悪役令息に転生したが、全てが裏目に出るところは前世と変わらない!? 小心者な俺は、今日も悪役たちから逃げ回る

迷路を跳ぶ狐

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35.どこで間違えたんだ!?

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「あ、あ、あの……? ヴァグデッド?」

 強く抱き寄せられたまま、顔を上げたると、彼と目があってしまい、すぐに背けた。

 抱き寄せると言う行為は、少なくとも、敵意をもってすることはないと思う。
 心底嫌悪している人間を抱き寄せることが、たとえばあったとしても、敵意なく抱き寄せることの方が、圧倒的に多いはずだ。
 だったら、俺をこうして抱き寄せるヴァグデッドも、そんな稀な状況ではなく、一般的な感情でこうしているのだと思う。
 抱き寄せた隙に刺殺しようとか、腕力で締め殺そうとか、そんな目的ではなく、なんらかの好意的な感情で、こうしてくれている…………はず! さすがに、殺したいほど憎まれているとは思いたくない。

 それなら、怯える必要はない。

 しかし、こんなに、そばに、ひ、人がいると……
 緊張なのか、恐怖なのか、それとも違う感情か、汗が流れてきた。

 大丈夫か、俺。臭かったりしないだろうな? ……って、何の心配しているんだ。

「あ、あの……あにょ、は、は、なして……」
「フィーディ、素直すぎ。魔物に襲われて死んでほしい、なんて、そのままの意味だと思ってるの?」
「え?」
「公爵は、フィーディの死亡の報告を早くくれって、ルオンに迫ってるらしい」
「へ?? な、なんだそれ! は、早くくれと言われても、し、死亡の報告なんて、催促してもらえるものではないはずだっ……!」
「遠回しに、早く君を魔物に殺させろって言ってるんだよ?」
「…………」

 俺はそんなにも命を狙われてたのか。俺の存在が邪魔なことは知っているし、死んで欲しいと思われていることも知っていたが……まさか、殺されようとしているとは。

 まあ……何度も「死んでくれ」とか、そんな感じのことを言われていたので、もう驚かないが……

「間違いないよ。ルオンが困ってた。それに、ウィエフも君のこと消す気だ」

 おい。あちこちで命狙われてるな俺。

 ゲームのフィーディだって、きて早々殺意を向けられたりしていなかったのに。

 俯く俺の髪に、温かいものが触れる。包むように触れたそれは、赤子を慰めるように動いていた。どうやら、頭を撫でられているらしい。
 びっくりして身を引くが、抱きしめられていては、ほとんど逃げることもできなかった。

 顔を上げと、すぐに、ヴァグデッドと目があった。彼は怖いくらいに真剣で優しそうなのに、やっぱり怖いっっ!! 俺は何をされてるの!?

「困るよね。みんな、俺の大事なものに手を出そうとする…………」
「……」

 何を言われたんだ俺は。

 訳がわからない。混乱した頭を何とかしたい。

 彼から顔を背けるが、それでも視線を感じて、なんだかくすぐったい。どんどん心臓が高鳴っていくのは、怖いからか?

 それとも、まさか俺。

 こ、こいつに気があるのか!??

 おいおいおいおいっ!

 庇ってもらって落ちちゃったのか俺! 確かに誰かにそんなことをされるの初めてだが!!
 チョロいな、俺。
 いやまて。相手は俺を追いかけ回した竜だ。いいのか俺。そんなことで、本当にいいのか!??
 それともこれは、吊り橋効果的なアレだろうか! 確かにいきなりこんなことされて吊橋より怖くてドキドキしてる。そうなのか!?

 そもそも俺は、さっき命を狙われてることを自覚したばかりだぞ。それで今度はこの事態。もう頭がついていかないんだがーーーー!?

「…………あ、あの……ヴァグデッド…………俺……」
「そんなに震えなくても大丈夫。俺がいるんだから、怯えなくていいよ」

 いや、俺は今、この事態に怯えているのだが。そして、混乱し続けているのだが。なので、離してもらえれば、少し回復できそうなのだが!??

「あ……いや、そ、そにょっ…………」
「……大丈夫だよ。俺の大事な手下を狙うような王国は、俺が滅ぼすから」
「………………え……?」

 えーーっと? 何か言いましたか? そんな優しい笑顔からは、考えられないようなことを言われたような気がしたのだが。

 また、見上げる。
 目が合う。
 やっぱり、ヴァグデッドは優しそうに微笑んでいた。こんな笑みから囁かれる言葉は、優しく思いを告げる言葉だったりしないのか? いやむしろ、怖くない言葉なら、俺は何でもいいのだが。

「あ、あの……ヴァグデッド……じ、じょ、じ? 冗談……だよな?」
「え? なんで?? 本気本気ー」
「…………」

 言葉はすごく軽いのに、多分本気だと信じさせられてしまうのは、なぜだろう。

 本気で、王国滅ぼすの?? なんのために?

「そ、そんなこと、できる訳…………」
「ウィエフが作る魔法強化の杖があれば、俺をこの城に幽閉している結界も、破壊できる。フィーディを狙った奴らは森で殺してくるから、フィーディは、この城にいなきゃダメだよ? 巻き添え、喰らいたくないだろ?」
「………………」

 ……どうしよう……本気だ。これ。

 え?? え? え!? ダメだろこれ!! 絶対バッドエンドになるやつだ!! なんでこんなことに!? って、言ってる場合じゃない!

「ヴァグデッド! わ、悪い冗談はやめてくれ!」
「冗談じゃないよ」
「だ、だって……え!!?? な、なんで!? そんなことのために王国を……俺別に死んでもいいよ!?」
「今のもう一回言ったら、死ぬより怖い目に合わせるから」
「はっっ!?? え、なんで……」
「だって俺、フィーディがいなくなるの、嫌だから」
「だ、だって……じゃあなんで、俺のこと陥れるようなこと…………」
「そうでもしないと、ウィエフを信用させられなかったんだ。ごめんね? でも王子は、俺の教えた魔力強化の杖の話に夢中で、ティウルのことも、フィーディのことも、すでに興味ないから大丈夫」
「今の絶対ティウルに言わないでください本当に本当にお願いします」

 今のこいつとティウルがやりあうところなんて、見たくない。もう、考えようとしただけで怖い。

 何でみんな、すぐに破壊的な手段を取ろうとするの!!?? もっと無難な方法を取ってくれ! 命を狙われるのは嫌だが、王国の崩壊を企てられるのも困る!!

「ヴァグデッド……頼む。あの……お、落ち着こう……」
「俺、落ち着いてるよ? フィーディを処分なんて、絶対にさせないから、そんなに震えないでよー」
「いやあのあのあのっ……! そ、そんな事態になるくらいなら、俺、処分でいいので……なんなら処刑でいいです」
「なに言ってるのー? そんなに怖い目にあいたい?」
「ひいぃっっ…………!」

 なぜそんなに迫ってくる!??? 怖い怖い怖いっっ!!

 何でこんなことになってるんだ。俺はどこで選択肢を間違えたんだ。
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