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後日談
94.一緒に
しおりを挟むヴァグデッドに手を握ってもらっているのに、その手の感触を感じていたら、胸が苦しくなってきた。
俺はヴァグデッドに甘えてばかりだ。彼のそばにいることは、こんなに嬉しいのに……
「あ、あの……ヴァグデッドも、寒くないか……? 何か温かい飲み物でも……あ、ほらっ……あ、あそこ……」
俺は、街道の端にあった屋台を指差した。可愛らしいぬいぐるみや看板で飾られたそこでは、温かい食べ物や飲み物を売っているようだ。
「あ、温かいものでも飲もう…………」
「……フィーディ、寒いの? じゃあもう一回温めてあげようかー?」
「そ、それはいい……」
俺が断ると、彼は「冗談だよー」と言って、屋台のある方まで僕を引っ張っていく。
二人で一緒に屋台まで来ると、甘い匂いがした。コーヒー以外にも、ホットチョコレートやココア、温かいお酒なんかもあるらしい。
ヴァグデッドは、メニューが書かれた看板の前で、俺に振り向いた。
「フィーディ、何がいい?」
「え!!?? お、俺はいい……」
「だめ。フィーディも飲むの! 何がいい?」
何……と言われても……
看板の中にずらっと並んだ飲み物の種類は十数個もある。この中から選ぶのか……?
どうしよう……何を選べばいいんだ? 選択肢が多すぎる。
そもそも俺は、何かを選ぶとか、苦手なんだ。自分の選択になんの自信も持てないからな……
だが、ダラダラ考えていたら、ヴァグデッドにまた迷惑をかけてしまう! だから、早く選ばなくては……そう考えれば考えるほど何も選べなくなる。
「あ、あの…………えっと……な、なんでも……わぁっ!!」
色々考えていたら、ヴァグデッドが背後から抱きついてきて、考えていたことを全部忘れてしまう。
「ヴァグデッド!? お、おいっ……やめてくれっ……ここは城じゃないんだっ……!」
「城ならいいの?」
「そういうわけじゃっ…………」
「城ならもっとえっちなことできたのになーー」
「は!!??」
「フィーディはメニュー考えててよ。その間、俺はこうやって温まっているから」
「なっ……何を言っているんだっ……!」
またそんなことを言い出してっ……!
だけど、ヴァグデッドに本当に楽しそうに笑っているから、なんだか俺も嬉しい。俺とのデートを楽しんでもらえているのだろうか。
こんな風に二人で出かけること、これまでなかった。
城で二人でいるのは好きだ。森の中を歩く時だって彼といると心強いし、魔法の勉強にもなる。
その時とは違って、こうして二人で街を歩くと戸惑うことばかりだが……こうしているのも……いいな。
「ヴァグデッド……あの…………お、おい!」
せっかくいいなって考えていたのに、彼は背後から俺の体にいやらしく触れてくる。胸の辺りを撫でられて腰から股間の辺りにまで彼の手が絡みつくように入ってきて、くすぐったい。
「お、おいっ……ヴァグデッド!! どこに触っているんだ!!」
「いいじゃん。デートなんだし」
「ち、ちょっ……こっ、こんなに……人がいるのにっ……ひゃっ!! し、尻を撫でるな! ひっ…………あ、ぁっ……!」
な、なんだかゾクゾクしてきた……もう飲み物の事なんて考えられないぞ!
「……んっ…………ヴァグデッド……だ、だったら……あ、甘いっ……一番甘いものにしようっ……!」
「甘い?」
ヴァグデッドは、やっと離れてくれた。
だけどまだ、体がほてっている。もう寒いなんて思わないけど、そもそも俺は、ヴァグデッドと一緒にいたかっただけなんだ。
「せ、せっかく二人でいるんだ……その……ヴァグデッドも飲まないか? お前も……あ、甘いクッキーとか、好きじゃないか」
「……フィーディ、間接キスしたいの?」
「なっ…………なんでそうなるんだっっ!! お、俺はただ……お前と、な、並んで一緒に飲みたかっただけだ!!」
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