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27.ずーっと思っていたことなんですけど
しおりを挟む腹を立てたらしいブラットルは、僕に向かって怒鳴る。
「手に入れたものは全部渡すように、ディラロンテ様に言われてるだろ!! まだあるなら全部よこせ!! 悪徳令息め!!」
「……これまでは、全部渡してきました。昨日渡さなかったのは、渡したくなかっただけです。もう……あなたたちには何も渡しませんっ!!」
「……お前……そんなことを言って、ただで済むと思っているのか!?」
ブラットルが僕に近づいてくる。だけど、もうこんな奴らになんて従えない。
「……なんでですか…………僕はこれまで、全部渡してきました。それなのに、なんで今、武器を寄越せなんて喚くんですか……僕が渡したもの、持ってくればいいのに!!」
「う、うるさいっ! そんなものっ……お前がっ……!! 全部っ……!」
喚くブラットルに向かって、キャドッデさんが怒鳴る。
「トルフィレ様は、確かに渡してくださったんだ……そ、それなのに、お前は…………ブラットル!! お前が魔物退治してるところなんか、見たことないっっ!!」
「だ、黙れっっ!! 魔物退治するのなんて当然だ!!!! そいつはっ……逃げた悪徳領主の息子だぞ!! 罰を受けて当然なんだ!!」
「それでもお前よりマシだよ!!」
怒鳴りつけたキャドッデさんを、ブラットルは睨んでいる。そして、僕を指差して言った。
「こんなはずがない……そいつはクズだ!! 手に入れたものを使って、何か企んでいるんだ!!」
「……あなたには、僕が何か持っているように見えるんですか……? 僕は、何も持っていません。調べてもらっても構いません。武器も素材もないなんて嘘……僕から取り上げたもの、全部売り払ってたくせにっ……!」
「……なんだとっ……! このっ……!」
怒鳴りつけるブラットルが、僕に手を伸ばしてくる。だけどその手は、ロティンウィース様が掴んで止めた。
「どう見ても、トルフィレは何も持っていない。だが、素材を手に入れる腕はある。それでも何も持っていないのは、お前たちに渡していたからだろう。それなのに、お前はさっき、武器も素材もないと喚いてた。好きに浪費していたんだろ?」
「う、うるさいっ……さっきからなんなんだ! お前はっ……!! たかが傭兵の分際で!!」
「……落ち着けよ……俺が一体、何をした? さっきからずっと素材がないだの武器がいるだのと言って偉そうに喚き散らしていたのはお前だ。自分の尻拭いができなくなったからと言って、怒鳴り散らされても困る」
「そ、それはっ………………」
「言いがかりも大概にしろ」
「ぐっ……」
よほど悔しいのか、ブラットルは歯軋りをして僕に振り向いた。
「……こ、これは、反逆だっ……! トルフィレ!! アフィトシオ様に対する反逆だからな!!」
何言ってるんだろう……もう訳がわからない。
地下牢で見た時は、あれだけ恐ろしく見えていた相手が、今はやけに小さく見える。
……なんで僕、怒鳴られてるんだ? 悪いのはこいつなのに。なんだかもう、呆れてきた。
「…………反逆って……違います……そもそも僕……今、何もしてないし…………」
「なんだと!! しただろう! 悪事の自覚がないのか!?」
「……したとすれば、ここにいて、魔物退治で手に入れたものはもう渡さないって言っただけです」
「嘘をつけっ……! お前がっ……何か企んでいるんだ!!」
ブラットルはずっと僕を怒鳴っているけど、もう本気で嫌になったし、こいつらには何も渡さないし、従うこともしない。それに、こいつのこれにも、もう嫌気がさした。
「あの……ブラットル…………これ、前からずーっと思ってたことなんですけど……」
「な、なんだっ……」
「何でもかんでも僕のせいにされても困ります…………」
「ぐっっ…………」
数歩下がるブラットル。
周りのキャドッデさんたちも、ブラットルを冷めた目で見ていて、もうどれだけ喚いても、誰も武器をなんて渡す気ないのは明白だ。
さっきまで胸を張って上から目線で喚いていたブラットルは、いきなり僕らに背を向けて、倉庫を飛び出して行く。
「おっ……覚えていろ!! トルフィレっっ……!! お前なんか、処刑だっっ!!」
まだ喚きながら、そいつは走って倉庫を出て行った。
なんなんだ、あいつ……勝手に喚いて墓穴掘って飛び出していった……できればあんな奴らのこと、もう考えたくない……
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