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6.つけてるだろ!
しおりを挟む店内は結構混んでいて、殿下はトレーとトングを持って、並んだパンを選んでいる。
後ろ姿を見ただけで、ドキドキするっ……!
ち、ちゃんと話しかけなきゃ……あ、でも、俺になんか話しかけられたら、嫌じゃないのかな……? い、嫌な顔なんかされたら死ぬかもしれないっ……!!
余計なことを考えていたら、話しかけるタイミングを逃した。
店の中でパンを選ぶ殿下の後ろについて歩きながら、なかなか声をかけられない。
は、早く声をかけないと、これ……不審者だ!! 不審すぎる!!
殿下は、俺に気づかずに前を歩いて、パンを選んでいる。
その広い背中を見て、俺は手を伸ばそうとするけど、その指先が届く前に止めてしまう。
背後から触れたりして、殿下がびっくりしてパンを落としちゃったらどうしよう。
パン持ってない時に声をかければいいのか?
今、殿下は並んだジャムパンとクリームパンを見下ろしている。
決めかねているのか? でも、殿下って、甘いの苦手なんじゃなかったっけ?
いや、そんなことより、早く声をかけるんだ。今、トングに何も持ってないし、チャンスじゃないか!!
……だけど、俺が後ろから話しかけて、殿下がびっくりしてトレーのパンを落としたら!?
いや、何を言ってるんだ。だんだん声をかけないための言い訳になっている!!
しっかりしろ、俺。
このままじゃ、殿下を後ろからつける不審者だ! 通報される……学内警備隊に捕まって退学になって二度と殿下に会えなくなる!
それは嫌だ。話しかけなきゃ、ずっと背中を見てるだけだ。
「で、殿下っ……!!」
「おい……」
ほぼ同時に、殿下が振り向いて、俺はめちゃくちゃびっくりした。
な、なんで!? 偶然!?
だけど、殿下は怒っているのか、俺を睨んでいた。
「お前、俺のことつけてただろ……」
「……」
バレている……
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