悪役令息に転生したが、全てが裏目に出るところは前世と変わらない!? 小心者な俺は、今日も悪役たちから逃げ回る

迷路を跳ぶ狐

文字の大きさ
上 下
81 / 96
後日談

81.熱心だな

しおりを挟む

 フラフラしていると、殿下は俺を見下ろして、呆れたように言った。

「……貴様があの公爵家の一族だとは……思えなくなってきたな……」
「…………お、俺は……い、いつも一族の中では厄介者でしたし…………こ、公爵家の中でも、頼むから死んでくれって言われてましたから…………ははは……」

 愛想笑いを浮かべてみるが、内心では全然笑えない。というか、笑ってる場合じゃない。
 王子殿下は、俺の父である公爵に、王位継承の後押しをする代わりに、俺をこの城で魔物に襲われたという事故に見せかけて殺すように言われていたらしい。そのために、護衛に見せかけた暗殺者まで連れてきていた。

 まっ……まさかっ……い、今もそうしたいと思っているのか!??

「あっ……あっ……あにょっ…………も、もうっ……お、おれをっ……ねらっ……狙っては……」
「……」

 怯える俺を、殿下は睨んだままだったけど、腕を組んで言う。

「……落ち着け。もう貴様を殺そうとは思っていない……」
「本当ですかっっ!?」
「反逆を企んでいるのかと思ったが、そんな大それたことをするようには思えなくなってきたしな……」
「し、しません!! しませんよ!! な、何でっ……お、俺が、で、でで、殿下や王家なんか手にかけなきゃならないんですか! 俺が王家なんか狙って、何の意味があるんですか!? 公爵家は、き、キラフェール殿下が王位を継ぐことに賛成していたはずです!」
「……貴様を公爵家から追い出した一族に対する報復……とか……」
「しませんよっっっっ!!!! 俺が一族に手を出すなんてっ……できるはずない!!」
「…………それで、貴様は何をしているんだ?」

 殿下に聞かれて、俺は、椅子の後ろに隠れたまま、震えながら答えた。

「せ、せめて……隠れていないと、こ、怖くて……殿下だって、お、俺となんて……顔を合わせたくないですよね……」
「……」
「……お、俺は……ほ、本当に、何もしません……!! そ、そもそもっっ!! 俺に何かされるのが、い、いや、な、ならっ……な! なんで、ご、護衛くらい、ちゃんと連れてこないんですか!! 殿下を守ってくれる護衛の人っ……! ちゃんと連れてきてください!! 俺はあなたに死なれたらバッドエンドが怖いのに……お、俺を殺すなら、それからでもできますよ!?」

 王子はここに来る時に、俺を殺すための暗殺者は何人も連れて来たけど、王子を真剣に守ろうとする人は全く連れていなかった。未だに、王子はちゃんとした護衛を呼び寄せようとはしない。それどころか、王子の護衛の一人のウィエフは、ずっと殿下を付け狙っている。今だって、一人で城を歩いてここに来たみたいだし……

 それなのに、殿下はそっぽを向いて言った。

「……ふん。自分の暗殺のタイミングを指南するような貴様に、護衛のことをとやかく言われたくないわ! さっさと瓶を集めろ! こんなものがあっては、私の命に関わる!!」

 そう言って、王子は、大きなハンカチを風呂敷みたいに広げると、その上に瓶を次々並べている。遠目に見たら、ティウルの留守中に忍び込んだ変態泥棒にしか見えない。

「フィーディ……薬は、ここにあるもので全部か?」
「へ? えっと…………あの……お、俺も、よく知らないんです…………だ、だけど、多分……あ、あの! ティウルがこれを使おうとしたらっ……俺もやめるように言うので……」
「…………」

 返事がなくて顔を上げると、キラフェール殿下は、なぜか俺のことをじっと見ていた。

 まさか……また疑われてる!??

「あっ……あのっ…………ほ、本当にっ……俺はっ……」
「……貴様は……」
「え……?」
「……やけに熱心だな」
「……? な、何に…………反逆なら考えてませんよ!??」
「それは分かっている。泣くな……」
「……」
「反逆も企んでいないし、公爵家の企みとも関係がないのなら、私がどうなろうが、貴様には関係ないだろう」
「………………あります……俺、ティウルには、幸せになってもらいたいので……」

 涙を拭いて、俺は部屋を見渡した。もう何もないと思うんだけど……
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!

灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」 そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。 リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。 だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。 みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。 追いかけてくるまで説明ハイリマァス ※完結致しました!お読みいただきありがとうございました! ※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! ※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!

推しのために、モブの俺は悪役令息に成り代わることに決めました!

華抹茶
BL
ある日突然、超強火のオタクだった前世の記憶が蘇った伯爵令息のエルバート。しかも今の自分は大好きだったBLゲームのモブだと気が付いた彼は、このままだと最推しの悪役令息が不幸な未来を迎えることも思い出す。そこで最推しに代わって自分が悪役令息になるためエルバートは猛勉強してゲームの舞台となる学園に入学し、悪役令息として振舞い始める。その結果、主人公やメインキャラクター達には目の敵にされ嫌われ生活を送る彼だけど、何故か最推しだけはエルバートに接近してきて――クールビューティ公爵令息と猪突猛進モブのハイテンションコミカルBLファンタジー!

処理中です...