悪役令息に転生したが、全てが裏目に出るところは前世と変わらない!? 小心者な俺は、今日も悪役たちから逃げ回る

迷路を跳ぶ狐

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後日談

78.好きなんだろ?

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 なぜだか楽しそうなティウルは微笑んで、俺を部屋に招き入れようとする。

「入って入ってー。フィーディ! フィーディだったら、いつでも大歓迎だよ!」
「てぃ、ティウルっ……待ってくれ! ヴァグデッドが帰ってこないんだ!!」
「…………ヴァグデッドが……?」
「ひ、昼に……その……も、森へ出掛けて行って……か、帰らなくて……」
「ふーん…………」
「も、もしかしたら、何かあったのかもしれない!! ずっと帰らないんだ!! た、頼む!! 俺と一緒に、ヴァグデッドを探しに行ってくれないか!? 俺一人では、森に行ってもヴァグデッドを探すなんてできないんだ!」
「……それなら、心配いらないよ」
「え?」
「…………夕方、殿下が森に行った時、ヴァグデッドに会ったらしいから」
「そ、そうなのか?」
「しばらく魔物退治してから帰るみたいだよー。ついでに夜になったらキノコも探すって言ってたし、もう少ししたら、帰ってくるんじゃない?」
「……そ……そう……か……」

 なんだ……だったら、そんなに心配いらないか……森にある、魔力を持ったキノコを彼が探しにいくことはよくあるし、その時は、夜が更けるまで帰らなかったりする。
 まだ日が暮れたばかりだし、それなら、もうしばらく待ってみてもいいか……

 それでも不安な俺に向かって、ティウルは、にっこり笑った。

「安心した?」
「……あ、ああ……よかった……あ、ありがとう……ティウル……」
「……使い魔でも送っておこうか?」
「え!?」
「フィーディが、ヴァグデッドのこと心配しちゃって、今にも泣きそうな顔してるって」
「な、泣きそうな顔なんてっ……してない…………だ、だけど……そ、そんなことができるのか?」

 恐る恐る俺が聞くと、ティウルは「もちろん!」と言ってくれた。

「フィーディがそんな顔してるの、僕も嫌だし! なんなら使い魔の魔法、教えてあげようか!?」
「あ……え、えっと…………そ、それはいい……お、俺、自分に魔法の才能がまるでないのは……わ、分かってるから…………」

 言いながら、情けなくなって俯いてしまう。兄弟もたくさんいたのに、俺だけまっったく使えないって散々言われてきたからなー……

 落ち込む俺の肩を、ティウルがパンパン叩いた。

「僕だって、魔法、昔は苦手だったんだ!! 僕も付き合うから、やってみようよ!!」
「ティウル…………」

 なんて優しいんだ……主人公くん。こんな情けない俺にも、優しく声をかけてくれて……

 この魔物ばかりの城で、使えるのが眠りの魔法だけでは、俺も不安だ。いつもヴァグデッドに助けてもらってばかりだし、何か一つでも使える魔法が増えたら、俺も嬉しい。

「あ、ありがとう……ティウル……」
「どういたしまして。ねえ! フィーディ!! せっかくだから、部屋に寄っていってよ!」
「え?」
「もう夜だろ? 魔物も増えるし、城にも出るかもしれないじゃないか。だったら、ヴァグデッドが帰るまで、僕の部屋にいない?」
「し、しかし……ヴァグデッドは、俺の部屋に帰ってくるかもしれない。そしたら、行き違いになってしまう……」
「ヴァグデッドには、使い魔で、フィーディはここにいるって伝えておくよ!」
「い、いいのか?」
「もちろんだよ! フィーディには、今朝殿下を誘う手伝いをしてもらったし!! 今度は僕がフィーディの力になるよ!!」
「……そうか……あ、ありがとうっ……! 助かる!!」
「僕も、フィーディの力になれて嬉しいよ! じゃあ、入って入ってー」
「お、おい……ティウル??」

 ティウルはぐいぐい俺の背中を押してくる。な、なんだかすごい力だ……

「ティウル? ま、待ってくれ。さ、先にヴァグデッドに使い魔を……」
「あ! そうだったね!」

 彼は、魔法で杖を取り出すと、それを振って、小さな光るコウモリのような使い魔を作り出す。それの頭をティウルがこん、と叩くと、コウモリは羽を広げて、城の中を飛んでいった。

「これで、ヴァグデッドのところまで飛んでいくはずだよ! フィーディの思いも伝えておいてあげるね!!」
「お、俺のって……し、心配してるってこと以外、伝えなくていいんだぞ!?」
「えー……なんでー……? だって、フィーディ、ヴァグデッドのこと、好きなんだろ?」
「なっっ…………な、何を言って……」
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