悪役令息に転生したが、全てが裏目に出るところは前世と変わらない!? 小心者な俺は、今日も悪役たちから逃げ回る

迷路を跳ぶ狐

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28.待ってください!

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 尚もまだ何か言いかけたウィエフから、ルオンは顔を背け、俺に振り向いた。

「フィーディ。処分が決まるまで、謹慎していてもらえるか?」
「ま、待ってください!! 俺はっ……! 本当に違うんです! 俺は、本当に殿下を傷つけようとしたのではありません!」
「それは分かっている」
「それならっ……!」
「しかし、殿下のそばで魔力を持つものが暴走したのなら、きちんと調べなくてはならない。謹慎は、調査が終わるまでだ」
「はい……」

 項垂れる俺。

 俺、悪くないのに。そんな不満ばかりが湧き出すが、王子に魔力が向けられたことは事実。ルオンだって、何もかもなかったことにすることはできないんだろう。

 王子はすでに、護衛たちを引き連れて、城の方に向かっている。すぐにティウルがついて行こうとしたけど、ルオンが彼の手を掴んで止めた。

「ティウル、あなたにも来てもらう」
「えー? 僕は何もしてませんよー。僕はそんなことより、王子殿下にご挨拶に行きたいです!」
「ご挨拶は調査が済んでからだ」
「ふん……めんどくさ……手短に済ませてくださいね!」

 かなり不機嫌そうに、ティウルは悪態をついている。けれど、ルオンに逆らう気はないのか、それ以上、王子の方について行こうとはしなかった。代わりにティウルは、ルオンにまとわりつくようにしてたずねる。

「ルオン様!! 調査ってなんですか!? すぐ終わりますか!?」
「ああ……多分な」
「本当ですか!? あっ……そうだ!
ルオン様!! 僕……ルオン様に教えていただきたいことがあるんです!! キラフェール殿下のことです!」
「……あまり近づくな……王家のことは話せない」

 ちょっと困った様子で言うルオン。

 すると、それを見ていたウィエフが、ティウルの腕を強く掴んで無理矢理自分の方に引き寄せた。

「ルオン様、ティウルは私が連れて行きます」
「えー。僕、ルオン様と一緒に行きたかったでーす」

 軽い口調で言うティウルだけど、ウィエフに睨まれると大人しく黙る。
 無理もない。ウィエフのその目は、誰が見ても怖い。

 今度はヴァグデッドが俺の手を握って言った。

「じゃあ、俺はフィーディと謹慎してるー」

 場にそぐわない楽しげな様子のヴァグデッドに、ウィエフが冷たく言う。

「あなたには、何があったのか説明してもらいます」
「は? お前に説明することなんてない!」

 挑発的に言うヴァグデッドとウィエフの間に、不穏な空気が漂う。二人の間にルオンが立って、ため息をついた。

「……ヴァグデッド。お前もティウルと一緒に来い」
「嫌。俺はフィーディと行く」
「キラフェール殿下がいらっしゃったところに、お前も居合わせて、その上、殿下に魔力が向けられた。何があったのか説明してもらわなければ困る」
「俺はただ、そこにいただけ。お前、俺を疑ってるの?」
「そうじゃない。だが、私は王家からお前の監視を言いつけられている。殿下が来た初日にこんなことがあったのなら、王家にも報告しなくてはならないんだ」
「俺は何もしてない。あいつらが勝手に怯えてるだけだろ?」
「お前を守ることにもなるんだぞ」
「必要なーい。ねえ、いつになったら吸血の禁止を解いてくれるの?」
「……当分禁止だ。何をする気だ……?」
「俺は何にもしてないよ?」
「……殿下がいらっしゃる間は、暴れないでくれ」
「どうしようかなーー??」

 楽しそうに、そしてどこか挑発的に言うヴァグデッド。

 だけど、彼は本当に何もしていない。王子におかしなものを飲ませようとしたのはティウルで、目眩ましに魔力を込めたキノコに投げたのは俺。

 俺は慌てて、ルオンに向かって言った。

「待ってくださいっっ!! ヴァグデッドはっ……ほ、本当に、何もしていません!!」
「殿下がいらっしゃる間は、ヴァグデッドの監視も厳しくしなくてはならないんだ」
「そんな……だ、だってっ……キノコを投げたのは俺です!!」

 我慢できなくて、なおも口を開こうとした俺だけど、そんな俺の腕を、なぜかヴァグデッドが掴んで、自分の方に引き寄せた。

「俺が心配?」
「だ、だって……」
「フィーディは、俺の言うこと聞いてればいいから」

 そう言って彼は微笑んで、それ以降、俺が何を言っても、聞いてくれなかった。
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