていました」
「本当ですか!? レグラエトにも話しておきます。きっと喜びます。他には? 使ってみて、結界はどうでしたか?」

 聞かれて僕は、それを使って魔物と戦った時のことを話した。

 レグラエトさんの役に立てるなら嬉しい。彼にも普段、魔法の道具を選んでもらったりして、色々助けてもらっているから。

 話していたら、急に背後から人が声をかけてくる。

「トルフィレ様が使ってくれれば、きっと売り上げも上がります!」
「うわっ……! え!? パーロルットさん!??」

 びっくりした……この人、いつも神出鬼没だ。後ろにラグウーフさんもいて、「お久しぶりです」って、挨拶をしてくれた。

 パーロルットさんは、ニコニコ笑いながら、僕が持っていたものをじーっと見つめて言う。

「なるほど……結界用の道具ですか……レグラエトも、こんなものを作っているなら、私に教えてくれればいいのに」

 すると、キャドッデさんが呆れたように言った。

「あいつ、売り出す気はないみたいですよ。トルフィレ様のことが心配なだけで」
「それはあまりに勿体ない。殿下や、トルフィレ様の部隊の方々にも使っていただくべきです。そしてゆくゆくは隣町でも…………」

 パーロルットさんは、僕に振り向く。

「トルフィレ様。それ、今度ヴォーヤジュ様と魔物退治をする時にも、是非役立ててください」
「は、はい……」

 なんだか迫力のある目で言われて、僕はつい頷いてしまう。
 すると、キャドッデさんが「パーロルットさん、トルフィレ様を怯えさせないでください」と言って、彼を止めていた。

 だけど、結界の強化ができるのはありがたい。最近、魔物の数は落ち着いてきたけど、強力な魔物はまだいるから。

 魔物を退治して、領地が落ち着いてきてから、流通も復活して、最近はこの街も賑やかになってきた。良質な素材を求めて、商人や冒険者が立ち寄ることも増えているらしい。だからこそ、トラブルが起こることも増えた。僕だけじゃ対応が難しい時もあって、そんな時は、殿下がいつも助けてくれる。パーロルットさん曰く、僕は押しが弱いらしい。

 少し前にはウェクトラテス様も来てくれて、この辺り一帯の魔物の状況を報告してくれた。今日の夜も、城に来てくれることになっている。
 隣町でもこの辺りの素材を欲しがる人が増えていて、二つの街を繋ぐ道をもう少し整備して、安全のために警備隊を置こうという話も出ている。この辺りでは初めての試みらしく、僕も会議で忙しい。だけど、隣町の美味しい食材がいっぱい流通したら、僕も嬉しい……

 ヴォーヤジュ様も、何か困ったことがあれば教えてくれって言って、すごく親切にしてくれる。
 それに、殿下も。僕のそばにいて協力してくれて、僕は毎日、領主としての仕事を勉強している最中だ。
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