悪役令息に転生したが、全てが裏目に出るところは前世と変わらない!? 小心者な俺は、今日も悪役たちから逃げ回る

迷路を跳ぶ狐

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65.嫌なのか!?

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 城に戻ってきたころには、深夜を回っていて、さっさと眠らないと朝が来てしまいそうな時間だった。
 森の中で行方不明になった王子の護衛たちも、ルオンから連絡を受けた城の魔法使いたちが助け出してくれていたらしい。全員無事だった。

 城に戻ると、ルオンはヴァグデッドと共に、俺を部屋まで送ってくれた。

 部屋の前まで来ると、ルオンは俺に振り向いて言う。

「フィーディ、今日はよくやってくれた」
「あ、ありがとうございます……」
「明日は休んでいい」
「え……?」
「魔力の回復も必要だろう。一日、好きなように過ごしていていい」
「あ、ありがとうございます……」

 よかった……さすがに今日は疲れた。キノコと戦うことになるだろうとは思っていたけど、大量の魔物やウィエフ、ルオンからまで逃げ回ることになろうとは。

 ホッとする俺に、ルオンは微笑んだ。

「城の結界は強化しておく。結界が強化されれば、魔物が入ってくることはない。それに、あなたのことはここで預かることになっている。色々と事情があるようだし、部屋には、敵の侵入を妨害する結界を張っておく」
「え!? あ、あの……」
「ここは私の城だ。勝手に暗殺など、決してさせない。安心してくれ」
「ありがとう……ございます……」

 お礼を言って頭を下げる俺の方に、ヴァグデッドが飛んでくる。

「大丈夫だよ。フィーディのそばには、俺がいるから」

 けれど、ルオンは難しい顔をして言った。

「……ヴァグデッド、お前は私と来い」
「嫌だよ。お前となんて。俺はフィーディといる」
「ダメだ」

 そう言って、ルオンは彼を連れて行こうとする。

 これから後は眠るだけで、特に俺たちが一緒にいる理由なんてない。だからルオンもそう言うのだろうが、今は一人でなんて眠れそうにない。

 何しろ、あれだけ命を狙われたあとだ。魔物も、王子の護衛という名目で連れてこられた魔法使いたちも、俺を狙っていた。
 ルオンのことを信用しないわけではないが、これから部屋に一人きりになるのは、できれば避けたい……

「あ、あのっ……!! る、ルオン様っ……!」
「どうした? フィーディ」
「か、彼さえ……い、嫌でなかったら…………あの……部屋に、い、いて……もらいたいんです……」
「フィーディ……」

 ルオンは、少し驚いたようだった。
 俺だって、自分でちょっと驚いている。だけど、これまでの恐怖と、さっきヴァグデッドが「フィーディのそばにいる」と言ってくれたから、微かな勇気が湧いたらしい。
 今は一人では心細い。だから彼にここにいて欲しかった。

 けれど、ルオンもヴァグデッドも黙ったままだ。

 ルオンが驚くのは分かるが、ヴァグデッドまで、なぜそんなに驚くんだ!!?? さっき俺のそばにいるって言ってくれたのに!! それなのに、なぜ目を丸くしてるんだ!?
 何か言え!! 黙って驚かれたら、急に俺が不安になるだろうーーーー!! 俺は不安なのは嫌なんだ!
 それなのに、ルオン以上に驚いていないか!??

 もしかして、さっきの発言は、ただの冗談だったのかもしれない。ヴァグデッドが嫌なら、俺は諦めた方がいいのか?
 彼だって疲れているはずだから、こんな時に、変なわがままを言うべきではないのかもしれない。

 ヴァグデッドは羽ばたいて俺の腕から離れて行ってしまう。やっぱりダメなのかと思った。

 けれど彼は、クルンと回って言った。

「フィーディもこう言っているし! 今日は俺はフィーディと寝るー!」

 彼はいつもどおりだ。嫌だというわけではないらしい。

「よかった……」

 ぼそっと言った一言が、彼にも聞こえてしまったらしい。
 彼は、キョトンとして俺に振り向く。

「フィーディ? どうしたの?」
「ほ、本当は嫌なのかと思ったから……い、嫌じゃないのなら、よかった……」

 そう言っていたら、いつのまにか、顔が綻んでいた。

 ルオンも、うなずいてくれた。

「分かった。ヴァグデッド、フィーディにおかしなことをするなよ」
「何にもしないよ……」
「……彼の悲鳴が聞こえたら走ってくるからな」

 そう言って、ルオンは去っていった。
 俺がそれを見送っているうちに、ヴァグデッドは勝手に部屋に入ってしまう。

「ヴァグデッド!! お、おいっ……勝手に入るなよ」

 なんて、自分で誘っておきながら何を言っているんだ、俺は。

 部屋に飛び込んでいった彼は、以前のように飛び回ることはなくて、ソファに降りてあくびをしている。

 俺も、そろそろ限界だ。部屋に戻ってきて安心したのだろうか。激しい眠気で立っていることもできなくなりそう。
 ベッドに座ると、もう我慢できなくて、俺はすぐに布団の中に入った。

「フィーディ? もう寝るの?」

 そう言って、ヴァグデッドが俺が被った布団の上に降りてくる。

「うん……だって眠いし…………あ! お前の布団っ……!」
「そんなのいいよ」

 そう言って、ヴァグデッドは布団の上で丸くなる。今日はそこそこ冷えるのに。
 そもそも「怖いから一緒にいてくれ」なんて、子供みたいな理由で彼を呼び止めたのは俺の方だ。
 それなのに、自分だけ布団の中で、ヴァグデッドを布団の外で眠らせるのは、人道に反するのではないだろうか。

「あ、あのっ…………!」

 声をかけようとしたら、なぜか何度も抱きしめられた時のことを思い出した。な、何を考えているんだ……俺は! なぜ今……

「フィーディ? どうしたの?」
「ご、ごめん! おやすみ!!!」

 勝手な妄想を打ち消して、布団をかぶる。何も考えていない! 何も、変なことなんて考えていないぞ!!

 布団を頭までかぶって隠れ、俺は、布団の外の彼に向けて叫んだ。

「ヴァグデッド! よかったら布団に入らないか!! 今日は冷えるだろう!!」

 けれど、布団の上からは「俺はここがいいー」という返事が聞こえてきた。

 恐る恐る顔を出して布団の上を見ると、彼は俺に背を向けて丸くなっていて、呼びかけても答えない。眠ってしまったのかもしれない。

 いつのまにか緊張で滲んでいたらしい涙を拭って、小さな声で「おやすみ」と囁いて、俺も布団に入った。

 その日は、よく眠れた。
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